この記事では、「実体」と「実在」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「実体」と「実在」の違い
「実体」と「実在」はよく似ている言葉です。
例えば、「実体がない」「実在しない」と否定形で使った場合にそれが顕著です。
両方とも「姿が存在しない」という意味になります。
これは、「実体」が「物事の本質」という意味で、「実在」が「実際にそこにあること」という意味だからです。
「実体」と「実在」を否定した場合に、「本質がない」「実際に存在しない」という意味になるので、非常に似た使われ方をしてしまうのです。
しかし、この二つの語にはもちろん意味の違いがあります。
「実体」は「本来の姿」という意味です。
隠れていたり、見えなかったりした本質があり、それについて言及するときに用いられます。
一方実在には、「本質」という意味はありません。
「実在」は「現実に存在する」という意味の言葉です。
「実体」と「実在」の使い方の違い
「隠されていた本質」や「今まで知らなかった本来の姿」について言い表すとき、「実体」という言葉は頻繁に用いられます。
「現場の実体を知った」「彼女の実体を知った」などのように用います。
一方「実在」は「存在が実際にある」ということですから、「本質」や「本来の姿」があるかどうかは関係がありません。
「その小説は実在する人物を元に書かれている」などのように用います。
「実体」と「実在」の英語表記の違い
「実体」を表す英単語は“entity”です。
“substance”を用いる場合もあります。
「実在」の英語表記は“reality”です。
「実体」の意味
「実体」は二通りの読み方があります。
「じったい」と読む場合、それは「そのものの本当の姿」という意味です。
真に存在しているもの、という意味で、物事の本質や、正体について言い表すときに使います。
「実在」とよく混同して用いられるのは、こちらの「じったい」と読む場合の「実体」です。
「実体」を「じってい」と読む場合は、人柄を表す言葉です。
「真面目である」「正直である」という意味のほか、「律儀である」「誠実である」ということを表すときに使われます。
「実直さ」を言い表したいときに、「実体」という言葉が使われます。
「実体」の使い方
「彼女の実体を知った」と用いた場合、「彼女の本当の姿を知った」という意味になります。
これは、実体が「そのものの本当の姿」という意味のためです。
このように使ったとき、多くの場合は「隠されていた本質を知ってしまった」というニュアンスが含まれます。
「普段の姿」と「実体」が異なっていたときにあえて言及されることが多いためです。
「実体がない」と使った場合は、「本当の姿がない」という意味になります。
「人の気持ちには実体がない」「電子書籍には実体がない」などのように用いられます。
これは、「手に取ることはできないが現実として実際に存在するもの」に用いられます。
「あるのにない」という、一見複雑な構造の語になりますが、「存在はするが触れない」と覚えておくと、理解しやすいかもしれません。
「実体」を使った例文
・『彼の冷酷な実体を知り、彼女はとてもショックを受けた。彼女は彼のことを、とても優しい人だと思っていた』
・『先生は実体的な経験を交えて私たちに講義してくれた』
・『その漫画の登場人物は、実体はありませんが、広く子どもたちに親しまれています』
・『実体のないものを思い浮かべて物語を構築するとき、作家はとてもわくわくしている』
・『彼女は自分の実体を他人にさらけ出すことを非常に恐れていた』
・『デジタルカメラで撮った画像データには実体がないので、お気に入りの写真は印刷しておくと安心です』
「実体」の類語
「実体」の類語は「本質」(ほんしつ)です。
「本質」とは、「欠くことのできない、根本的な要素」のことです。
また、「様相」(ようそう)も「実体」の類語です。
「様相」とは「有りさま」や「姿」という意味です。
「実体」を「人が持つ、隠していた性質」という意味でとらえた場合は、「素顔」(すがお)という言葉も類語として適切です。
「素顔」とは「化粧していない顔」という意味ですが、それが転じて「ありのままの状態」という意味でも使われている語です。
「実体」の対義語
「実体」の対義語は「概念」(がいねん)です。
「概念」とは、「とある複数のものに関して共通してみられた性質を言葉にして表したもの」です。
「実体はないのに、そのようなグループがあるとラベル付けができる」ことから、「実体」の対義語として位置づけられています。
また、「虚像」(きょぞう)も「実体」の対義語です。
「虚像」とは、「嘘偽りの姿」という意味です。
「実在」の意味
続いて「実在」の意味について解説していきます。
「実在」とは、「実際に存在すること」です。
現実にそこにあるものに対して、「ある」と言いたいときに、「実在する」と使います。
「実在」の使い方
「その生き物は実在する」と用いた場合、「その生き物は実際にいる」という意味になります。
「実在しない人物」と使った場合は、「実際にはいない人物」ということです。
「実在した」と使った場合、「かつては存在したが、今はいない」という意味にもなりえます。
しかし、「存在するはずがないと思っていたのに、存在しているのか」という驚きのニュアンスを含む、存在の確認を強調する意味で用いられる場合があります。
「実在」を使った例文
・『実在しないアニメのキャラクターに夢中になる人はたくさんいます』
・『ツチノコは実在しません。架空の生き物です』
・『歴史上のその人物の実在を疑っている学者もいる。資料の数が少なすぎるのだ』
・『博物館のガイドは、この地にはかつて恐竜が実在していました、と解説を始めた』
・『この小説はルポ風に書かれていてリアリティもあるが、フィクションなので当然、実在の人物や組織とは何の関係もない』
・『海賊の宝なんて実在しない、と散々周りに馬鹿にされたが、長年かけて彼はとうとう目的のものに辿り着いた』
「実在」の類語
「実在」の類語は「実存」(じつぞん)です。
「実存」とは「今ここにある」という意味です。
「実際にこの世に存在すること」という意味の語です。
「実在」の対義語
「実在」の対義語は「架空」(かくう)です。
「架空」とは、「実際に存在しないもの」という意味です。
「架空の物語」などのように用いられます。
まとめ
「実体」と「実在」の違いについて解説しました。
「実体」は「そのものの本質」や「本来の姿」という意味です。
「実在」は「実際に存在すること」ということです。