この記事では、「搬出」と「排出」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「搬出」と「排出」の違い
「搬出」とは、物を運び出すことです。
「排出」には、2つの意味があります。
1つめは、内部にある不要なものを外に出すことです。
もう一つは、生物の代謝の過程で生じる体内にある不要なものを体の外に出すことです。
どちらの言葉にも外に出す意味が含まれていますが、同じことを指しているのではありません。
「排出」は、不要なものを出すことです。
人間は生きていると代謝の過程で、体内にはさまざまなものが生じます。
それらの中には体にとって不要なものがあり、体内に残っていると有害になることがあります。
単に外に出すという意味ではなく、外の出すものが不要なものの場合「排出」といいます。
「搬出」は物を運び出すことです。
引越しのとき、家の中にあるものを外に運び出します。
家の中にあるものが不要なものだから出すのではなく、荷物を別の場所に移動させるために出しています。
運び出すものは、不要なものだとは限らないのです。
「搬出」は不要だから出すのではなく、単に物を運び出すという意味です。
また、人間の体の場合は自分の意志で行って外に出していますが、「搬出」は運んで出しています。
放っておいて出されるのではなく、運ぶという作業が必要です。
「搬出」と「排出」の使い方の違い
内部にある要らないものを外に出すことについて「排出」を使用します。
単に内から外に出すことではなく、外に出されるものは不要なものです。
物を運び出すことについて「搬出」を使用します。
なぜ運び出すのかは、そのときどきによって理由が異なります。
不要だから出すとは限りません。
「搬出」と「排出」の英語表記の違い
「搬出」は英語で“carry out”と表現をします。
「排出」は英語で“discharge”や“emission”や“excretion”と表現をします。
「搬出」の意味
「搬出」とは、物を外に運んで出すことです。
美術館では企画展示が行われており、定期的に展示物の交換が行われています。
展示されているものは、他の美術館や美術品を集めている人から借りてきます。
借りたものは返す必要があり、企画展示が終わったら借りていた美術品を返すために、美術館の外に出します。
この作業を「搬出」といいます。
引越しのときには、これまで住んでいた家から新しい家に荷物を移すために、これまで住んでいた家の中にあったものを外に出します。
この作業も「搬出」です。
「搬出」は物を外に運び出すという意味であり、なぜ運び出すのかという意味は含まれていません。
借りていたものを返すために運び出すこともあれば、別の場所に置きたいために運び出すこともあります。
「搬出」の使い方
物を運んで出すことに使用をします。
運ぶという作業が必要で、勝手に出されることについては使用をしません。
たとえば、人間は生きていると尿などの老廃物が体内で作られます。
尿は体の中から外に出されますが、こういったことは「搬出」とはいいません。
また、「搬出」には出すという意味も含まれており、キッチンの作業台にあったものを、電子レンジの上に運ぶといったことにも使用しない言葉です。
建物の中にあったものを建物の外に出すことを「搬出」といいますが、建物の中でないものでも運び出すことについて使用できます。
たとえば、ある県にあった土砂を別の県に運ぶことも「搬出」です。
A県の中から別の県、つまりA県の外に運び出していることになります。
「搬出」を使った例文
・『搬出作業に多くの人がかかわる』
・『大きな家具の搬出に苦労をする』
・『搬出をしてはいけません』
・『慎重に搬出をしてください』
「搬出」の類語
「運び出す」が類語です。
運んで出すという意味があります。
「搬出」の対義語
「留める」が対義語です。
移動させないでその場所においておくという意味があります。
「排出」の意味
「排出」には、2つの意味があります。
1つめは、内部にある要らないものを外に出すことです。
ガソリンを使って車を動かすと二酸化炭素が発生をします。
二酸化炭素は車を動かすために必要ないものです。
車の内部にためておくと、どんどんと二酸化炭素が増えてしまい、ためておく場所に困ってしまいます。
また、車内に二酸化炭素がたまれば、乗車している人に害を及ぼす危険があります。
車を動かすために発生した二酸化炭素は、車にとっても人にとっても要らないものです。
そのため、車の内部から外に向かって二酸化炭素が出されています。
このような行為が「排出」です。
もう一つの意味は、生物の体内で生じる不要なものを体外に出すことです。
アルコールは人間にとって危険な物質です。
危険な物質は肝臓などの働きにより、害の少ないものに変換されます。
アルコールの場合は、最終的に水と二酸化炭素になり、水は汗や尿として、二酸化炭素は呼気として体の外に出されていきます。
このような体の活動が「排出」です。
体の活動は意識して行っているのではなく、無意識のうちに行われています。
「排出」の使い方
要らないものを内から外に出すことについて使用をします。
工場で発生する二酸化炭素や有害物質は、製品などの製造に不要なものです。
それらは適切な処理がされて外にだされます。
そのことを「排出」といいます。
生物は生きていると尿や便を体の外に出しますが、それも「排出」です。
外に出されるものは不要なもので、必要なものを出すことではありません。
「排出」を使った例文
・『老廃物が排出されてすっきりした』
・『二酸化炭素排出量を抑えるために使い捨て製品の使用を控える』
・『塩分の排出を手助けしてくれる』
・『少しずつ排出されていく』
「排出」の類語
「放出」が類語です。
たまっていたものを一気に外に出すという意味があります。
「排出」の対義語
「留める」が対義語です。
まとめ
外に出すという意味を含む2つの言葉ですが、外に出されるものが違います。
出されるものが違うので、使い方も違う言葉です。