この記事では、「偽装」と「隠蔽」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「偽装」と「隠蔽」の違い
「偽装」とは、ある物事を人に知られないようにするために、他の物事や状況であるかのように見せることです。
「隠蔽」とは、人に知られないようにわざと隠すことです。
どちらの言葉にも、人に知られないように隠すという意味が含まれていますが、同じ意味なのではありません。
「偽装」の意味は、隠すために装うことです。
たとえば、本当や殺害なのだけれど、殺害だと他の人に知られないようにするために、自殺のようにみせかけることなどをいいます。
うその物事を作りあげるのです。
「隠蔽」の意味は、わざと隠すことです。
何かで覆って見えないようにすることを意味しています。
たとえば、報告書の内容を隠したいために、事実を知られないようにすることなどをいいます。
「偽装」と「隠蔽」の使い方の違い
前者の言葉は、本当のことを知られないようにするために、他のものにみせかけることについて使用をします。
後者の言葉は、本当のことを知られないようにするために、わざと隠すことについて使用をします。
みせかけるという意味は含まれていません。
同じような事柄に使用されることがあります。
「~工作」のような使い方です。
前者の言葉の場合は、本当はそうでないけれど、そうであるように見せることを意味しています。
後者の言葉の場合は、知られないように手をまわしておくことを意味しています。
「偽装」と「隠蔽」の英語表記の違い
「偽装」は英語で“falsification”や“cheating”などと表現をします。
「隠蔽」は英語で“concealment”と表現をします。
「偽装」の意味
「偽装」とは、ある物事を人に知られないようにするために、他の物事や状況であるかのようにみせることです。
偽装結婚のことで考えてみます。
偽装結婚とは、本当は結婚していないけれど、結婚しているようにみせかける行為のことです。
犯罪目的で行われたり、同性愛者であることを隠すために行われたりします。
犯罪目的のものは、人身売買や詐欺をするために行われます。
パートナーとなる人に本当の結婚のようにみせかけておいて、あとでパートナーを売ったり、借金を繰り返したりするのです。
同性愛が認められていない時代がありました。
その時代は、同性愛であることが人に知られてしまうと、牢屋に入れられたり、社会的地位を失ったりしてしまいます。
そうならないために、同性愛者は人に知られないように工夫する必要がありました。
そこで、偽の結婚をします。
人前に出るときは夫婦で行動をしており、他の人たちから見たら本当の夫婦のように見えるけれど、実際には家庭で一緒に過ごす時間は少ないです。
つまり、フリをしているのです。
何かを隠すために偽物を作りあげることを「偽装」は意味しています。
もう少し身近なところでは、食品でこのようなことがありました。
ニュースで報道されたので、知っている人もいることでしょう。
食品表示には決まりがあり、産地、原材料名、賞味期限などを正しく記載しなければなりません。
しかし、何らかの事情で正しい記載をしたくないことがあります。
たとえば、中国産は印象が悪いので隠したいため、国産と表示するなどです。
このような、何かを隠すために偽の情報を作りあげることを意味しています。
「偽装」の使い方
何かを隠すためにうその事柄や状況を作りあげることについて使用をします。
都合が悪くて隠すために行うことなので、いい意味では使われない言葉です。
「偽装」を使った例文
・『住所を偽装して娘を高校に入れる』
・『製品の偽装が発覚した』
・『偽装されていないか調べる』
・『偽装であることを周囲はまだ知らない』
「偽装」の類語
「よそおう」が類語です。
本当はそうでないけれど、そうであるように見せることです。
「偽装」の対義語
「真実」が対義語です。
「隠蔽」の意味
「隠蔽」とは、ある事柄を人に知られないようにするために、わざと隠すことです。
美術館が借りていた作品を紛失してしまったことで説明をします。
美術館の企画展示は、個人収集家や他の美術館などから作品を借りて行われています。
借りているものなので、企画展示が終わったら返却しなければなりません。
ある美術館は、個人収集家から作品を借りていました。
しかし、返すときになってその作品がなくなっていることに気が付きました。
いくつもの作品をさまざまなところから借りていたため、どこかに紛れ込んで、なくしてしまったと思われます。
なくしたという事実を個人収集家には知られたくありません。
そこで、なくしたことを報告しないでおこうと、美術館スタッフ全員で合意をしました。
これは、知られたくないことを知られないようにするために、わざと行っていることです。
こういった隠すためのわざとな行為を意味している言葉です。
「隠蔽」の使い方
わざと隠すことについて使用をします。
何かですっぽり覆って、他に知られないようにすることをいいます。
いい意味で使われる言葉ではありません。
子どもが悪いことをしたときに、親にうそをつくことがあります。
これも知られたくないことを隠すために行っていることですが、こういったことには使用しません。
やや硬い表現なので、日常の会話では使うことは少ないのです。
主に公的な場面で使われます。
「隠蔽」を使った例文
・『パワハラがあったことが隠蔽されていた』
・『死亡を隠蔽する』
・『現場の人たちは隠蔽しているという感覚がないようだ』
・『隠蔽したのではないと言い張る』
「隠蔽」の類語
「隠匿」「秘匿」が類語です。
「隠匿」は法律でよくないとされていることを隠すことです。
「秘匿」は人に見せたり教えたりしないことです。
「隠蔽」の対義語
「明けっ広げ」が対義語です。
隠さずにすっかり打ち明けることという意味があります。
まとめ
どちらの言葉も隠すという意味を含んでいますが、同じ意味の言葉なのではありません。
一方は、見せかけをすること、もう一方は知られないようにすることです。