正月の縁起物として破魔矢と鏑矢、派手に飾られた矢を神社で見掛ける機会は多いでしょう。
しかし具体的な違いを説明できる方は少ないと思われます。
この記事では、「破魔矢」と「鏑矢」の違いを分かりやすく説明していきます。
「破魔矢」とは?
「破魔矢」とは読んで名の如く、魔を撃ち破り自らに降り注ぐ災いを断つ事を願った矢と言っていいでしょう。
正月によく見掛ける事が多いものの、実際のタイミングは様々で新生児の初節句や新築した際の上棟式において鬼門に向けて設置されます。
「鏑矢」とは?
「鏑矢」は矢じりに鏑をつけたものを指し、その用途は様々なものが挙げられます。
有名な用途としてはやはり音が出るのが特徴です。
陣太鼓と同様に戦国時代の合戦においては合図として多用されました。
「破魔矢」と「鏑矢」の違い
端的にいえば「破魔矢」は願をかけた形式的なものと言っていいでしょう。
目的に関しては災いを破る、封じる事が主観的となっています。
対する「鏑矢」は実用的なものだと言っていいでしょう。
戦国時代の本陣からうちならされる陣太鼓とともに様々な合図として使われてきました。
特に平地においての乱戦では敵大将の部隊を発見した際に打ち上げられたり、戦場においての撤退を知らせる道具として使われています。
「破魔矢」の主な用途
・『正月の風物詩としての存在』
古来、正月の伝承行事であった射礼や破魔打の習わしが年月を経過することによって風化。
神器としての側面を強く残しての縁起物として現代までにその姿を残したものです。
・『装飾物としての存在』
矢じりが鋭くなく願掛け札やお守りなどを装着したものが現在の「破魔矢」のスタイルだと言っていいでしょう。
正月の縁起物として紅白の鮮やかな装飾をしたものもよく見かけられます。
商標登録がされていたため20世紀代のマスメディアでは魔除けの弓呼称で呼ばれる事がほとんどでした。
「鏑矢」の主な用途
・『現代では流鏑馬などで使用』
流鏑馬イベントで使用されるのが鏑矢です。
京都での各種神事でその光景が見られ、有名なのは京都下鴨神社での流鏑馬神事でしょう。
また各地での大名や合戦イベントでの催事でも場を盛り上げるための小道具として使われます。
・『戦国時代は合戦で実用的に使用』
その歴史は古く紀元前5世紀の中国戦国時代にその姿を確認する事ができます。
日本では平安時代から「矢合わせ」として使われ、室町時代頃までは戦場の作法として使われてきました。
その後戦国時代に入ると合戦の合図、各種信号として実用的に使われる事になりました。
まとめ
「破魔矢」「鏑矢」両者とも縁起物、飾り矢としての側面を持ちます。
「破魔矢」は古来、邪を撃ち破る事を目的に現代に至るまでその役割は変わっていません。
「鏑矢」は現代に至っては実用的に使う余地がないため、神事で縁起物として使用される事が殆どだと言っていいでしょう。