この記事では、「忘却」と「失念」と「健忘」の違いを分かりやすく説明していきます。
「忘却」とは?
「忘却」【ぼうきゃく】とは、覚えていたことをすっかり忘れてしまうことです。
「忘却」に使われている漢字の意味を見てみると「忘」は記憶が呼び戻せないこと、「却」は「~し終わる」ことを表しており、「忘却」は記憶が全く呼び戻せない、つまり、覚えていたことをすっかり忘れ去ることを指しています。
記憶とは見聞きして脳に入ってきた情報を保存することですが、すべての情報が永遠に保存されるわけではなく、必要な情報だけがその都度記憶として残り、不用な情報は次々と消されていきます。
「忘却」はいったん脳に入ってきた情報が消されることです。
記憶された情報は必要に応じて思い出せますが、「忘却」した情報は二度と思い出すことができません。
一般には意味のない情報、関心の薄い情報、遠い昔の記憶ほど「忘却」されやすいといわれます。
「失念」とは?
「失念」【しつねん】は「度忘れすること」の丁重語で、うっかり忘れることを指します。
「失念」に使われている漢字の意味を見てみると「失」はなくすこと、「念」は心に留めることを表しており、「失念」は心に留めておけなかったこと、つまり忘れてしまうことを指しています。
「失念」は、自分がうっかり忘れていたことを伝える際に用いる言葉です。
相手に敬意を示すと同時に自分の行為をへりくだる丁重語で、「しておりました」と組み合わせて使うのが一般的です。
たとえば、日常会話で「ごめん、うっかり忘れていた」「度忘れしていた」と言うところを、ビジネスシーンで取引先やお客さんと会話をする時には「申し訳ございません、失念いたしておりました」と言い換えをします。
「うっかり」「度忘れ」はややくだけた感じになりますし、逆に日常会話で「失念した」と言うと堅苦しくなります。
「健忘」とは
「健忘」【けんぼう】とは、物忘れが多いという意味です。
また、過去の記憶が思い出せない障害を指します。
「健忘」には、誰にでもよくある軽度な物忘れから、脳の病気によって起こる記憶障害などの重度のものまでがあります。
誰にでもよくある物忘れは自然な現象なので、あまり心配はいりません。
病気による記憶障害は「健忘症」と呼ばれ、すべての記憶が思い出せない、一部の記憶だけ思い出せない、あるいは新しいことが覚えられない、などざまざまな種類があります。
健忘症はストレスや脳の外傷、薬物やアルコールの多用が原因で起こりやすいとされ、専門治療で治すことが必要になります。
「忘却」と「失念」と「健忘」の違い
「忘却」「失念」「健忘」はいずれも「記憶が思い出せないこと」を指す言葉です。
しかし、意味や定義にははっきりした違いがあります。
「忘却」はすっかり忘れてしまうことですが、「健忘」は物忘れが多いこと、または記憶が思い出せない記憶障害「健忘症」を指し、漢字の「忘」が付いていても、それぞれの意味は異なっています。
「失念」はこの中で唯一、漢字の「忘」が付きませんが丁重語の「度忘れ」を指しています。
これはビジネスシーンなどで、相手へ敬意を示したいときに使う言葉です。
まとめ
「忘却」「失念」「健忘」は忘れることに関する言葉ですが、それぞれの意味は違います。
「失念」はビジネスシーンで使う実用的な言葉なので、意味と使い方はぜひ覚えておきましょう。