この記事では、「略儀ながら」と「末筆ながら」の違いを分かりやすく説明していきます。
「略儀ながら」とは?
「略儀」は、「省略」の「略」と「礼儀」の「儀」で構成されます。
この「儀」という言葉には「作法や所作の手本」との意味があります。
つまり、「略儀」とは、本来の作法ではなく、省略した作法であることを示す言葉なのです。
この言葉は、「略儀ながら書中にて」や、「略儀ながらメールにて」のように使用されます。
本来の省略しない儀は、直接相手に会って伝えることです。
この手段を省略して、書簡やメールという手段を採用していることを「略儀ながら」と示しているのです。
また、ここには「略儀で申し訳ないが」という感情が込められていることも、認識しておくとよいでしょう。
「末筆ながら」とは?
それでは「末筆ながら」とはなんでしょうか。
「末筆」は文章の最後を表す言葉です。
手紙でもメールでも、文章の最後に記載することを「末筆」と呼びます。
この言葉を使用する場合は「末筆ながら感謝を申し上げます」や「末筆ながら御礼いたします」のように使用されます。
これは必ずしも感謝の言葉でなくてもよいでしょう。
しかし、文章の最後に記載したことを「末筆で申し訳ないが」という気持ちを込めて使用するのです。
ここには、本来であれば末筆ではなく、文章の主題として取り上げるべきだという気持ちが背景にあるのです。
「略儀ながら」と「末筆ながら」の違い
それでは「略儀ながら」と「末筆ながら」の違いはどこにあるのでしょうか。
それは、示している対象にあると言えます。
「略儀ながら」が示すのは、手段です。
これに対して「末筆ながら」が示すのは、文中の場所です。
どちらも、相手に対して申し訳なく思う気持ちを表す言葉という意味では同じです。
しかし「略儀ながら」は、略儀である手段を採用したことを申し訳なく思います。
そして「末筆ながら」は、文章の末尾に記載することを申し訳なく思うのです。
このように、少し似ている言葉ですが、申し訳なく思う対象や内容に違いがあることが分かるのではないでしょうか。
「略儀ながら」の例文
「略儀ながら」を使用した例文を挙げます。
「略儀ながら」はメールや文中という手段を表す言葉と組み合わせて使用されることが多いと言えます。
・『略儀ながらメールにて失礼致します』
・『略儀ながら文中にてご挨拶申し上げます』
「末筆ながら」の例文
「末筆ながら」を使用した例文を挙げます。
「末筆ながら」は、感謝や祈りの言葉と組み合わせて使用されることが多いと言えるでしょう。
・『末筆ながら日ごろのご厚意に感謝申し上げます』
・『末筆ながら貴社のご繁栄を心よりお祈りいたします』
まとめ
このように、「略儀ながら」と「末筆ながら」は使い方が似ている言葉と言えます。
しかし、二つの言葉には「手段」と「文中の位置」という示す対象の違いがあるのです。
どちらも相手に申し訳なく思う気持ちを示すものですが、その違いを正しく把握するとよいでしょう。