この記事では、「動向」と「状況」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「動向」と「状況」の違い
「動向」という言葉は、「物事や人がどちらの方向に動いていくのか」という変化する動きのある様子・方向性を意味しています。
「動向」に対して「状況」は、「物事・人のその時点における周りの環境との関わり」や「物事とそれを取り巻いている人・物・環境のその時々の様子」を意味している違いがあります。
「動向」には「人・物事が現在どう動いているのか、これからどう動いていくのかというダイナミックな方向性・傾向性」のニュアンスがありますが、「状況」には「動向」ほどの「ダイナミックに特定の方向に動いているさま」の意味合いは備わっていません。
「動向」と「状況」の使い方の違い
「動向」という言葉は、「特定の人・対象となるものが今どちらを向いて動いているのか、将来どちらの方向に向かって動いていくのか」を意味して使う使い方になります。
それに対して「状況」の使い方は、「現在の時点における人・物やそれを取り巻いている環境の様子」という意味合いで使われている違いを挙げられます。
そのため、「会社を辞めた同僚の動向は不明です」は「同僚がそれからどうしたのか(どの方向に向かったのか)が分からない」の意味で使われていますが、「会社を辞めた同僚の状況は不明です」にすると「現時点でどのようなありさまなのかが分からない」の意味の使用になる違いがあるのです。
「動向」と「状況」の英語表記の違い
「動向」を、英語を使って表現すると以下になります。
“trend”……市場・株価・物事などがどういった動きをしていくのかという傾向性。
傾向。
動向。
“movement”……事態や物事が動いていること。
人が行動して動いていること。
動静。
動向。
“tendency”……対象となるものがどちらに向かう動きを見せるのかの傾向。
動向。
「状況」を、英語を使用して表記すると以下になります。
“situation”……対象となっている人や物事が置かれている状況。
その時点における人や物事の様子と周囲との関わり。
状況。
“circumstances”……ある物事・人物を取り囲んでいる環境や状況。
状況。
「動向」の意味
「動向(どうこう)」は、「物事・人物がどの方向に向かって動いたり変わったりしているのかということ」を意味しています。
「動向」という表現は、「特定の人・物事がじっと止まっているのではなくて、いずれかの方向に動くダイナミックなありさま」を示唆しています。
「動向」というのは、「ダイナミックに動いている人・物事の方向性あるいは傾向性」を意味している言葉です。
「動向」の使い方
「動向」は、「人が行動する方向性」や「推移して変わる物事の傾向性」を意味して使うという使い方になります。
例えば、「恩師の近年の動向が伝わってきました」や「米国・中国・ロシアなどの大国の動向はどうしても日本の政治経済に影響することになります」などの文章において、「動向」の言葉を使用することができるのです。
「動向」を使った例文
・『指名手配されて地下に潜伏したとされる犯人の動向は依然として不明のままです。』
・『メディアから伝えられている首相の動向からは、新型コロナウイルスの蔓延状況に対して次の一手があるとは思えません。』
・『景気には周期的な波があるとはされていますが、景気の動向を正確に予測できた経済学者はいません。』
・『アメリカはCIAなどのスパイを極秘潜入させることで、仮想敵国の動向をリアルタイムで探っています。』
・『大学院を修了して博士号まで取得した友人の動向がまったく聞こえてこないので、どこで何をしているのか心配です。』
「動向」の類語
「動向」の類語には、以下の言葉があります。
・『動静(どうせい)』……人や物事が動いたり静止したりすること。人が何かをしようとする動き。物事が変化する動き。
・『情勢(じょうせい)』……変化する事態が、現時点でどのような動きを見せていて、これからどのようになっていくのかの方向性。
・『様相(ようそう)』……物事および人が見せているありさま。現象・人物から知覚することが可能なすがた。
「動向」の対義語
「動向」は「物事や人物が動いて変化していく方向性(傾向性)」の意味を持つ表現であることから、「動向」と反対の意味を示す対義語は、国語辞典などの項目としては記されていません。
「状況」の意味
「状況(じょうきょう)」とは、「あるモノ・人がその時点において、どのような物事に取り巻かれているのかのありさま」を意味しています。
「状況」という言葉は、「変化している物事(事態)・人物が、その時々においてどのようなありさまをしているのか」や「その時点で他の物事・環境とどういった関わりの中に置かれているのか」を示しているのです。
「状況」の使い方
「状況」という表現は、「特定の物事・人物が現時点において、どんな事柄とどういう関係を持っているのか」といった意味のニュアンスで使用することができます。
「状況」の使い方は、「環境との相互作用で移り変わっているある物事や人の、その時点におけるありさま」の意味で使えるという使い方になります。
「状況」を使った例文
・『アフリカの難民の人々が置かれている状況は、日々の食べ物にも困るレベルの非常に厳しいものです。』
・『どんな状況にあっても最後まで諦めなければ、必ず絶望的な状況から抜け出せるチャンスが巡ってきます。』
・『彼らは自分たちが置かれている状況を、現実の状況よりも楽観的なものに感じていました。』
・『その会社の経営状況は悪化していましたが、都内に多数の不動産を保有しているので倒産はしないでしょう。』
・『貧しい兄弟姉妹を取り巻いている状況は、日に日に厳しさを増していきました。』
「状況」の類語
「状況」の類語には、以下の言葉があります。
・『状態(じょうたい)』……特定の人物・動物・物事などのその時点における様子。
・『情勢(じょうせい)』……国・経済・戦争などある程度大きな規模を持つ物事が、変化しているありさま。国家や市場経済など大きな物事がどういった方向に動いていくのかの流れ。
・『様子(ようす)』……外側から見て確認可能な物事のありさま。物事や人物が置かれている状況。
「状況」の対義語
「状況」は「日々変化しているある物事・人が、その時々(その時点)においてどんなものに取り巻かれているのかのありさま」を意味している言葉であるため、「状況」と反対の意味を示す対義語は国語辞典などに挙げられていません。
まとめ
「動向」と「状況」の違いを分かりやすく説明しましたが、いかがだったでしょうか? 「動向」と「状況」の意味・使い方・英語表記の違いや類語・対義語を詳しく調べたい時は、この記事の内容を読み込んでみてください。