この記事では、「向上」と「強化」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「向上」と「強化」の違い
「向上」とは、よりよい方向、より優れた状態にむかうことです。
「強化」とは、強くすることです。
強くすることが、必ずしもよいとは限りません。
また、よりよい方向に向かったり、より優れた状態に向かったりすることが、強くなることでもありません。
たとえば、今までテストで50点くらいまでしか採れなかった人が、これよりも上の点数、たとえば90点など採ることができるようになれば、これは学力が「向上」したといえます。
「向上」していても、強くなっているのではありません。
「向上」することが「強化」に結びつくのではないのです。
「向上」と「強化」の使い方の違い
よりよい方向に向かうことに「向上」を使用します。
能力や程度などについていいます。
強くなることに「強化」を使用します。
「強い」には、ゆるみがない、力や技が他に負けない、物事に耐える力がある、程度や度合いが大きいという意味があります。
そのため、ゆるみがない状態になったり、耐える力が高くなったりすることに、「強化」という言葉が使われています。
「向上」と「強化」の英語表記の違い
よりよい状態になることは、改善、進歩ということができます。
「向上」は英語で、改善の意味では“improvement”と表現をし、進歩の意味では“progress”や“advancement”と表現をします。
「強化」は英語で“reinforcement”と表現をします。
「向上」の意味
「向上」とは、よりよい方向、より優れた状態に向かうことです。
「良い」には、質が優れている、水準よりも上である、裕福である、健康である、健全である、地位や身分が高いといった意味があります。
よい方向といっても、天気がよい方向に向かう、局面がよい方向に向かう、事業がよい方向に向かうなどさまざまありますが、「向上」が意味しているのは、能力や程度などがよい方向に向かうことです。
たとえば、今まで階段を上ると息がぜーぜーいってしまう人が、階段を平気で上がれるようになりました。
これは、体力がよい方向に向かっているといえ、このことを「体力が向上する」ということができます。
ある商品を今までは1日でやっと100個作れる程度だったものが、1日で300個作れるようになりました。
これは作る能力がよい方向に向かった、作れる程度がよい方向に向かったということができ、「向上」したといえます。
「向上」の使い方
能力や程度がよい方向に向かうことに使用します。
経済事情など、情勢については使用しません。
「向上」を使った例文
・『環境への負荷が少ないエンジンへと性能が向上した』
・『日本語の能力が向上した』
・『カーナビの案内性能が向上する』
・『この製品を使って運動することで、体力の向上につながるだろう』
・『技術の向上のために学ぶ』
「向上」の類語
「好転」が類語です。
状態や情勢がよい方向に向かうことです。
「向上」の対義語
「低下」が対義語です。
物事の質や程度が悪くなることという意味があります。
「強化」の意味
「強化」とは、強くすることです。
「強い」には、耐える力がある、ゆるみがない、程度が大きい、力や技が他に負けない、屈しないといった意味があります。
あるビルに不審者が侵入をし、物がとられてしまいました。
不審者が侵入できるような状態は、警備体制が強くないといえそうです。
そこで、警備体制をさらに強くすることにしました。
それによって、不審者が侵入することはなくなりました。
こういったことが「強化」であり、「警備体制を強化する」のようにいうことができます。
強くするためには、強くするための行動をする人が必要です。
警備体制の場合だと、警備会社が行為者になります。
「強化」の使い方
強くすることに使用をします。
強くするためには、その行為を行う人が必要なので、自然現象には使用しません。
「強化」を使った例文
・『地域のつながりを一層強化する』
・『製品の管理を強化する必要がありそうだ』
・『需要に応えて、キッチングッズのラインナップを強化した』
・『不審者がいないか見回りを強化する』
・『災害に備えて耐震性を強化する』
「強化」の類語
「強める」「増強」「補強」が類語です。
「強める」は、強くすること、勢いを増すことです。
「増強」には、人や設備を増やして機能を強くする意味があります。
「補強」とは、弱い部分や足りないところを埋めて満たして強くすることです。
「強化」の対義語
「弱化」が対義語です。
弱くすることという意味があります。
まとめ
よい方向に向かうことが、必ずしも強くなることではありません。
「向上」はよりよい方に行くこと、「強化」は強くなることで、意味が違う言葉です。