人事に関する話題で使われる言葉に「拝命」と「就任」があります。
このふたつの言葉にはどのような意味の違いがあるのでしょうか。
今回は、「拝命」と「就任」の違いについて解説します。
「拝命」とは?
「拝命」とは、「任命をつつしんで受けること」を意味する言葉です。
「拝命」の使い方
「拝命」の「拝」には「頭を下げて礼を尽くす」という意味があります。
強い敬意を込めるときに用いられる言葉です。
「拝命」の「命」は「任命」を意味します。
任命とは「役職や地位に就くよう命ずること」を意味する言葉ですが「拝命」は受け身の形になるので「役職や地位につくよう命じられること」となります。
敬意表現である「拝」が使われているのは役職や地位を任命する相手は自分よりも上の立場であることが理由です。
整理すると「拝命」が表すのは「上の立場にある人から任命された地位や役職をつつしんで受け入れること」という内容です。
一般的には昇進や異動など「人事に関する命令を受け入れること」という意味で使われています。
受身形で自分が主語に成る言葉なので自分が移動したり昇進したり仕事を任されたりするときのみに使います。
他人に対して「拝命」という表現を用いることはなく、その場合は「任命」です。
「就任」とは?
「就任」とは、「任務や職務に就くこと」を意味する言葉です。
「就任」の使い方
一般的には高い地位や役職に就くときに「就任」という表現が使われます。
社長や首相、監督や頭取など簡単につける地位ではなく多くの人の上に立つような仕事を引き受け任務につくのが「就任」です。
班長や仲間内のリーダーなどに就くことを「就任」と表現しても間違いではありませんが大げさな印象を与えます。
「就任」というのは地位や立場に就くことそのものを指す言葉なのでスタートラインに着いた状態を表します。
任務や職務を引き受け肩書は変わりますがまだ仕事をなにもしていないまっさらな初めの段階が「就任」です。
「拝命」と「就任」の違い
「拝命」と「就任」の違いは「正式決定しているか」です。
「拝命」というのは任命、つまり仕事や役割に就くよう命じられることを意味しています。
内示や内定など正式決定する前の段階でも「拝命」という言葉が使われるのに対し、「就任」というのは任務や職務に就くことが正式に決定し書類上も肩書が変わった段階を指します。
来月から支社長になるよう命じられ受け入れるのが「拝命」ですがこの段階ではまだ肩書は支社長ではないので「就任」していません。
一月経過して正式に支社長になることを「就任」と表現します。
「拝命」の例文
・『努力が認められ関東地方のエリアマネージャーを拝命した』
・『来月付けで支店長を拝命する』
「就任」の例文
・『社長に就任する前に引き継ぎを済ませなければならない』
・『大統領に就任して早々に大きなトラブルが発生した』
まとめ
「拝命」と「就任」はどちらも新しい地位や役職に就くことを意味する言葉ですが表す内容には違いがあります。
それぞれの言葉が保つ意味を正しく理解して使い分けましょう。