「人情のなさ」を表現するとき、「非情」なのか「薄情」なのか「無情」なのかで迷った経験はないでしょうか?
いずれも同じような言葉に感じますが、何か違いや使い分けはあるのでしょうか?
この記事では、「非情」と「薄情」と「無情」の意味や違いについて分かりやすく説明していきます。
「非情(ひじょう)」の意味とは?
「非情」とは、「喜怒哀楽など人として持っているべき感情がないこと」や「慈しみや思いやりなど人としての温情がないこと」を意味する言葉です。
「非」は「非(あら)ず」とも書き、「○○がない」のように否定の意味を表す字であり、「情」という字には「こころ」や「気持ち」の他、「思いやり」や「なさけ」などの意味が含まれています。
「非情」は文字通り「人としてのこころや思いやりがないこと」を表した言葉です。
ちなみに、仏教用語において「非情」は「草木や土、石など感情のないもの」を指し、逆に人や動物など感情を持つものは「有情(うじょう)」とされています。
「非情」を使った例文
・『リーダーは時に、非情な判断をくださねばならないことがある』
・『国王は非情にも、不満を持つ民衆を処罰してしまった』
・『上司の非情な仕打ちに対し、彼はついに裁判を起こすことにした』
「薄情(はくじょう)」の意味とは?
「薄情」とは、「やさしさや思いやりに欠けること」や「人情に乏しいこと」を意味し、文字通り「人としてのなさけ、思いやりが薄いこと」を表した言葉です。
「薄情」を使った例文
・『お世話になった人への恩を無下にするほど、彼は薄情な人間だ』
・『金の切れ目が縁の切れ目と言わんばかりに、彼女は薄情にも知人を突き放した』
・『生活に困っている親子に対して、周りの人々はとても薄情だった』
「無情(むじょう)」の意味とは?
「無情」とは、「慈しみや思いやりの心がないこと、そのさま」を意味する言葉です。
ちなみに、仏教用語において「無情」は「感情や精神など心の働きがないこと」を指します。
「無情」を使った例文
・『無情な仕打ちを与えた親に対して、彼は強い怒りを抱いているようだ』
・『何とか生き延びようとあがく彼女に対して、自然は無情であった』
・『時の流れは無情にも人々の希望を少しずつ奪っていった』
まとめ
「非情」は「人間らしい感情や人間らしい思いやりがないこと」という意味を持ち、「無情」も「慈しみや思いやりなどがないこと」という意味を持つため2つは類義語です。
「薄情」も「人としての思いやりに欠けること」という意味を持つため、「非情」や「無情」に近い言葉と言えます。
しかし、「薄情」が指しているのは「情が薄いこと」であるため、「非情」や「無情」のように情がないわけではなく、逆に言えば「わずかながら情が残っている」とも解釈できます。
したがって、ニュアンス的には「薄情」に比べて、「非情」や「無情」のほうが「人情の無さ」をより強調した表現と言えるでしょう。