「回虫」と「サナダムシ」はおなかに寄生するひものような虫として知られますが、よく似ていて違いが分かりにくいです。
この記事では、「回虫」と「サナダムシ」の違いを分かりやすく説明していきます。
「回虫」とは?
「回虫」【かいちゅう】とは、哺乳類の体に感染してさまざまな症状を引き起こす、細長い形をした寄生虫です。
「回虫」は、細長い糸のような形状を持つ「線虫類」という寄生虫で、さまざまな種類が存在します。
人に寄生するのは「ヒトカイチュウ」で、かつては国民の4割が感染するほど身近な寄生虫でした。
「回虫」の成虫は体長20cmほどの大きさで、外見は口と肛門があるだけで眼や脚などはありません。
もし人や動物が「回虫」に寄生されると、幼虫や成虫が消化器、呼吸器、目などに移動するため、さまざまな症状がみられるようになります。
感染の主なきっかけは「回虫」の卵が付着した生野菜などを食べたり、手指に付着した卵が口から体内に入ったりすることです。
体内に入った卵が小腸でふ化して体内をめぐり、気管支から口に上がって飲み込まれることで再び小腸で感染が起こります。
このように体内を回ることから「回虫」という呼び名がつけられました。
不衛生な環境が「回虫」の感染を引き起こすため、感染を予防するためには、手洗いや水道水の殺菌、食品の十分な洗浄が必要とされています。
「サナダムシ」とは?
「サナダムシ」とは、哺乳類の消化器に寄生する、平たいひものような形状をした寄生虫です。
「条虫」ともいいます。
大きさは体長数メートルに及び、体は頭部、片節と呼ばれる複数の節の連なりで構成されています。
「サナダムシ」という名前で呼ばれているのは、外見が「真田ひも」という平たいひもに似ているためです。
主に淡水魚、牛肉や豚肉の筋肉に寄生しており、加熱不十分な状態で食べることが原因で腸管への感染が起こります。
条虫のうち、日本で感染が起こりやすい種類は、サケやマスに寄生する「日本海裂頭条虫」です。
刺身など魚の生食をすることで、幼虫が口から入って腸に寄生して成長し、吐き気や下痢、栄養障害などの症状を引き起こします。
感染しても症状は軽いことも多く、肛門から出てきたひも状の虫に気付くことで初めて気づくケースも見られます。
ただし、まれに腸壁を破壊したり脳に寄生して危険な症状を引き起こすこともあるので注意が必要です。
感染を予防するためには、調理時に充分加熱することが必要となります。
「回虫」と「サナダムシ」の違い
「回虫」と「サナダムシ」の違いを、分かりやすく解説します。
「回虫」と「サナダムシ」はどちらも哺乳類に感染する寄生虫です。
どちらも汚染された食品を口から体内へ取り込むことで感染が起こります。
細長いひも状の寄生虫ということで混同されることもありますが、種類も生態も異なります。
「回虫」は線虫類の一種です。
生野菜などに付着した卵を体内に取り込むことで、ふ化した「回虫」が寄生し、幼虫と成虫が体内を移動して、消化器や呼吸器などに炎症を起こします。
「サナダムシ」は扁形動物の総称で、「回虫」とは生物学的な分類が異なります。
長く平たいひものような形状を持ち、幼虫が寄生している淡水魚や牛肉、豚肉を介して腸管への感染が起こります。
日本では刺し身を食べることによる感染が起こりやすく、感染した場合は主に消化器に症状が見られます。
「回虫」「サナダムシ」は比較的ありふれた寄生虫です。
感染を予防するため、調理時は衛生管理や十分な加熱を徹底することが求められます。
まとめ
「回虫」と「サナダムシ」どちらも細長いひものような形状をしているため、よく似ている印象を持たれがちですが、種類は全く異なります。
衛生管理が徹底している日本でもしばしば感染する例がみられます。
多くの人がこのような寄生虫がいることを知り感染予防を心がけることが望まれます。