この記事では、「誤植」と「誤字」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「誤植」と「誤字」の違い
「誤植」と「誤字」は、どちらも「間違っている文字」を指すときに使われる言葉です。
ですがその使われ方には微妙な違いがあります。
「誤植」と「誤字」の使い方の違い
「誤植」は「印刷物の字の誤り」について使われます。
印刷されたものに字の間違いがあったとき、「誤植を発見した」などのように使います。
対して「誤字」は、印刷物に限らず使えます。
広い範囲の字の誤りについて言い表すことのできる言葉です。
「誤字」は、「形の間違っている字」「使われ方の違う字」を示せます。
「誤植」と「誤字」の英語表記の違い
「誤植」の英語表記は“misprint”(ミスプリント)です。
「誤字」は“typo”(タイポ)と言います。
「誤植」の意味
「誤植」(ごしょく)とは、「ミスプリント」のことです。
印刷物に記載された文字や記号、数字の誤りを「誤植」といいます。
もともと印刷物は、「活版印刷」(かっぱんいんさつ)という方法を用いて作られていました。
活字を原稿に従って並べた「組版」(くみはん)を作り、そこにインクを付けて刷り上げていく方法です。
「組版」を作る際に活字を並べていく工程を、「植字」(しょくじ)と言いました。
活字を並べる工程がまるで活字を植えている様子だったので、この名前が付いたのだと考えられます。
「植字」の過程で並べる文字を間違えてしまうと、当然、印刷物にもミスが出ます。
印刷物の誤字は「植字」の際のミスなので、この誤りのことを、「誤植」といいます。
「誤植」の使い方
「誤植」の語源は「活版印刷の際、組版を作るときの植字選び誤り」でした。
しかし、活版印刷以外の印刷方法が普及し、組版が行われなくなった今も、印刷物の中に記載された誤表記のことは「誤植」と呼ばれています。
なお現代では、印刷物に限らずとも、文字の誤りのことを「誤植」と表現する場合があります。
例えば、インターネットで閲覧されるブログやニュース記事などの、ミスタイプによる文字の誤りも「誤植」と呼ばれることがあります。
「誤植」を使った例文
・『先輩が指摘してくれたので誤植を未然に防げました』
・『気合を入れてブログを書くと、いつも投稿した後に誤植に気付いてしまう』
・『生徒たちは教師の作ったプリントの誤植を見つけるのが得意です』
・『『砂糖』と表記すべきところを『佐藤』にしてしまい、大変な誤植が発生した』
・『初版本を買い集めて誤植を探すことが好きです』
・『児童文学の出版社はとくに誤植に気を付けるべきだと思います』
「誤植」の類語
「誤植」の類語は、「誤記」(ごき)です。
「文字の誤った表記」という意味です。
また、「嘘字」も類語であると考えられます。
「嘘字」は、「間違って使った文字」という意味もありますが、「実際にある文字に近い見た目をしているが、実際には存在しない文字」という意味もあります。
「誤植」の対義語
「誤植」の対義語として考えられるのは、「誤謬」(ごびゅう)という言葉です。
少し馴染みがない言葉かもしれません。
「誤植」が単純に「文字の誤表記」を示す言葉であるのに対し、「誤謬」は「内容の誤表記」を示す言葉です。
例えば、「シロツメクサの花は白い」という正しい文章があるとき、「シロツメクサの『鼻』は白い」となっていれば誤植ですが、「シロツメクサの花は『深紅である』」となっていれば、これは誤謬であると考えられます。
「誤字」の意味
「誤字」とは、「正しくない文字」のことです。
字の形が間違っている場合や、本来持つ意味と誤って字が使われている場合、その字を「誤字」といいます。
「誤字」は、手書きの文字や画面上にタイピングした文字、印刷された文字などの誤りに、広く用いることができます。
「正しくない文字」全般を指すことのできる言葉です。
「誤字」の使い方
「誤字」は、単語の綴りの間違いや字形の誤りに対しても使われます。
「間違っている文字」のことを誤字というので、字の中に誤りがあれば、それがどんなものでも「誤字」とすることができます。
「誤字」を使った例文
・『小さな年下の友達がくれた手紙には、かわいらしい誤字がたくさん含まれていた』
・『外国人の誤字を馬鹿にしてはいけない。伝えようとしてくれた内容を最大限読み取る努力をすることが日本語母語話者の使命だ』
・『こないだ行った抜き打ちの漢字テストは、どの子も誤字が多かったです』
・『在学中、彼の誤字は徐々に減っていった』
・『わざとこの表記にしたのか、それとも誤字であるのか、彼女には判断が付きませんでした』
・『漢字の形の誤字は、そのまま覚えてしまうと厄介なので、早めに直した方がよい』
「誤字」の類語
「誤字」の類語は、「書き損じ」(かきそんじ)です。
これは、「手書きの文字の誤り」という意味です。
また、「必要な文字を抜かしてしまう」という意味の「脱字」(だつじ)も、誤字の類語であると考えられます。
「誤字」の対義語
「誤字」の対義語は「正字」(せいじ)です。
「正字」とは、「誤りなく、正しく書かれた字」という意味です。
まとめ
「誤植」と「誤字」の違いについてまとめました。
「誤植」はもともと印刷物に使われる言葉でしたが、様々な印刷法が普及したり、電子書籍などが普及し、出版の形態が変わっていく中で、より広い範囲に使われる言葉になってきています。
現代では印刷物に限らずに使用されることもあるようです。
「誤字」は、形の間違っている字や、使い方を誤っている字のことです。