論理的におかしいことを指す言葉に「矛盾」と「パラドックス」があります。
このふたつは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「矛盾」と「パラドックス」の違いについて解説します。
「矛盾」とは?
「矛盾」とは、「ふたつの物事が相反していて成立しないこと」を意味する言葉です。
「矛盾」の使い方
「矛盾」という言葉はどんな盾でも貫く矛とどんな矛をも防ぐ盾を売っている武器屋に対し最強の矛と盾をぶつけたらどうなるのか指摘したところ何も言い返せなかった、という中国の故事に由来します。
もし武器屋の言うことが正しければ矛は盾を貫き盾は矛を防ぐという絶対に有り得ない状況が生まれてしまうところから「ふたつの物事が正しいとすると成り立たないことからつじつまが合わない様子のたとえ」として使われています。
もう少し専門的に言うと「設定されたふたつの命題がともに真であるとすると論理的に整合性のとれた結論が成立しない状態」が矛盾です。
「パラドックス」とは?
「パラドックス」とは、「論理を正しく進めていくとおかしな結果に至ってしまうこと」という意味で使われる小鳥羽です。
「パラドックス」の使い方
「パラドックス」は論理学で使われる用語です。
簡単に説明するならば「成立しているようで間違っている、間違っているようで成立しているおかしさを含んで成立していること」を指して「パラドックス」と表現します。
「パラドックス」の有名な例が「私は嘘つきだ」という文章です。
この人物が正直者であるならば話の内容が真実だということになりこの人は嘘つきになってしまいます。
この人物が嘘つきであるならば話の内容は嘘つまり「私は嘘つきではない」が成立しこの人は正直者になってしまいます。
このように文章としては成立しているものの論理的なおかしさをはらんでおり成り立たないようなものが「パラドックス」です。
成立しているようで間違っている例として「忍者修行」があります。
修行中の忍者は高く飛び上がるための修行として植物を使います。
成長の早い植物の種を植え毎日その上をジャンプし続けるのが修行ですが種や芽のうちは背が低く簡単に飛び越せますが徐々に大きく成長していく植物を毎日ジャンプし続けると最終的には大木も飛び越えられるほどの跳躍力が身につく、というのが修行の論理です。
一見納得しそうな論理ですがこの論理には人間の限界跳躍力という要素が抜けています。
どんなにがんばっても植物がある程度の高さになったところで跳び越えられなくなる段階がやってきます。
そのことを抜いて論理を成立させているためこの修行方法は論理的に見せかけながら実際には不可能な「パラドックス」です。
「矛盾」と「パラドックス」の違い
「矛盾」が相反しているふたつの物事が同時に成り立たないおかしさを表しているのに対し、「パラドックス」は論理的に成立するとおかしなことになるため成立しないことを表します。
不合理なのが「矛盾」、不合理に見えて成立もしくは合理的に見えて不成立なのが「パラドックス」という違いで区別されます。
「矛盾」の例文
・『彼の話は矛盾している』
・『弁護士が証拠の矛盾を指摘する』
「パラドックス」の例文
・『パラドックスにごまかされてはいけない』
・『彼の主張は理想的に思えるがよくよく聞けばパラドックスであることが分かる』
まとめ
「矛盾」と「パラドックス」はどちらも論理的なおかしさをあらわす言葉ですがおかしさの内容に違いがあります。
注意深く観察しないとおかしさに気づかないまま納得させられてしまうのでおかしなところに気づけるように論理的な思考力を鍛えておきましょう。