日本語には同じ音で違った意味を持つ漢字や熟語が多く存在しますが、今回紹介する「思考」と「志向」は似た意味を持っており、使い分けに迷う人も多いものとして有名です。
「思考」と「志向」の違い
「思考」や「志向」は主に心の思いを示すものとしての意味がありますが、まずは「思考」から見ていきます。
この「思考」という言葉は単純な思っていることや考えていることを指し、思いにふけるという意味が中心となっています。
「志向」もある種類の心の思いを示す意味があるのですが、こちらは思いではなく志(こころざし)という漢字が使われており、気持ちや考え方や意識が特定の方向を向く状態を表しています。
前に上げた「思考」は単純な考えや思いという意味でしたが、こちらは特定の方向を向いていない内省的なものとなっているのが特徴です。
また「志向」は特定の目的や理想を叶えるために意識や関心を持つという意味も含まれており、より現実的な行動へと結びつきやすい言葉なのです。
「思考」と「志向」の使い方の違い
「思考」の言葉は主に思いふける行為に使われることが多く、頭を働かせることや考えることそのものに対して使います。
「思考」の目的はあくまでもその考えや頭を働かせることであり、それ自体に没頭することも多いのが特徴です。
対して「志向」は意識や考えや気持ちが特定の目的を目指すことを意味することが多く、比較的前向きな意味合いを持つのが特徴です。
よく用いられる用語としては健康志向がありますが、こちらは健康になることを目的としており、単純な思考ではないのでこちらの言葉が使われるのが正しいとされています。
「思考」と「志向」の英語表記の違い
「思考」は英語で“thinking ”、“thought ”、“consideration ”などがあります。
「志向」は英語で“orientation ”、“intention ”などがあります。
「思考」の意味
「思考」は自分がこれまでに取得した知識や経験から、考えることや物思いにふけるという意味があります。
「思考」自体には特にこれと言った目的はなく、単純に没頭することも多く散逸的な行為となることも多いのが特徴です。
「思考」の使い方
「思考」は特にこれといった目的もなく思いにふける時や、考えに没頭する際に使われます。
「思考」を使った例文
・『朝のコーヒーを飲んだ後に思考にふけるのは最高の一時である』
・『コンピューターに思考回路を乗せるという夢は現在でも研究されており、AI技術の発展により精度が高くなっている』
・『お酒を飲むと思考が散漫になるのであまり好きではないが、ストレスの解消としては効果があるのだろう』
「思考」の類語
「思考」の類語としては「思索」、「思い」、「考え」などがあります。
「思考」の対義語
「思考」の対義語としては「感情」、「行動」などがあります。
「志向」の意味
「志向」の意味には、ある特定の目的や対象に向かって考えることや意識を一定方向へ向けるというものを含むことが多い傾向があります。
散漫的な「思考」とは違って、目的意識を持ちながらの考えとなるのでポジティブな意味合いで使われることも多いのが特徴です。
「志向」の使い方
目的意識などを持っていることから、「志向」はポジティブな意味合いで使われることが多くなります。
特に「上昇志向」は有名な熟語であり、気持ちが前向きでより上の目的を目指そうという意識が伴っているのが特徴です。
「志向」を使った例文
・『今年入った新入社員は上昇志向を持っており、非常に活発なのは好ましいことだ』
・『アーティストを志向する若者はいつでも存在するが、最近ではインターネットの動画配信ストリーマーを志向する若者がますます増えてきているのは驚きである』
・『30代になってから健康志向を謳っている商品が気になってきたので、情報を探すようになりました』
「志向」の類語
「志向」の類語には「意図」、「目標」、「目指す」などがあります。
よく似ている言葉としては「指向」がありますが、こちらは物理的な方向性を示す言葉として区別されています。
「志向」の対義語
「志向」の対義語は熟語単位ではほとんど見かけられません。
熟語の接頭辞に否定の語を付けた「非志向」、「無志向」などを使用することがほとんどです。
まとめ
このように「思考」と「志向」は大きな違いがあり、単純な考えや物思いに関しては「思考」を使うのが正しいとされています。
漠然とした大きな物思いをするのが「思考」なのですが、これをきっかけとして何か目的を思いついたり、特定の意識を向いたりすると、それは「志向」になることも可能です。
「志向」は特に精神的な方向性を持ちながらする考えや意識という意味があるので、ポジティブな意味で使われることも多いのが特徴です。
「しこう」という言葉には同音異義語が多いのですが、「思考」と「志向」は精神的な意識の違いがはっきりとしているので使い方もきっちりと分かれています。