この記事では、「倫理」と「道徳」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「倫理」と「道徳」の違い
初めに二つの言葉の意味を確認します。
「倫理(りんり)」とは、社会生活の中で人間が守り行うべき道で、人間が行動する時の規範となるもののことです。
日本では、高等学校の授業で、「倫理」と位置付けられています。
倫理学の略称としても用いられます。
「倫理」は、英語の“ethics”を日本語に翻訳された際に造られた言葉です。
「倫」には、人が修めて守るべきみちという意味と、くらべものに成る相手、仲間、友達といった意味があり、「理」には、ものごとの道筋、もっともなこと、道理などの意味があります。
「道徳(どうとく)」とは、法律などのルールと異なっており、社会生活の中で、人間が自ら善悪を判断して正しい行いをするために守らなければならない内在的な規範のことです。
日本では小中学校の授業で、「特別の教科:道徳」と位置付けられています。
道と徳を説くという老子の言葉が語源となっています。
「道」には、人として守るべきみちという意味があり、「徳」には、立派な行いや品性という意味と、優れた人格者という意味があります。
「倫理」と「道徳」は、基本的に同じような意味合いを持つ言葉ですが、その言葉が造られた経緯に違いがあり、「倫理」は、社会や特定の集団などの外的要因から与えられた規範という意味合いがあるのに対し、「道徳」は、社会の中で何が正しいことなのか、どういう行動が適切なのかを、場所や状況に合わせて個人が判断する規範という意味合いの違いがあります。
「倫理」と「道徳」の使い方の違い
「倫理」は、個人のことから社会にまで幅広く使われており、仕事や環境の立場によっても守るべきことがらの範囲や優先順位が異なり対立が生まれた結果、明確に法律として取り決めが定められたものや、これまでの歴史によって取り決めはないが社会的に守られるものがあります。
時代や国家などによっても違いがあり、属する社会によっても違いがあることに注意が必要です。
「道徳」は、基本的に個人の内在的な規範に使われるようになりつつあり、社会によって決められることではなく、その個人がこれまで生きてきた中で得た経験や環境を基準として自ら判断していくものなので、育ってきた環境が違う場合には、それぞれの人間によって大きく違いが生まれることに注意が必要です。
「道徳」と「倫理」はどちらも、絶対的な決まりがあるわけではなく、社会の変化や環境の変化によって、これまでの規範と照らし合わせて変化していく可能性があります。
「倫理」と「道徳」の英語表記の違い
「倫理」は、英語表記で、“ethics”となります。
“ethics”は、倫理、(個人、ある社会、職業、国家、都道府県、市町村などの)道徳原理、倫理学、道義、徳義などの意味があります。
「倫理」の翻訳元の言葉なので、英語の時点で元々あった意味合いが「倫理」には引き継がれており、社会や会社、職業などのグループの中で設定された行動規範といったニュアンスも含む言葉です。
語源は、ギリシャ語の“ethos”で社会的習慣を表します。
「道徳」は、英語表記で、“moral”となります。
“moral”は、(善悪の基準となる)道徳、倫理的な、道徳を教える、教訓的な、善悪の判断ができる、道義をわきまえた、道徳的な、品行方正な、などの意味があります。
「倫理」に含まれるような、個人が正しいか間違っているかを判断していくというニュアンスも含む言葉です。
語源は、ラテン語の“mores”で社会的習慣を表します。
“ethics”と“moral”の語源は、ギリシャ語とラテン語ですが、元々持っていた言葉の意味が同じであるため、本来持っている意味は同じものです。
それぞれの言葉は、思想家達によって、その主張の中で再定義されていった結果、現代のような意味合いの違いが生まれています。
「倫理」と「道徳」を使った例文
・『窃盗事件は、倫理に反する』
・『人を傷つける人には倫理観がない』
・『職業倫理に照らし合わせて行動する必要がある』
・『道徳教育は理解させることが難しい』
・『道徳観念を養うことが大切だ』
「倫理」と「道徳」の類語
類語には、人倫、道義、功徳、徳義、人道があります。
人倫とは、人として守るべき道という意味です。
道義とは、人の踏まなければならない道という意味です。
功徳とは、幸福をもたらすもとに成る善行のことで、宗教的なことがらに使われます。
徳義とは、人として守るべき道徳上の義務です。
人道とは、人として守り行うべき道でという意味と、人が通れるように定められた道という意味があります。
「道徳」の対義語
対義語には、背徳、悪徳があります。
背徳は、道徳にそむいていることです。
悪徳は、人の道にそむく心や行動のことです。
まとめ
「倫理」と「道徳」の違いについて説明しました。
「倫理」は、社会生活の中で人間が守り行うべき道で、人間が行動する時の規範となるもののことです。
「道徳」は、法律などのルールと異なっており、社会生活の中で、人間が自ら善悪を判断して正しい行いをするために守らなければならない内在的な規範のことです。
「倫理」は、社会や特定の集団などの外的要因から与えられた規範という意味合いがあるのに対し、「道徳」は、社会の中で何が正しいことなのか、どういう行動が適切なのかを、場所や状況に合わせて個人が判断する規範という意味合いの違いがあります。