この記事では、「下手」と「苦手」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「下手」と「苦手」の違い
「下手」【へた】は物事がうまくできないことです。
「苦手」【にがて】は、得意ではないと感じること、または、得意ではないためあまり好きになれない気持ちを指します。
「下手」と「苦手」はどちらも、物事がうまくできないさまを表現する時に使う言葉です。
ただし「下手」は技術や能力が劣っている「事実」を指しているのに対し「苦手」は技術や能力が劣っていることに対する意識や気持ちを表しているところが異なります。
「下手」と「苦手」の使い方の違い
「下手」は自分または他人の行動について、物事がうまくいかないさまを表す時に使います。
「苦手」は自分自身について、得意ではない事柄を説明する時に使う言葉です。
「下手」は他人を低く評価する時に使うことも多いのですが、「苦手」は他人の状態を形容する時には使いません。
「下手」と「苦手」の英語表記の違い
「下手」の英語表記は“poor”です。
“poor”は「乏しい」「十分でない」という意味を持ち、技術が乏しいことを表しています。
「苦手」は“a weak point”“no good”“poor”などと表記されます。
これは「得意ではない」という意味があります。
“poor”は「下手」と同じく、技術が乏しいという意味です。
また、あまり好きではないものを「苦手」と説明する場合には“I don’t really like~”が使われます。
「下手」の意味
「下手」【へた】とは、物事がうまくできないさま、器用ではないさま、またはそのような人や結果を指します。
「へた」という用語の由来は、波打ち際を意味する「端」【はた】といわれています。
波打ち際は深くないことから「奥深くない」つまり「端」は技術が巧みでないことの例えに用いられました。
その後「はた」が「へた」に変化し、技術が劣っているさまを「へた」と呼ぶようになったのです。
ちなみに漢字の「下」「手」は「へた」という言葉に後から付けられた当て字です。
「下」はほかのものより劣っていることを指し「手」は仕事の技術を指していることから「技術が劣っている」という意味で、これらの漢字が当てはめられました。
「下手」の使い方
「下手」は「~をするのが下手」「○○下手」のように、ある物事がうまくできないこと(人、結果)を表現する時に使います。
「下手」は他人に向かって言うと悪口になりますが、自身のことを形容して使う場合には謙遜の意味が生まれ、相手に良い印象を与えることもできます。
その際は「下手の横好き」(上達しないけど好きで熱心なさま)という表現を用いることも多いです。
かなり腕前が悪いことは「下手糞」【へたくそ】と言います。
「糞」「くそ」は人をののしる時に付け足す言葉で、人をけなす時には、しばしば「へたくそ」が使われます。
そのほか「下手に」と表した場合は「不注意に」「不適切に」という意味にもなります。
「下手」を使った例文
・『料理が下手でいつまでも上達しない』
・『口下手のため、人と話す時にはいつも緊張してしまう』
・『下手の横好きで、休日にはいつも絵画を描いております』
・『下手に手を出すと失敗するぞ』
・『なんて下手くそな字だ』
「下手」の類語
「下手」の類語には「拙劣」「不器用」「不細工」などがあります。
「拙劣」【せつれつ】技術が劣っていること
「不細工」【ぶさいく】できが悪いこと
「不器用」【ぶきよう】手際が悪いこと
「へぼ」技術が劣っていること
また、下手な芝居は「猿芝居」【さるしばい】、下手な字で書いた文章は「乱筆」【らんぴつ】や「悪筆」【あくひつ】とも表現されます。
「下手」の対義語
「下手」の対義語は「上手」【じょうず】です。
「上手」は技術が優れているさまを表します。
「下手」の反対で、「手」(技術)が「上」(人よりも良い)であることを意味しています。
「苦手」の意味
「苦手」とは、得意ではないと感じること、または、ある人や物事に対し嫌だと思う感情を指します。
「苦」は、不愉快さやつらさ、悩みを意味する漢字、「手」は人の行為や仕事の技術を意味する漢字です。
「苦」と「手」の組み合わせからは「うまくできなくて悩むさま」「物事に対して嫌な気持ちを抱くさま」がうかがえます。
この「苦手」という感情は「嫌い」とも少し似ています。
ただし「嫌い」は敬遠する感情が強い時に使われますが「苦手」は「あまり好きじゃない」程度で、そこまで強い感情は伴いません。
「苦手」はどちらかというと、克服しよう、受け入れようと努力しているけれどうまくいかない時の気持ちを表しています。
「苦手」の使い方
「苦手」には、2通りの使い方があります。
ひとつは、得意ではないもの、うまくできないと感じる行為を指す使い方です。
たとえば、運動、勉強、芸術など、うまくこなすには優れた技術が必要になる物事に対し、それが得意ではない、達成できないと感じる場合に「苦手」と表します。
それは勝てない相手を意味することもあります。
もうひとつは、そのものが受け入れられず、好きになれない気持ちを示す使い方です。
好きになれない対象は、行為や作業を指すこともありますが、食べ物、人や生き物であることも多いです。
「苦手」を使った例文
・『苦手な教科は英語です』
・『早起きするのは苦手』
・『苦手な対戦相手と試合をおこなう』
・『苦手な食べ物はピーマンです』
・『虫は苦手なので触れません』
「苦手」の類語
「苦手」の類語には「弱点」「不得意」「嫌い」があります。
「弱点」【じゃくてん】弱み、十分でないところ
「不得意」【ふとくい】得意ではないこと
「嫌い」【きらい】いやだと感じること
「苦手」の対義語
「苦手」の対義語は「得意」【とくい】です。
「得意」は、うまくこなすことができ自信を持っているさまを指します。
食べ物の話題で「苦手」の逆にあたる言葉を使うならば「好物」と表現するのが適切でしょう。
まとめ
「下手」と「苦手」は、どちらも物事がうまくできない様子を表現しており、類語として言い換えをすることも可能です。
ただし、それぞれの言葉が持つニュアンスは異なります。
使い方を間違えると、違和感のある表現になってしまうので、「下手」と「苦手」の正しい使い分けをマスターしておきましょう。