この記事では、「転身」と「転進」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「転身」と「転進」の違い
「転身」は「からだの体勢(向き)を変えること・向きを変えてよけること」に意味の中心がありますが、「転進」は「進行する方向を変えること」に意味の中心が置かれている違いがあります。
「転進」には、「第二次世界大戦中の旧日本軍において使用された、退却の代替となる軍事用語」といった歴史的由来のある意味がありますが、「転身」にはそういった歴史的な意味合いは備わっていません。
また「転身」には「職業や考え方を変えること」の意味合いがありますが、「転進」という言葉にはそういった転職や主義主張の変化などの意味がないといった違いも挙げられます。
「転身」と「転進」の使い方の違い
「転進」には「アジア太平洋戦争において、旧日本軍が弱腰な退却の言葉を嫌って代替で使った軍事用語としての用法」がありますが、「転身」にはその使い方はありません。
「転身」には「体勢を変えることで何かの衝突・障害物をよける」の使い方がありますが、「転進」の表現には「障害となるものをよける・かわす」の意味のニュアンスでは使えないといった違いもあります。
また「転身」は「今やっている職業・仕事を変える転職の意味」で使うことが多いですが、「転進」のほうは「転職・変節」などの意味で使う用法がないという点も異なっています。
「転身」と「転進」の英語表記の違い
「転身」という言葉を、英語を用いて表記すると以下になります。
“change one’s position”“change one’s job”……職業上のポジション(地位・役割)を変える。
転職する。
転身する。
“turn”……方向を変える。
職業・仕事上の立場を変える。
転身する。
「転進」という言葉を、英語を使用して表現すると以下になります。
“retreat”……戦闘に負けて退却すること。
(軍隊が)転進する。
“withdrawal”……不利な状況(戦況)で撤退すること。
退くこと。
転進する。
“turn”……方向転換する。
行く向きを変える。
転進する。
「転身」の意味
「転身(てんしん)」とは、「体の体勢を変えることで障害となるものをかわす」を意味している言葉です。
「転身」の表現が持っているもっとも一般的な意味は、「今までやってきた職業・役割を変えること」です。
また「転身」には、「今まで持っていた主義主張を変える」や「現在のポジション(地位・身分)を変える」といった意味合いもあります。
「転身」の使い方
「転身」は、「体の向きを変える・体勢を変えて邪魔なものをよける」の意味で使うことができます。
「転進」の表現には、「これまでの仕事・職業を変えて転職する」や「これまでの考え方・思想などを変える」の意味合いで使うといった使い方もあります。
例えば、「思い切ってデザイナーに転身することに決めました」などの文章で使用することが可能です。
「転身」を使った例文
・『絶妙なタイミングで転身して、敵の攻撃をかわすことができました。』
・『プロ野球選手から他のプロスポーツ選手に転身することは簡単ではありません。』
・『バックヤードで働く事務職から、企画営業のトッププレイヤーへと見事な転身を果たしました。』
・『自分の今までの認識や世界観が間違っていたと自覚できたからこそ、私は思想の転身をしたのです。』
・『公務員から企業の経営者に転身したのですが、180度価値観の違う世界なので戸惑うことも多かったです。』
「転身」の類語
「転身」の類語には、以下の言葉があります。
・『転職(てんしょく)』……職業・仕事を別のものに変えること。
・『転向(てんこう)』……今までの立場や思想などを捨てて大きく変わること。
・『変節(へんせつ)』……今までの主義主張・イデオロギー(思想)を変えること。
「転身」の対義語
「転身」の対義語には、以下の言葉があります。
・『堅持(けんじ)』……自分の主張や立場などを変えずに堅く維持すること。
・『キャリア継続』……転職・離職などをせずに、今している仕事のキャリアを続けること。
「転進」の意味
「転進(てんしん)」とは、「進む方向を変えること」を意味しています。
「転進」という言葉の元々の意味は「進行方向を変えて進むこと」ですが、第二次世界大戦・アジア太平洋戦争の時代には「撤退・退却(敗走)の代替となる軍事用語」として使われていた経緯があります。
「転進」は「拠点・戦場から進路を変えて別の地点に向かうこと」を意味する旧日本軍の軍事用語ですが、実質的には「戦場で戦闘に敗れて退却すること」を示唆しています。
「転進」の使い方
「転進」は、「方向を変えて進むこと」の意味で使うことができる言葉です。
「転進」という表現は、「敵との戦闘状況が不利になったので、現在の地点から他の地点に向きを変えて移動すること」の旧日本軍が慣習的に用いた軍事用語としての使い方もあります。
「転進」は実際には、「戦況が悪くなって撤退すること・退却すること」の意味で使われていました。
「転進」を使った例文
・『目的地を海から山に変更したので、違う道へと転進することにしました。』
・『地図を見ながら適切に転進していくと、秘境とされる温泉地の景観が開けてきました。』
・『部隊の全滅を回避するためには、転進せざるを得ない厳しい状況に追い込まれていました。』
・『第二次世界大戦の大本営発表では、国民の士気を下げないために撤退ではなく転進の言葉が盛んに使われました。』
・『これは敗走なのではなく転進なのだと兵士は自らに言い聞かせることで、敵に立ち向かう気力を維持していました。』
「転進」の類語
「転進」の類語には、以下の言葉があります。
・『方向転換(ほうこうてんかん)』……進行する方向を変えること。物事のやり方を大幅に変えること。
・『退却(たいきゃく)』……戦闘に敗れたり不利になったりして、後方に退くこと。
・『撤退(てったい)』……戦闘の不利や戦術の方針によって、軍隊を後方に移すこと。
陣地を捨てて後ろに下がること。
「転進」の対義語
「転進」の対義語には、以下の言葉があります。
・『前進(ぜんしん)』……方向を変えずに前方に進むこと。下がらずに前に進むこと。
・『進軍(しんぐん)』……(有利な戦況であるとの認識の上で)軍隊を前に進めること。
まとめ
「転身」と「転進」の違いを分かりやすく説明しましたが、いかがだったでしょうか? 「転身」と「転進」の意味・使い方・英語表記の違いや類語・対義語を詳しく調べたい時は、この記事の解説をチェックしてみてください。