この記事では、「違反」と「侵害」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「違反」と「侵害」の違い
「違反」とは、憲法、協定、契約などに背くことです。
「侵害」とは、他人の権利や所有などを損なう行為をして、損害を与えることです。
「違反」の場合、憲法、協定、契約など決められたルールがあります。
そして、それに従わない意味を持っています。
「侵害」の場合は、憲法や協定など明確な決まりに従わないという意味ではありません。
他人が持っている権利や所有などを損ない、損害を与える意味を持っています。
他人の作品を無断で使用することは著作権法に背く行為なので「違反」といえます。
そして、他人の著作権をおかしているので「侵害」ともいえます。
しかし、「違反」をしたから「侵害」にもなるのではありません。
たとえば、赤信号を無視するのは交通ルールを守っていないので、「違反」といいます。
交通ルールを守らなかったからといって、必ずしも他人の権利をおかすわけではありません。
運転者が罰則を受けるだけということもあるのです。
そのため、ルールに背いたからといって、必ずしも「侵害」になるのではありません。
「違反」と「侵害」の使い方の違い
ルールに反することを指して「違反」を使用します。
他人が持っているものをおかして、損害を与えることには「侵害」を使用します。
「違反」と「侵害」の英語表記の違い
「違反」は英語で、法律や規則については“violation”、契約や約束については“breach”と表記をします。
「侵害」は英語で“infringe”や“encroach”と表記をします。
「違反」の意味
「違反」とは、憲法、協定、契約などに背くことです。
「背く」には、取り決めたことに従わず、反抗や反対をするという意味があります。
賃貸物件では、貸主の許可なく第三者に貸してはいけないと決められています。
このことは、 民法第612条で決められています。
また、賃貸物件の契約書にも記載されているはずです。
それにもかかわらず、貸主の許可を得ずに第三者に貸してしまった場合には、契約に従っていないことになり、「違反」といいます。
公共の場では、ある場所では喫煙をしてはいけないと定められています。
それにもかかわらず、その場所で喫煙をしたらルールを破っていることになり、これも「違反」といえます。
「違反」の使い方
憲法、協定、契約などに従わないことに使用をします。
国や地方が決めている憲法や条例についてだけでなく、個人間の約束にも使用できます。
ある家庭では、食事当番を決めて、当番にあたった人が食事を作るという約束事がありました。
しかし、面倒になってしまった人は、この約束を守らず、自分は外で食事をし、家族の食事は作りませんでした。
これは、家族の間の約束事に従っていないことになり、「違反」といえます。
「違反」を使った例文
・『医療行為に違反する』
・『違反の疑いで取り調べが行われる』
・『ペットを飼育しており、賃貸契約に違反する』
・『違反の件数が減少した』
・『違反をしたものには罰金がある』
「違反」の類語
「不法」「違憲「違法」が対義語です。
「不法」には、法に違反するという意味があります。
「違憲」とは、憲法の規定に従わないことです。
「違法」とは、法律や規定に従わないことです。
「違反」の対義語
「順守」が対義語です。
法律や道徳などを守り従うことという意味があります。
「侵害」の意味
「侵害」とは、他人の権利や所有をおかして、損害を与えることです。
「侵す」とは、他人の権利などを損なう行為をすることです。
日本の法律では人格権が定められています。
人格権とは、氏名、生命、身体、自由など、個人とは切り離せない私益を保護するための権利です。
本人の許可なく氏名を使用されてしまったり、生命が脅かされるようなことをされたりすれば、人格権をおかしているといえます。
そして、それによって損害を被れば「侵害」といえます。
「侵害」の使い方
他人の権利や所有をおかして損害を与えることに使用をします。
個人の権利や所有、会社など組織の権利や所有、他国の領土などに使用できます。
「侵害」を使った例文
・『プライバシーを侵害される』
・『人格権の侵害があるといえるだろう』
・『侵害がなかったか調べる』
・『肖像権を侵害する行為』
・『侵害されたと訴える』
「侵害」の類語
「侵略」が類語です。
他国を攻めて、領土や物品などを奪うことという意味があります。
「侵害」の対義語
「擁護」が対義語です。
侵害や危害から守るという意味があります。
まとめ
他人に「侵害」を与える行為が「違反」にもあたることがありますが、2つの言葉は意味が同じなのではありません。
「違反」は憲法や契約などに背くこと、「侵害」は他人の権利などをおかして損害を与えることです。