「心理的」と「精神的」の違いとは?使い方や例文も徹底的に解釈

「心理的」と「精神的」の違い生活・教育

この記事では、「心理的」「精神的」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。

「心理的」と「精神的」の違い

初めに、「的(てき)」について説明します。

「的」とは、前節語の名詞と結びついて形容動詞を作るものです。

意味は、前接語の名詞について、そのような性質をもつものといったことや、そのようなようすをあらわすこと、そのこと、その方面にかかわることなどがあります。

このように、「的」という言葉自体が、前節語の名詞と結びつくごとで、本来の意味合いだけに限定せず、意味合いが近いものや似たようなものを表していることに注意が必要です。

文脈によっては二つの言葉の意味が限りなく近くなってしまう可能性があります。

これを踏まえたうえで、「心理」「精神」について説明します。

「心理」とは、人の心の状態についてのことで、心のはたらきや全体的なようすを表します。

漢字を分解すると、心の理(ことわり)を表しており、心全体の仕組みの説明を試みているというとらえ方もできます。

理性的な部分も本能的な部分もすべて含む心の働きを全て含みます。

「精神」とは、人の心の働きのことで、魂や霊魂のような物質的でないようすを表します。

物事をおしまいまで完全にしようとする心の働きや物事の基本的な意義と理念などという意味もあります。

ここに付属されるイメージとしては、理念や理性、意志などがあり、主に理性的な部分が主体となっています。

「心理的」とは、人の心の状態について、理性的や本能的な事柄を含んだ全体的なようすを表すのに対し、「精神的」とは、人の心の状態について、理性的な部分が主体となっているようすを表すという違いがあります。


「心理的」と「精神的」の使い方の違い

「心理的」の使われ方としては、基本的に客観的に何かの心の状態を表すことが多い傾向があります。

例えば、自分を中心として第三者や動物などの行動原理について語るときに使われる場合や自分の行動を後で振り返って当時の心理状態などを振り返って使われることがあります。

また、本能的には目の前においしそうな食べ物があったらすぐにでも食べたいというのが普通ですが、理性的には他人のものかもしれないからとか、毒があるかもしれないとか、様々な理由を付けて食べないことも多く、その全ての心の働きに対して使われることになります。

逆に理性ではやめるべきだとわかっていても本能的にやってしまうような制御できない動作についても、心理的動作と表すことがあります。

「精神的」の使われ方としては、基本的に主観的に何かの心の状態を表すことが多い傾向にあります。

例えば、理性や信念、意志などが伴っていることが前提にあり、自分がどういった考え方でこのような行動をしたのかといったことを表す場合や他者の心の高潔さなどを称えて精神性が高いといった使われ方があります。

基本的には、自分の心で理解できていて制御できる心の働きに対して使われますが、「精神的」な異常といった捉え方をすると、理性や信念、意志などが異常となってしまい、その行動が理性的とはかけ離れていることを表していることに注意が必要です。

心理的な異常という言葉には、心の動作全体を表すという前提から考えると、異常に見える行動自体が許容されるため違和感があります。

異常心理学という学問は、行動の異常について研究する学問ですが、異常の定義自体が一定でないという前提があることに注意が必要です。

また、「心理的」「精神的」を曖昧にする原因の一つとして、外国の著書を翻訳する際に、和訳者が「心理的」「精神的」についてどちらの言葉を採用したかによってイメージの違いや意味合いを許容する範囲に違いが表れてしまっているケースもあるため、前提とした条件以外でも間違っていない場合がありうることに注意が必要となります。

「心理的」は、主に客観的な心の状態について、制御の有無にかかわらず使われるのに対し、「精神的」は、主に主観的な心の状態について、理性的で制御できる状態に対して使われるという違いがあります。


「心理的」と「精神的」の英語表記の違い

「心理」「精神」の英語表記には、共通する部分も多く、前述したように和訳者の選択によって、日本語の意味合いと合致しないことがあるので注意が必要です。

「心理」の英語表記には、“psychological”“emotional”“mental”などが考えられます。

“psychological”“mental”は、精神と翻訳される場合もあります。

“psychological”は、心理学の、心理学に関する、心の、精神の、精神的な、心理に訴える、気の迷いといった意味があり、理性的に制御できる精神以外にも使われる場合があります。

“emotional”は、感情の、感情をもつ、感情を表現した、感情に流されやすい、感情的といった意味があり、本能的な心理状態に対して使われます。

“mental”は、心の、精神上の、知能の、気の狂った、精神病のといった意味があり、心理的、精神的双方の意味を伴って使われます。

「精神」の英語表記には、“spirit、”anima“、”nous”などが考えられます。

“spirit”は、生命力、心持、考え方、気性、気分、精神、法律などの意図や趣旨といった意味があり、日本の精神の意味に近い意味合いがあります。

“anima”は、生命、魂といった意味があり、魂といった意味合いの精神に使われます。

“nous”は、理性、知性、良識、常識といった意味があり、理性を伴った精神と訳することもできます。

「心理的」と「精神的」を使った例文

・『感情表現を伴った場合に心理的と使われることが多くなります』
・『人間関係においては、心理的な距離感が大切です』
・『動物と触れ合うことは心理的に良い影響があると考えられています』
・『精神的に自立する必要があります』
・『彼は精神的に病んでいます』
・『失敗を反省することで精神的に強くなります』

「心理的」の類語

類語には、心的、内的、内面的があります。

心的とは、心に関するようすという意味があります。

内的とは、物事の内部に関するようすという意味と、精神に関するようすという意味があります。

内面的とは、物事の内部や無いように関するようすという意味と、精神や心理に関するようすという意味があります。

「心理的」の対義語

対義語には、身体的があります。

身体的とは、人間のからだにかんすることという意味があります。

「精神的」の類語

類語には、霊、頭脳、知性、知力があります。

霊とは、不思議な力や働きを持つ存在という意味や、肉体に宿る活動を司る精神的なものという意味があります。

他には、死者の魂や、不思議な力を表します。

頭脳とは、脳やあたま、物事を判断する力という意味や、集団の中心に成る人、優れた知能を持った人という意味があります。

知性とは、物事を知って考えて判断する能力のことです。

知力とは、知恵の働きや知的な能力を表します。

「精神的」の対義語

対義語には、物質的、肉体的があります。

物質的とは、物質に関するようすという意味があります。

肉体的とは、肉体に関するようすを表します。

まとめ

「心理的」「精神的」について説明しました。

「心理的」とは、人の心の状態について、理性的や本能的な事柄を含んだ全体的なようすを表すのに対し、「精神的」とは、人の心の状態について、理性的な部分が主体となっているようすを表すという違いがあります。

「心理的」は、主に客観的な心の状態について、制御の有無にかかわらず使われるのに対し、「精神的」は、主に主観的な心の状態について、理性的で制御できる状態に対して使われるという違いがあります。

英語では、和訳者が「心理」「精神」を選択してあてるため、日本語の意味合いと合致しないことがあることに注意が必要です。