この記事では、「町人」と「庶民」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「町人」と「庶民」の違い
「町人」とは、江戸時代のある人々を指す言葉です。
江戸には、武士、商業や工業をしている人などが住んでいました。
「町人」は、商業や工業をしている人のことです。
商業や工業をしている人の中にも、自分で家を持っている人と、家を借りている人がいます。
狭い意味での「町人」とは、商業をしている人や工業をしている人の中でも、自分で家を持っている人のことを指しています。
「庶民」とは、世の中の普通の人です。
世間の多くの人と同じくらいの収入で、特別な地位にいない人のことを指しています。
2つの言葉は「人」のことを指している言葉ですが、どのような人なのかという点に違いがあります。
「町人」は現代の人のことではなく、江戸時代の都市に住む商工業者のことを指しています。
狭い意味では、商工業者の中でも、借りている家ではなく、自分の住まいを持っている人のことをいいます。
「庶民」は、特別な財産も地位もない世間の普通の人のことです。
現代の人のことを指す場合が多いのですが、江戸時代の人のことを指すこともできます。
どのような職業についているのかは、意味に含まれていません。
「町人」と「庶民」の使い方の違い
江戸時代に都市に住んでいた商業をしている人、工業をしている人のことを指して「町人」を使用をします。
他とはっきり区別がある人ではなく、どこにでもいるような普通の人のことを指して「庶民」といいます。
どのような職業の人についても、普通であれは使用することができます。
「町人」と「庶民」の英語表記の違い
「町人」は英語で、商人のことを指す場合は“merchant”、職人のことを指す場合は“craftsman”や“artisan”と表現をします。
総称は“merchant class”です。
「庶民」は英語で“people”や“common people”と表現をします。
「町人」の意味
「町人」とは、江戸時代の都市に住む、商業をしている人、工業をしている人のことです。
商業をしている人、工業をしている人の中でも、とくに自分の家を持っている人のことをいいます。
江戸時代に、三井越後屋(三井呉服店)という店がありました。
この店は非常に大きく、大店と呼ばれます。
大きな店舗を構えることができる店の主は、自分の家を持っています。
家を持つだけの収入があるのです。
それだけ店が繁盛しているといえるでしょう。
そして、自分の家で寝起きをします。
寝起きをする家と商売をする店が、同じ敷地内にある事は珍しくありませんでした。
現代のように江戸時代にもさまざまな商売があり、「町人」が行っていた仕事には、味噌屋、呉服屋、材木屋、薬屋、おしろい屋、菓子屋など、さまざまあります。
自分の家を持っていない人は、長屋、裏店などと呼ばれる家を借りて住んでいました。
ここに住む人たちは、大店といわれる店に住む人よりも収入は少ないです。
そのため、自分の家を持つだけの費用がなく、住まいを借りて生活をしています。
狭い意味での「町人」は、この人たちのことではありません。
「町人」の使い方
江戸時代の人々のことです。
江戸時代にはさまざまな身分の人が生活をしていましたが、商業や工業をしている人で、自分の家を持っている人のことを指して使用をします。
武士も自分の家を持っていますが、商業や工業は行っていないので、この人たちのことではありません。
「町人」使った例文
・『町人の暮らしを調べる』
・『町人になりたい』
・『町人の文化を研究する』
・『町人の衣装を身につける』
「町人」の類語
「庶民」が類語です。
「町人」の対義語
対義語はありません。
「庶民」の意味
「庶民」とは、大勢の人と大きな違いのない普通の人のことです。
大きな違いがないとは、収入や地位の面についてをいいます。
30代の日本人の平均年収は約440万円です。
このくらいの年収の人を普通とすると、この年収から大きく離れていない額の年収を得ている人は「庶民」といえそうです。
この程度の年収を得ている人は、大臣や社長など、特別な地位についていないことが珍しくありません。
地位の面でも多くの人が同じようなものなのです。
こういった一般の人のことを指している言葉です。
もし30代で年収が2000万円など、平均から大きく離れている場合は、世間一般の人とはいえないでしょう。
また、大臣や社長などの地位についている場合も、世間一般の人とはいえないでしょう。
こういった人々を指す言葉ではありません。
この言葉自体には、どのような職業に就いているのかという意味は含まれていません。
しかし、多くの人が簡単には就けないような職業で、しかも地位がある場合は、「庶民」とはいわないことが多いです。
「庶民」の使い方
世間の多くの普通の人のことを指して使用をします。
特に大きく変わったところのない人のことです。
大きく変わったところがないとは、収入や地位の面についてをいいます。
年収が平均くらいで、特別な役職にない人のことです。
見た目が大きく変わっていない人、世界記録にのるような高齢者といった、見た目や年齢の点については使用しません。
世界記録になるような高齢者は、ごく普通にどこにでもいるようなものではありませんが、こういった意味の言葉ではないです。
現代の人のことについても、江戸時代などその他の時代の人のことについても、使用することができます。
「庶民」を使った例文
・『庶民の食卓』
・『庶民に優しいスーパー』
・『庶民には理解できない』
・『庶民に愛されている』
「庶民」の類語
「普通の人」が類語です。
「庶民」の対義語
「特別な人」が対義語です。
世間一般の多くの人と違ったところがある人という意味になります。
まとめ
「人」のことを指している2つの言葉ですが、どのような身分の人なのか、どの程度の年収の人なのか、どの年代の人なのか、といった点に違いがあります。
より広い人を指せるのは「庶民」の方です。