説話は古くから伝わる物語や伝説のことをいいますが、大きく分けると世俗説話と仏教説話があります。
この2つにはどのような違いがあるのか紹介します。
世俗説話とは?
説話は元々、人から人に口頭で伝えられる物語のことを指していました。
神話や伝説、昔話などが口伝えによって伝承されていたのです。
それがいつからか文字として書き残されるようになりました。
説話を集めたものは、説話集と呼ばれています。
説話の中でも世俗的な事柄についての物語のことを世俗説話と呼んでいます。
庶民の暮らしが題材になっているものもあれば、貴族や皇族といった身分の高い人の日常生活が題材となっているものもあります。
世俗的というと庶民をイメージしてしまいがちですが、身分に関係なく世事一般に関わる話は世俗説話に分類されます。
仏教説話とは?
仏教説話とは、説話の中でも仏教信仰に根差した話が語られている説話になります。
具体的には、説法や霊験、発心、遁世、往生などが挙げられます。
説法は仏の道を説いて聞かせることをいいます。
霊験は仏が持つ不思議な力によって起こる出来事です。
発心は悟りを得るために仏の道に入ることをいいます。
日本で最初に誕生したのは「日本国現報善悪霊異記」という説話集で、平安時代の初期に書かれました。
奈良にある薬師寺の僧が書いたとされ、善悪の応報を説いた因果応報譚が多くあります。
民間の仏教信仰の様子も伺えるので、歴史的にも貴重な資料となっています。
また、仏教説話集にはその他にも、発心集や沙石集等があります。
発心集は方丈記の著者として知られる鴨長明が書いた仏教説話集で、様々な日本文学に影響を与えました。
世俗説話と仏教説話の違い
世俗説話は生活に根差した説話のことをいい、仏教説話は仏教信仰にまつわる説話です。
仏教以外の生活に関わるあらゆることが世俗説話の題材となっています。
説話を集めた文学作品を説話集といいますが、説話集の中には世俗説話と仏教説話が入り混じっているものもあります。
例えば説話集を代表する作品として挙げられるのは、今昔物語集と宇治拾遺物語です。
どちらも説話文学の傑作といわれる作品です。
今昔物語集は幅広い題材を取り扱っており世俗説話に分類されますが、因果応報譚などの仏教説話も含まれています。
宇治拾遺物語は日本だけではなくインドや中国も舞台となっており、様々な説話が収められています。
発心や往生談といった仏教説話もあれば、恋愛の話や盗人の話など世俗説話もあります。
また、昔話として知られるわらしべ長者やこぶとりじいさんといった説話もあるので、現代にも通じる馴染みのある説話集といえるでしょう。
まとめ
仏教説話と世俗説話の違いは、仏教信仰を題材としているかどうかにあります。
仏教信仰に関わる話であれば仏教説話になりますし、それ以外のものは世俗説話になります。
説話を集めた説話集で有名なのは今昔物語集と宇治拾遺物語で、仏教説話も世俗説話も収められています。