「王道」と「ありきたり」は日常会話の中でもよく使われている言葉ですが、意味を混同している人も多いようです。
この記事では、「王道」と「ありきたり」の違いを分かりやすく説明していきます。
「王道」とは?
「王道」【おうどう】は、儒教における考え方で「徳を備えた王がなす理想の統治法」を指します。
また、それが人のなすべき正統な道であることから、「定番の方法」「正当な方法」という意味で使われることが多くなりました。
「王道」の本来の意味は、武力によって民を制圧する「覇道」と比べ、王の人徳や慈愛の精神によって国を治める「王道」のほうが優れている、という孔子の教えにあります。
孔子の教えによる「王道」は「最適で理想的な方法」を表しますが、実際には「万人向けの方法」「定番の方法」という意味合いが通用しています。
時には「いつも通りのやり方でもの足りない」というネガティブなニュアンスで使われるケースもありますが、本来の意味から考えるとこれは誤用といえるでしょう。
そのほか「王道」には「近道、楽な方法」という意味もあります。
これは「学問に王道なし」(学問をなすためにの近道はない)ということわざに由来するものです。
「王道」の使い方
一例として「王道」は以下のような使い方をします。
・『王道を貫いて国の平和を守った』
・『明太子はご飯のお供の王道だ』
・『劇的に字が上達するための王道はない』
「ありきたり」とは?
「ありきたり」とは、平凡でちっとも珍しくない様を表す言葉です。
語源は動詞の「在り来たる」です。
「在り」は「存在すること」を、「来たる」は「今までずっとその状態が続いてきたこと」を意味しており、これらを組み合わせた「在り来たる」は、同じ状態が以前からずっと続いていることを表します。
それを形容動詞にしたものが「在り来たり」で、昔から変化がなく面白みがないことを表します。
「ありふれていて個性に乏しい」「発想にひねりがなく面白みがない」といった意味合いを持ち、否定的なニュアンスで用いられることが一般的です。
類語には「月並み」「マンネリ」「平凡」があります。
これらの類語も「ありきたり」と同様に、突出したところがなくありふれている様子を指しています。
「ありきたり」の使い方
一例として「ありきたり」は以下のような使い方をします。
・『ありきたりなセリフを言っても相手の気持ちはつかめない』
・『この絵はうまく描けているが、ありきたりでインパクトがない』
「王道」と「ありきたり」の違い
「王道」と「ありきたり」の違いを、分かりやすく解説します。
どちらも、世の中に浸透していてよく知られている様子を指しますが「王道」と「ありきたり」ではニュアンスが異なります。
「王道」は「定番の方法」という意味が通用していますが、前提に「人がとるべき最適で正当な方法」という肯定的な意味が含まれています。
「ありきたり」は「ありふれていて珍しくもない」という意味で、そこには「平凡で面白くない」という否定的な意味が含まれています。
また「王道」は「王が徳によって国を治めることが優れている」という儒教の教えから生まれた言葉であるため、現在使われている「代表的な方法」「ありふれた面白みのない方法」という意味合いは、本来の意味から少し外れてしまっています。
まとめ
「王道」と「ありきたり」は、どちらも「よく知られている定番の」というニュアンスを持ちますが、言葉の成り立ちや意味合いは異なっています。
間違った使い方をしやすいので、言葉の意味を理解して適切に使い分けていきましょう。