この記事では、「敬意」と「尊敬」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「敬意」と「尊敬」の違い
「敬意」と「尊敬」は、どちらも「敬う気持ちを表す」意味を持つ言葉です。
一見すると意味が同じように思えますが、実は、「敬う対象」と「敬う気持ちの大きさ」が違っています。
「敬意」と「尊敬」の使い方の違い
「敬意」は、不特定多数や、概念的なもの(「医療従事者」「高齢者」など)に対して用いるのが一般的です。
対して「尊敬」は、特定の個人に対して使用することが多く、使われるシーンがやや限定されています。
「敬意」の意味の中に「尊敬」も含まれますが、「尊敬の気持ちを広く表現する」場合には「敬意」を、ある相手に尊敬の念をピンポイントで伝えたい場合は「尊敬」を使用します。
「敬意」と「尊敬」の英語表記の違い
敬意は「respect」「homage」、尊敬は「honor」「reverence」というように、それぞれに異なる英語表記があります。
「敬意」の意味
「敬意」の意味は「他人を敬う気持ち」です。
後述する「尊敬」の意味合いも含んで「相手を尊敬する気持ち」という意味で用いることもあります。
「敬意」の使い方
「敬意」は、不特定多数の広い対象に向けて、敬う気持ちや感謝を表明する場合に用います。
「私は医療従事者に敬意を表する」といったような使い方が想定できます。
改まった場でのスピーチや挨拶などで用いるシーンが多く見られます。
「敬意」それ自体は、単体では機能しない熟語です。
「敬意を持つ」「敬意を払う」といったように、「敬意」ののちに何かの動詞を接続して使用します。
「敬意する」といった言い回しは不自然ですので、注意が必要です。
「敬意」を使った例文
・『今回の君たちの働きに敬意を表する』
・『高齢者には敬意を払って接するべきだ』
・『敬意を込めた手紙をしたためる』
・『先生の親身な対応に敬意を覚えた』
・『上司への敬意を欠いた部下とは仕事が出来ない』
・『敬意の感じられない不誠実な対応に、嫌悪感を抱いた』
「敬意」の類語
「敬意」の類語には、軽はずみな過ちがないようにつつしみ、うやまうことを意味する「恭敬」や、尊く価値のあるものとして重んじ、大切に扱うことを意味する「尊重」があります。
「敬意」の対義語
「敬意」の対義語には、礼儀を失した振る舞いを意味する「失礼」があります。
「失礼」に近い言葉で、敬う気持ちのない無作法な態度を意味する「無礼」も「敬意」の対義語です。
英語では「disrespect(ディスリスペクト)」が対義語で、近年は日本でも「ディスる」と縮められて、若者の間で用いられるようになっています。
これは、敬意を表さず悪く言う、といったような意味合いです。
「尊敬」の意味
「尊敬」は「他人の人格や行動を、優れていて尊いものとして認め、敬うこと」「ある他人の業績や功績を認めて、その人を敬うこと」という意味を持ちます。
「尊敬」の使い方
「尊敬」は、特定の個人に対して敬う気持ちを表明する際に用いる言葉です。
相手を優れた人格として認め、讃える場合に用います。
「敬意」よりも、敬う気持ちが強く表現できる言葉です。
一般的には、目上の方に用いる場合、「敬意」よりも「尊敬」を用いるのが適切です。
「私はあの医師に尊敬の念を覚える」といった使い方が想定できます。
「敬意」と同様に「尊敬」も名詞ですが、「敬意」の場合は使えなかった「尊敬する」という言い回しも可能です。
「尊敬」を使った例文
・『彼の尊敬すべき行動を讃えよう』
・『私が尊敬しているのは、高校時代の恩師です』
・『〇〇様のご尽力を思うと、尊敬の念を禁じえません』
・『女手一つで育ててくれた母親に対して、尊敬の気持ちでいっぱいです』
・『彼の優しさと心遣いは、尊敬に値すると思う』
・『私の上司は仕事はできるのだが、一人の人間としては、まったく尊敬できない』
「尊敬」の類語
「尊敬」には多くの類語があります。
敬い尊ぶ気持ちの強弱によって、使う言葉が変わってくるのです。
「尊敬」より少し弱めの敬意を表す言葉には、感心して敬服することを意味する「感服」があります。
「尊敬」より強い敬意を表す言葉の場合は、偉大な人・崇高なものを敬う気持ちを表す「畏敬」や、尊敬する人を模範として慕い学ぼうとする「私淑」が用いられます。
尊敬する相手が歴史上の人物や聖人であった場合は「崇敬」や「鑽仰」が使用されます。
「尊敬」の対義語
「尊敬」の対義語は「軽蔑」です。
「軽蔑」には、ある個人を軽んじてさげすむという意味があります。
また、他人を侮ってさげすみ、見下すさまを表す「侮蔑」も、尊敬の対義語と言えます。
まとめ
「敬意」と「尊敬」は、どちらも、他者を敬う気持ちを表す言葉でした。
しかし、「敬意」は不特定多数を敬う気持ちを表現しているのに対し、「尊敬」は特定の個人への強い表敬を意味しており、細かいニュアンスが異なりました。
気持ちの強弱と対象によって、使い分けが必要となる言葉でした。