この記事では、「商号」と「名称」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「商号」と「名称」の違い
初めに「商号」と「名称」の意味について確認します。
「商号」とは、個人商人や会社が営利目的で業務する際に、自己を表示する為に使用する「名称」のことです。
「名称」とは、(ものごとの)呼び名、名前、呼称のことという意味があり、人物名には用いられず、ものごとや、組織名などについて用いられます。
昔は、ほまれ、名声、評判などの意味もありましたが、現在では、ほとんど用いられなくなっているため、通じないと考えた方がよいでしょう。
「商号」と「名称」の使い方の違い
「商号」は、商法や、会社法、商業登記法などで使い方について規定されています。
商法では、原則として、商人は、その氏、氏名その他の名称をもって自由に商号を付けられると定められており、その商号を登記できます。
しかし、個人商人の場合には、会社と誤認されるもの、銀行や信用金庫、協同組合などと誤認されるもの、不正の目的をもって他の商人や会社と誤認されるものが「商号」として使用できないことが定められています。
個人商人は、任意に商号登記するので、登記されていない場合には屋号(お店の名前など)を使うことになりますが、名称に用いてよい条件は同じですので注意が必要です。
会社法において、会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の文字を前後何れかに用いなければならず、その他の業種の会社が銀行や信用金庫、協同組合などと誤認されるもの、不正の目的をもって他の商人や会社と誤認されるものが「商号」として使用できないことが定められています。
また、前述したもの以外に、有限会社というものがありますが、2006年に有限会社法が廃止されたため、新しく有限会社という言葉を使って「商号」をつけることはできません。
会社の「商号」とは、会社の正式名称のことになります。
「名称」の使われ方は、社会的に通用する呼び名といった意味合いやカテゴリー分けのような意味合いがあります。
例えば、東京タワーという「名称」は、公募で選ばれた呼び名になるのですが、正式名称は、日本電波塔ということがあります。
これをもとにすると、「名称」としては、東京タワーと呼んでも、日本電波塔と呼んでも正しい使い方です。
説明書などでの名称の使われ方は、部位についての説明などがあげられます。
例えば、テレビでは、各部位の名称として、電源ボタンや、液晶パネルなどがあります。
社会的には、「名称」という言葉の方が名前よりも使われる傾向にあるので注意が必要です。
また、日常生活に関わり深い食品では、「名称」という言葉に限定した意味があります。
例えば、商品名として「アップルパイ」という名前があった場合には、名称として「洋菓子」と表示されることになり、その商品の一般的なカテゴリー分けのような使われ方になります。
「商号」と「名称」の英語表記の違い
「商号」の英語表記は、“trade name”、“company name”、“corporation name”が考えられます。
“trade name”は、商業、貿易、業界、売上高などの意味がある“trade”と名前を合わせた言葉で、商品名、商標名、商号、屋号などの意味になります。
“company name”は、会社、商会などの意味がある“company”と名前を合わせた言葉で、会社名、企業名などの意味になります。
“corporation name”は、法人、民間企業、政府団体、民間団体という意味の“corporation”と名前を合わせた言葉で、法人名や会社名、団体名などの意味になります。
“company”と“corporation”には、微妙なニュアンスの差がありますが、一般的には“company”が使われます。
「名称」の英語表記は、“name”となりますが、名前との微妙な意味合いの違いはありません。
“name”は、名、名称、名前、姓名、名声、有名な人、名士などの意味があります。
作品の名称の場合には、“name”ではなく、“title”が用いられます。
“title”は、(作品の)名称、表題、題名、称号、肩書、資格などの意味があります。
「商号」と「名称」を使った例文
・『商号を登記する』
・『商号は、株式会社○○です』
・『誤解が無いように店名と商号を併記します』
・『同じ会社名でも住所が違えば商号登記できる可能性があります』
・『エアコンの正式名称は、エア・コンディショナーです』
・『商号は、会社の正式名称です』
「商号」の類語
「商号」の類語は、社名、会社名、屋号があります。
社名とは、神社・会社・結社などの名前です。
会社名とは、商号のことです。
屋号とは、店名、事務所などの名称です。
「名称」の類語
「名称」の類語は、「名前」、呼称、題名があります。
「名前」とは、人の氏名やものごとの名称のことです。
「名称」との違いは、人の氏名に使える点です。
呼称とは、名をつけて呼ぶことやものごとの呼び名という意味があります。
「題名」とは、書物や作品の標題のことで、「名称」と置き換えられます。
まとめ
「商号」と「名称」の違いについて説明しました。
「商号」は、個人商人や会社が営利目的で業務する際に、自己を表示する為に使用する「名称」のことであるのに対し、「名称」は、人物名には用いられず、ものごとや、組織名などについて使われる呼称という違いがあります。