「搾取」と「収奪」の違いとは?使い方や例文も徹底的に解釈

「搾取」と「収奪」の違い専門用語・業界用語

この記事では、「搾取」「収奪」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。

「搾取」と「収奪」の違い

「搾取(さくしゅ)」とは、元々、動物の乳や、草木などの汁をしぼりとることという意味があり、その意味が転じて、他人がもっているべき権利や利得を不正に侵害したり、余剰価値を取得したりすることといった意味も持つ言葉に成っています。

法律的には、優先的地位の濫用として示されており、取引相手よりも地位が高い人がその地位を利用して、相手方に対して不当に不利益を与えることを表すために用いられています。

「搾取」は、圧力を加えてしぼるという意味の「搾」と、自分のものにするという意味の「取」からなる言葉です。

「収奪(しゅうだつ)」とは、うばいとること、強制的に取り上げることです。

取り入れる、おさめるといった意味の「収」と、他人のものをうばうといった意味の「奪」からなる言葉で、他人のものを奪い取って自分のものとして収めるということで「収奪」になります。


「搾取」と「収奪」の使い方の違い

「搾取」は、マルクス経済学において、資本家が労働者を多めに働かせて剰余な生産物を生み出してその利益を得ることとされており、元の英単語“exploitation”の翻訳が当てられたことでこの意味合いでも使われています。

「搾取」は、一般的に、雇用主や権力者が不当に利益をしぼりとるといった意味合いで使われることも多く、低賃金で会社に搾取されているといった使われ方があります。

「搾取」は、搾取される側が活動して得られた価値をすべて奪い取るのではなく、対価として支払われた価値以外の余剰価値を繰り返し継続的に取られることが多くなります。

優越的地位の濫用では、継続的でない場合もあり、相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更することや、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えることなどがあります。

「収奪」は、戦争において、占領した土地に付属する作物や工場、人員などを強制的にうばいとるといった使われ方がされています。

「収奪」は、強制的に奪い取って収めることに意味が集中しており、搾取のような余剰価値ではなくすべてを奪い取ってしまうことが多くなります。

例えば、賃金の未払いでは、「搾取」というよりも、「収奪」されているという方が適切です。

また、例えば、植民地では、植民地で生産された食物は「搾取」されていると表現することもできますし、植民地で生産された食物は、継続的に「収奪」されていると表現することもできます。

この場合には、注目しているポイントが、継続的に食物(余剰価値)を取得する「搾取」なのか、強制的に食物(何か)が奪われている「収奪」なのかという違いが生まれています。

また、一般的には、やりがい搾取や、性的搾取、中間搾取、利益搾取のように「搾取」の方が「収奪」よりも使われる機会が多い言葉になります。

「搾取」は、主に継続して相手方に対して不利益を与え続ける状態に使われるのに対し、「収奪」は、強制的に奪い取ることに使われるという違いがあります。


「搾取」と「収奪」の英語表記の違い

「搾取」の英語表記には、“exploitation”“vampirism”“predatory”などが考えられます。

“exploitation”は、(侮辱的な意味合いで人や集団などの)搾取、(営利目的で土地や資源などの)開発、開拓、利己的利用、(商品や人材などの)宣伝、売り込みなどの意味があります。

“vampirism”は、吸血鬼の存在を信じること、吸血鬼の行為などの意味があり、比喩的な表現として(他人を)搾取するといった意味合いがあります。

“predatory”は、捕食性の、肉食のという意味と、略奪する、強奪する、搾取するという意味があり、搾取で生計を立てるといった意味もあります。

「収奪」の英語表記には、“exploitation”“landgrab”が考えられます。

“exploitation”については、日本語に翻訳するときに、前後の文脈や、翻訳者の選択によって、「搾取」とも「収奪」とも表現が出来ますし、受け取った側としての細かい意味合いとしては、マルクス経済学の「搾取」としてのイメージがつく可能性があります。

“landgrab”は、土地を強制的に奪い取ることという意味があるので、土地の収奪という意味合いになります。

「搾取」と「収奪」を使った例文

・『オタクは、企業にアニメやアイドルのグッズなどで搾取され続けています』
・『会社に搾取されるのが嫌に成って、独立起業することにした』
・『大家さんは企業や金融機関に騙されて搾取されている可能性がある』
・『牛から牛乳を搾取する』
・『強盗や窃盗は、一方的な収奪行為と呼べる』
・『日本はもっと他国からの収奪行為に警戒すべきだ』
・『戦争では建物や食物の収奪が行われてきた』
・『継続的に余剰的な価値を収奪することを搾取といいます』

供与の類語

類語には、取立てる、しぼりとる、強請、脅し取る、せびるがあります。

取立てるとは、催促して徴収することや、多くの中から特別に取り上げること、抜擢することです。

しぼりとるとは、金銭などをすっかりと取り上げることや、物体に含まれている液体を絞り出すことです。

強請(ねだる)とは、言いがかりや難癖をつけて金品などを要求することや、甘えてものを要求することです。

脅し取るとは、人を脅迫して金品をとることです。

せびるとは、金品などを無理にもらいうけるように頼むことです。

「搾取」と「収奪」の対義語

対義語には、提供、供与、供給などが考えられます。

提供とは、金品や技能などを相手に差し出して活用してもらうことや、広告主がテレビ番組のスポンサーになることです。

供与とは、相手が望んでいる金品や利益を与えることです。

供給とは、必要なものやサービスを相手に与えることです。

まとめ

「搾取」「収奪」について説明しました。

「搾取」は、動物の乳や、草木などの汁をしぼりとることという意味が転じて、他人がもっているべき権利や利得を不当にえることという意味になっています。

「収奪」は、強制的に取り上げることという意味になります。

「搾取」は、主に継続して相手方に対して不利益を与え続ける状態に使われるのに対し、「収奪」は、強制的に奪い取ることに使われるという違いがあります。