この記事では、「破壊」と「破損」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「破壊」と「破損」の違い
「破壊」とは、建物、組織、秩序などの形を崩して、機能できないようにすることです。
「破損」とは、物体に穴が開く、潰れる、裂ける、傷つくなどすることです。
どちらの言葉にも、やぶれる、こわす、こわれるという意味を持つ漢字である「破」が使用されており、壊れるという意味を持っている点は共通しています。
しかし、何が壊れるのか、どのように壊れるのかという点で意味が違います。
「破壊」の場合の壊れるものは、建物や器物などの物質、秩序や組織などきまりによって成り立っているものです。
そして、役割を果たさなくなってしまう壊れ方を意味しています。
器物の場合だと、器の形がなくなってしまい、液体や固体などを入れるという役割を果たさなくなった状態をいいます。
「破損」の場合の壊れるものは、物体です。
秩序や組織などについてはいいません。
そして、穴が開く、潰れる、裂ける、傷つくなど、一部分だけが壊れることです。
一部分だけなので、機能がなくなっていないこともあります。
たとえば障子の場合だと、一部分に穴が開いても機能を果たすことはできています。
「破壊」と「破損」の使い方の違い
形が崩れたり、砕いたりして、本来の働きをなくしてしまうこと、持っている機能に障害を出すことについて「破壊」を使用します。
テレビの場合だと、意図的に障害を起こして使えなくなってしまった状態です。
物体の一部分が破れたり、傷ついたりすることについて「破損」を使用します。
テレビの場合だと、スタンドの一部分が欠けてしまったような状態です。
「破壊」と「破損」の英語表記の違い
「破壊」は英語で“destruction”と表現をします。
建物については“demolition”と表現することもあります。
「破損」は英語で“damage”と表現をします。
「破壊」の意味
「破壊」とは、建物、器物、秩序、組織などの、もとの形を崩したり、破ったり、砕いたりして本来の機能をなくすこと、機能を持っているものに障害を起こさすことです。
完全に使えなくなるという意味を含んでいます。
スマートフォンを床に落とす、液晶画面にヒビが入ってしまうことがあります。
運がよければ、ヒビが入っている状態でも使用することが可能です。
まだ使えており、このような状態を指す言葉ではありません。
ヒビが入っているだけのように見えても、内部に損傷が及び、使えなくなってしまうこともあります。
電源を入れることができない状態です。
これは、スマートフォンが本来持っている機能がなくなってしまったということができ、「破壊」はこのような状態を意味します。
自然と使えなくなってしまうことではなく、意図的に行われるものをいいます。
電化製品には耐用年数があり、耐用年数を過ぎると自然と使えなくなることがあります。
これは、意図的に行って機能をなくしたことではないので、「破壊」ではありません。
意図的に形を崩す、破る、砕くなどして、使えなくなってしまうこと、持っていた機能が失われることを意味します。
物だけでなく、秩序や組織などの機能がなくなる意味も持っています。
組織の場合だと、組織がバラバラになったような状態です。
「破壊」の使い方
本来の役割、機能がなくなるまで、叩く、潰す、破る、砕くなどすることについて使用をします。
完全に機能がなくなってしまった状態のことで、まだ機能が残っている状態のことについては使用しません。
「破壊」を使った例文
・『森林がどんどん破壊されている』
・『古い家屋が破壊された』
・『津波によって防波堤が破壊された』
・『すさまじい破壊力だ』
「破壊」の類語
「毀損」が類語です。
物を壊すことという意味があります。
価値を損ねるという意味合いを含みます。
「破壊」の対義語
ぴったりな対義語はありませんが、壊さず守るという意味で「保存」が対義語です。
「破損」の意味
「破損」とは、物体の一部分が、破れたり、傷ついたり、穴が空いたりすることです。
機能をなくしたかどうかは、意味は含まれていません。
マグカップのことで考えてみます。
マグカップのフチの一部分が欠けてしまいました。
フチはマグカップの一部であり、全体ではありません。
また、欠けてしまっても、マグカップの機能である液体を受け止めるという役割は果たせています。
このように部分的な損傷のことを意味する言葉です。
大きな台風がくると屋根が吹き飛ばされてしまうことがあります。
屋根は家の一部です。
屋根がなくなったとしても、家全体の形がなくなっているのではありません。
これは、家の一部が壊れたということができます。
このような状態も意味します。
物についていう言葉で、人についてはいいません。
たとえば、包丁で指先を切ってしまったとき、指の一部が欠けてしまいますが、人についてなので「破損」とはいわないことが一般的です。
「破損」の使い方
物の一部分が破れる、欠ける、傷つく、穴が開くなどすることについて使用をします。
完全に形がなくなるほど、物が粉々になってしまった状態には使用しません。
人については使わない言葉です。
皮膚に擦り傷ができたとき、傷ついたということはできますが、「破損」ではありません。
「破損」を使った例文
・『鏡のフチが破損してしまった』
・『破損した部位を瞬間接着剤でくっつける』
・『持ち帰るときに破損しないように気を付ける』
・『破損する恐れがあるので、取り扱いには気をつけてください』
「破損」の類語
「損壊」「損傷」が類語です。
「損壊」には、物体のほぼ全体が壊れることという意味があります。
人には使いません。
「損傷」とは、人や物が傷つくことです。
人にも使える言葉です。
「破損」の対義語
ぴったりな対義語はありませんが、傷つかずそのままの状態を保つという意味で「保存」です。
まとめ
壊れるという意味を持つ2つの言葉ですが、何が壊れるのか、どのような壊れ方なのかという点で意味が異なります。