この記事では、「擁護」と「保護」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「擁護」と「保護」の違い
「擁護」と「保護」は同じような言葉だと考えている人もします。
しかしニュースで「憲法擁護」と言っても「憲法保護」とは言いません。
また「彼を擁護しました」と「彼を保護しました」では意味が全く違ってきます。
「彼を擁護しました」では、彼の権利を侵害する団体や人がいるので、支援して守ったとのだろうと想像できます。
しかし「彼を保護しました」では、彼が山で道に迷っていたのを救援隊が見つけて安全なところへ連れて行ったのだろうと想像します。
このように「擁護」は主に権利や憲法を侵害することから、守り庇う時に使う言葉で、「保護」は強い人や年長者が、弱い人や年少者を庇い守る時に使う言葉になります。
「擁護」と「保護」の使い方の違い
「擁護」も「保護」も「擁護する」「保護する」のかたちで使うことが一般的です。
しかし「擁護」は権利や法律を守る時に使われることが一般的です。
他にも言い争いで「僕は君を擁護するよ」など、肩を持つ意味でこの言葉を使うこともあります。
一方で「保護」人や自然などを守る時に使われ、喧嘩している人の肩を持つ場合には使われません。
ただし、大男が力のない女性を殴ったりしていれば、第三者が「保護する」と表現することになります。
「擁護」と「保護」の英語表記の違い
「擁護」は英語表記では「protection」「defence」「support」などがあります。
もし「人権を擁護する」を英語で言うなら「I/We defend human right」になります。
「保護」も「protection」を使ってあらわします。
「彼が彼女を保護する」なら「He take a her under his protection」となります。
また警察の保護は「protective custody」と表現します。
自然保護などの意味での「保護」であれば「conserve」を使います。
「自然保護団体」は「Nature conservation group」となります。
「擁護」の意味
「擁護」は(ようご)(おうご)とふた通りの読み方があります。
(ようご)は、危険や侵害から庇って守ることを意味しています。
(おうご)は、仏教の言葉です。
意味は仏様や菩薩が人々の祈りを聞いてあげて、彼らを守り助けてあげることになります。
(ようご)(おうご)にせよ、何かを守り庇うことを示します。
しかし現在ではどちらかといえば、権利、法律などの分野の話題ででよく耳にする言葉です。
「憲法第9条を擁護する」がその良い一例でしょう。
少々難しい言葉なので日常生活で起こる一般的な出来事には、「守る」「助ける」「支援する」を使うのが一般的です。
「擁護」の使い方
「擁護」は「する」と一緒に「擁護する」と使うのが一般的です。
また擁護するからには必ず侵害してくるものや敵がいます。
そのために喧嘩している人のどちらかに加担するときは「応援する」とも言いますが、「擁護する」とも言います。
もし明確な敵がいない場合には、「擁護」より「助ける」「支援する」と表現します。
「擁護」を使った例文
・『そのグループは人権擁護のためについに立ち上がった』
・『部長はいつも係長を擁護しているけれど、どうして七日』
・『今月から擁護団体が署名を集める運動を始めたらしい』
・『あのような態度を取られると、どこまで擁護できるか自信がない』
「擁護」の類語
「擁護」の類語には「保護」「庇護」「支える」「支援する」「守る」「庇う(かば)う」などがあります。
「擁護」の対義語
「擁護」の対義語は「侵害」になります。
例をあげると「憲法の擁護」と「憲法の侵害」です。
これは反対の意味を示しています。
「保護」の意味
「保護」は(ほご)と読み、ふた通りの意味を持ちます。
まずは外からの脅威や危険にさらされている人や動物や植物などを庇って守ることです。
もうひとつは救護が必要な人を警察など留め置くことです。
「警察に保護された」は、ドラマによく出てくるセリフです。
通常「保護」は、強いものが弱いものを、また大人が子供をかばい守るときに使用します。
よく耳にする言葉に「保護者」がありますが、これは子供を保護する人の意味です。
親が保護者になるのが通常ですが、様々な理由により代理人が保護者になることもあります。
「保護者」とは子供を保護する義務がある人を示し、必ずしも親でなくても良いのです。
さて現在は「自然保護」「動物保護」「環境保護」など、人間が危機に瀕している自然、動物、環境を守ろうという運動が盛んで、「保護」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。
「保護」の使い方
「保護」は、「保護する」の形で使うのが一般的です。
強いものが弱いものを、年長者が年少者を危険や被害から守る時に使います。
つまり「先生が生徒を保護する」とは言いますが、「生徒が先生を保護する」はニュアンス的に不思議な感じがします。
もし生徒が森の中で動けなくなった先生を安全な場所に連れて行った場合には、「助けた」「救助した」と表現する方がしっくりきます。
「保護」を使った例文
・『妹は森の中で迷子になっていた子供を保護して表彰されました』
・『母親は先月から保護犬をもらって飼い始めました』
・『保護者会で決定したことは、基本的に守るべきでしょう』
・『お肌を乾燥から保護するために、海水浴に行くときは日焼け止めクリームを塗って下さい』
「保護」の類語
「保護」の類語には「守護」「ガード」「防護」「守る」「救済」「防ぐ」などがあります。
「保護」の対義語
「保護」と対する意味を持つ言葉は「迫害」です。
また「保護色」の場合の対義語は「警戒色」です。
まとめ
「擁護」と「保護」は、似ているようでも意味が違う言葉です。
このふたつの言葉の使い方を間違えると、聞き手や読み手に間違った情報を与えることにもなりかねません。
それぞれの意味を理解して、きちんと使い分るようにしてください。