この記事では、「抵触」と「侵害」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「抵触」と「侵害」の違い
「抵触(ていしょく)」とは、「ある行為が法律・規則に触れてはいるが(反してはいるが)、特定の他者の権利を侵害しているかどうかまでは分からないこと」を意味しています。
「抵触」に対して「侵害」は、「法律・規則に違反していることは前提で、他者の権利・利益・所有を侵して実際に損害を与えていること」まで意味している明確な違いがあります。
また「抵触」には、「触れること」や「相互に矛盾して同時に成り立たないこと」といった「侵害」にない意味も持っています。
「抵触」と「侵害」の使い方の違い
「抵触」と「侵害」の使い方の違いは「抵触」は「法律・ルールに反している事実だけ」を指して使われますが、「侵害」は「法律・ルールに反していて、さらに相手の利益・権利・所有などに現実の損害を及ぼしていること」までを意味して使う違いです。
例えば、「自治体の条例に抵触する」という言い方は「条例に反する」の意味で使えるのですが、「自治体の条例を侵害する(=自治体の条例の権利を侵して損害を与える)」は意味が通じないという使い方の違いが挙げられます。
「侵害」を適切に使いたいのであれば、「自治体の条例に抵触して、市民の権利を侵害した」と言い換える必要があるのです。
「抵触」と「侵害」の英語表記の違い
「抵触」を、英語で表現すると以下になります。
“against~”“against the law”……~に対抗する・~に反する。
~に抵触する。
法に抵触する。
“touch”……物理的に人・物に触れること。
抵触。
“conflicted with~”……~と矛盾する。
~に抵触する。
「侵害」を、英語を使って表記すると以下になります。
“infringe on~”……法律に反して権利などを侵害する。
~を侵害する。
“violate~”……有形力(暴力)を行使して侵害する。
~を侵害する。
“infringement”“invasion”……権利・所有・土地などの侵害。
侵害。
「抵触」の意味
「抵触(ていしょく)」とは、「法律・規則などのルールに触れること」や「法律・規則などのルールに反している状態」を意味しています。
「抵触」の表現には、「物理的に触れたりぶつかったりする」や「物事・内容が相互にぶつかって矛盾する、二つの事柄が両立しない」といった意味も備わっています。
「抵触」の使い方
「抵触」は、「法律・条例・規則などのルールに触れたり反したりすること」を意味して使う使い方になります。
例えば、「この宣伝方法は、景品表示法に抵触する疑いがあります」などの文章で使用可能です。
「抵触」の表現は、「物理的にふれる・ぶつかるの意味」や「物事・主張がお互いに衝突して両立しない(矛盾する)の意味」でも使うことができます。
「抵触」を使った例文
・『街頭での客引きは、地方自治体の条例に抵触することが多くなっています。』
・『服装や髪型はある程度自由ですが、学校が定めた規則には抵触しないようにしてください。』
・『駐車場のブロックに車のバンパーがわずかに抵触して傷がつきました。』
・『国会議員のその発言は、前回の発言と抵触していて説得力がありませんでした。』
・『この問題に対する私の提案内容は、今まで述べてきた考え方に抵触するものではありません。』
「抵触」の類語
「抵触」の類語には、以下の言葉があります。
・『違反(いはん)』……あるルールや法律などの規定に反していること。
・『矛盾(むじゅん)』……二つ以上の物事・行為が同時には成り立たないさま。
二つの物事の内容が食い違い、辻褄が合わないこと。
・『接触(せっしょく)』……物や人に物理的にふれること。
「抵触」の対義語
「抵触」の対義語には、以下の言葉があります。
・『遵守(じゅんしゅ)』……法律・規則などのルール(決まり)を破らずにきちんと守ること。
「侵害」の意味
「侵害(しんがい)」の言葉は、「ある行為が、他者の権利や利益を侵して実際の損害・損失を及ぼすこと」を意味しています。
「侵害」には、「他者の利益・権利・所有物などを有形無形に侵すこと」と「現実(実際)に損害・損失を与えること」、「法律(ルール)に反していること」の含意があります。
「侵害」の使い方
「侵害」の言葉は、「ある行為・現象が、相手の権利や法益を侵して実際の損害を及ぼす」の意味で使われます。
「侵害」は、「ルール(法律・決まり)に反するだけではなくて、さらに相手に現実的な損失・被害を与える場合」に使うという使い方をします。
「侵害」という表現は、「侵害する・侵害される・権利の侵害・~の侵害・侵害の申告」などの用法で使用することが可能です。
「侵害」を使った例文
・『マンションによる日照権の侵害を訴える裁判は、過去に何度か起こされています。』
・『先祖代々の土地を侵害されて黙っているわけにはいきません。』
・『人のスマホを勝手に覗き見ることはプライバシーの侵害になります。』
・『不当に権利が侵害されたのであれば、法的な対抗措置を取るべきです。』
・『インターネットの普及によって、悪気がなくても著作権の侵害が増えています。』
「侵害」の類語
「侵害」の類語には、以下の言葉があります。
・『犯罪(はんざい)』……法律に違反していて罪となる行為。
・『蚕食(さんしょく)』……少しずつ(端の部分から)段階的に、他者が所有する土地や領域に食い込んで奪うこと。
・『侵入(しんにゅう)』……他者が所有権を持つ土地や建物の内部に不当に入り込むこと。
「侵害」の対義語
「侵害」の対義語には、以下の言葉があります。
・『保護(ほご)』……人権・権利・利益などを侵すのではなく守ること。
・『擁護(ようご)』……弱者あるいは不利な立場にある人を、かばって守ること。
まとめ
「抵触」と「侵害」の違いを分かりやすく説明しましたが、いかがだったでしょうか? 「抵触」と「侵害」の意味・使い方・英語表記の違いや類語・対義語を詳しく知りたい時は、この記事の内容をチェックしてみてください。