「平仄」と「辻褄」はどちらも物事の順序や道理に関する意味を含んだ言葉ですが、由来や使用する場面が異なります。
この記事では、「平仄」と「辻褄」の違いを分かりやすく説明していきます。
「平仄」とは?
「平仄」は「ひょうそく」と読む言葉で、「物事の条理」や「筋道」といった意味を持っています。
漢詩で用いられる「平声」と「仄声」が由来となった言葉で、漢詩を作成する際に上記の配列が重要になることから物事の順序や筋道といった意味で使用されるようになったと伝えられています。
「辻褄」とは?
「辻褄」は「つじつま」と読む言葉で、「物事の筋道」、「道理」といった意味を持ち合わせています。
「辻」は裁縫する際に「縫い目が十文字に合致する部分」のことを指し、「褄」は「着物の裾部分の左右が一致する箇所」のことを示すことから、「合致すべき部分がきちんと合う」という意味で用いられるようになったとされています。
「平仄」と「辻褄」の違い
「平仄」と「辻褄」は双方とも「物事の道理や順序」といった意味を持っており、お互いがお互いの類語と紹介されるほどほぼ同等の意味で使用されています。
両者の違いとしては、それぞれの言葉の由来や使用されるシチュエーションにあるといえます。
「平仄」が「漢詩で用いられる発音」がルーツとなっているのに対し、「辻褄」は「着物の縫い目や裾」が由来となっています。
使用される場面の違いとして、「平仄」は日常会話で使われる機会がほとんどなく、フォーマルな文書やビジネス分野で目にする言葉とされています。
一方、「辻褄」は「平仄」に比べるとポピュラーで、日常生活やビジネス分野など幅広い場面で使用されています。
「平仄」の例文
「平仄」は「物事の道理」や「順序」を意味する言葉で、「平仄を合わせる」や「平仄が合わない」などの使われ方をしています。
なお、「平仄を合わせる」の場合は「順序や道理が合う」といった前向きな意味合いだけでなく、「物事の順序を都合よく合わせる」など消極的な意味合いで使用される場合もあります。
また、ビジネス分野などでは資料や文書の体裁や文体、前後の順番などを整えることを「平仄をとる」と表現します。
・『彼は嘘が露呈しないよう平仄を合わせることに必死だった』
・『彼女は人気者だが、言っていることと実際の態度との平仄が合っていない』
・『開発チームに所属する社員全員が多忙だったため、プレゼン直前に急いで資料の平仄をとることになった』
「辻褄」の例文
「辻褄」も「物事の道理」や「筋道」を示す言葉で、使い方も「平仄」と似ており、「物事に矛盾がない」もしくは「物事の順序や帳尻を都合よく合わせる」といった意味合いの「辻褄を合わせる」や「辻褄が合う」という言い回しが普及しています。
なお、上記と逆の意味では「辻褄が合わない」という表現が用いられます。
・『信じがたい話だが、辻褄が合っているため信憑性はある』
・『嘘がバレないよう懸命に辻褄を合わせても、どこかにほころびが出てくるものだ』
・『彼女の書いたシナリオは途中でストーリーや登場人物の関係性の辻褄が合わなくなってくる』
まとめ
「平仄」と「辻褄」はほぼ同等の意味で使用されており、お互いを言い換えて使用することも可能とされていますが、双方の由来や使用する場面に相違点があります。
ぜひ参考にして両者の使い方を知り、日本語に関する知識を深めてください。