この記事では、「怯える」と「怯む」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「怯える」と「怯む」の違い
「怯える」には2つの意味があります。
1つめは、悪い結果になるのではないか、危害を加えられるのではないかと思い、不安になってびくびくすることです。
2つめは、悪い夢をみて苦しんだり、うなったりして、目を覚ますことです。
「怯む」にも2つの意味があります。
1つめは、恐ろしいという気持ちになって、ためらうことです。
2つめは、手足の力が衰えること、感覚が失われることです。
どちらの言葉にも「怯」という漢字が使用されていますが、読み方が違います。
「怯える」は「おびえる」と読み、「怯む」は「ひるむ」と読みます。
同じ漢字を使用していても、読み方が変わると意味が変わってきます。
「怯える」は、怖いというニュアンスを含む言葉です。
体を小さくして、細かく震えているとき、たいていは怖いという感情を持っています。
このときの様子を「怯える」は指しています。
「怯える」は、悪夢を見てうなされて目を覚ますという意味もあり、この意味でも怖いというニュアンスを含んでいます。
「怯む」は、ためらう、ぐずぐずするというニュアンスを含む言葉です。
自分よりも強そうな相手ににらまれると、行動をためらってしまうことが珍しくありません。
このような様子を「怯む」は指しています。
「怯える」と「怯む」の使い方の違い
前者の言葉は、怖がったり、不安になったりして、びくびくするさまを指して使用します。
後者の言葉は、恐ろしいという気持がわいて、ためらうこと、ぐずぐずするさまを指して使用します。
送り仮名が違うと漢字の読み方が変わり、意味が変わってしまいます。
そのため、どの意味で使用するのか、どのような送り仮名にすればよいのか考えて、使う必要があります。
「怯える」と「怯む」の英語表記の違い
「怯える」は英語で“be frightened”と表現をします。
「怯む」は英語で“flinch”や“shrink”と表現をします。
「怯える」の意味
「怯える」には2つの意味があります。
1つめは、恐ろしいという気持ちによってびくびくすることです。
小さな犬がこのような様子を見せることがあります。
小さな犬は、当然ですが大きな犬よりも力が弱いです。
大きな犬に噛みつかれたら抵抗することができず、逃げることもできないでしょう。
大きな犬に挑んでも、勝ち目は少ないのです。
まれに大きな犬に挑発的な態度を取る犬がいますが、たいていは小さいほうはおとなしくしています。
自分が攻撃されたら命の危険があるため、小さな方からすると、大きなものは恐ろしい存在です。
吠えるという行動は、犬にとっては攻撃されるかもしれない合図のようなものです。
自分が攻撃されると思うと、恐ろしく感じることでしょう。
そして、小さな犬は体を小さくしてびくびくすることがあります。
このような様子を「怯える」は指しています。
もう一つの意味は、悪い夢を見てうなされたり、怖い思いをしたりして、目を覚ますことです。
夢の中の出来事は、現実のことのように感じられる場合があります。
夢と現実の区別がつきません。
ゾンビに追いかけられている夢を見ると、現実世界でゾンビに追いかけられているように感じ、怖いです。
お化け屋敷でゾンビに追いかけられると叫び声をあげるように、夢であっても叫び声をあげてしまうことがあります。
そして、あまりの怖さや自分の声によって目が覚めます。
このような様子が「怯える」の意味です。
「怯える」の使い方
怖い、恐ろしいという感情があり、それによってびくびくすることを指して使用します。
「怯える」を使った例文
・『突然、物音がして怯える』
・『雷の音に怯える』
・『犬を叱ったら怯えて隅に逃げてしまった』
・『また襲われるのではないかと思って怯える』
・『昨日も今日も夢に怯えた』
「怯える」の類語
「恐れる」「怖がる」が類語です。
悪いことが起こるのではないかと心配するという意味があります。
「怯える」の対義語
対義語はありません。
強いて言えば、びくびくせずに済む状態を指す「安心」が対義語に近い言葉になります。
「怯む」の意味
「怯む」には2つの意味があります。
1つめは、恐ろしく感じて、ためらうこと、ぐずぐずすることです。
強い力でいきなり殴られると、「何があったの?」「うっ、痛い」など思い、その後に殴った相手に対して恐怖感がわいてきます。
殴ったら殴り返すという人もいるでしょうが、恐怖を感じるときには、殴り返すことができません。
もし殴り返したら、また自分が殴られてしまう可能性があります。
また痛い思いをするのは嫌です。
そのため、行動するか考えてしまいます。
この、行動するか考えることを「ためらう」といいます。
「ためらう」理由が恐ろしさの場合を「怯む」といいます。
もう一つの意味は、手足の力が衰えること、しびれることです。
しびれるとは、体の一部分の感覚がマヒすることです。
長時間の正座をしていると、足がじんじんとして感覚がなくなります。
しびれるとは、この感覚がなくなった状態を指しています。
このようなさまを「怯む」ともいいます。
「怯む」の使い方
2つの意味がありますが、1つめの意味で使うことが一般的です。
恐ろしさのために行動するか考える、という意味で使用をします。
面倒だから、時間がないからなどの理由で行動するか考える、という意味ではありません。
「怯む」を使った例文
・『見たこともない様子に思わず怯む』
・『オオカミに怯むことなく草を食べるヒツジ』
・『巨人に怯むことなく立ち向かう』
・『ヘビににらまれて怯む』
・『怯むことなく直進する』
「怯む」の類語
「しりごみ」「たじろぐ」が類語です。
相手の勢いに押されてためらうという意味があります。
「怯む」の対義語
「勇敢」が対義語です。
恐れないという意味があります。
まとめ
同じ漢字を使用していますが、送り仮名が違うと読み方が変わり、意味が違ってきます。
一方はびくびくすること、もう一方はためらうこと、という意味を持つ言葉です。