イラストなどを描くことを指す言葉として「描き下ろし」と「描き起こし」があります。
このふたつはどのような違いで区別されているのでしょうか。
今回は、「描き下ろし」と「描き起こし」の違いについて解説します。
「描き下ろし」とは?
「描き下ろし」とは、「絵やイラストなどの作品を新しく描くこと」を意味する言葉です。
「描き下ろし」の使い方
既存のものや以前にやったものではなく全く新しいものを発表したり使ったりすることを「下ろす」といいます。
「描き下ろし」とは「以前に発表した作品の使い回しではなく一から創作した全く新しい作品を描くこと」を指す言葉です。
落語家が新ネタを初めて客前で発表すること指す言葉が「ネタ下ろし」です。
これまで誰にも見せたことのないネタを初披露する様子を指す言葉ですが「描き下ろし」も同じように「これまで誰にも見せたことのない新たな作品を描き上げること」を表します。
一般的に「描き下ろし」という場合は描く作業だけではなく世間に対して発表するところまで含まれます。
「描き下ろし」という表現がよく用いられるのは漫画の単行本です。
漫画の単行本の多くは雑誌に連載された作品をまとめて出版されますが表紙やおまけページなどは雑誌連載とは別に新たに描かれます。
単行本出版にあたって既出である雑誌連載ぶんとは別に新たに描かれた部分が「描き下ろし」にあたります。
「描き起こし」とは?
「描き起こし」とは、「元になる資料から想起される様子を絵やイラストに描くこと」を意味する言葉です。
「描き起こし」の使い方
資料を下地に具体的な形にする作業を「起こす」といいます。
録音したテープを再生し聞いながら会話の内容を文字にしてまとめることを「文字起こし」というように「音声から文字、写真から絵など資料の内容を変えないまま別の形に作り直すこと」が「起こす」の意味合いです。
「描き起こし」とは「描いて起こすこと」を意味します。
具体的には「設計図面や写真など元になる資料を参考に自分なりのタッチで描き絵やイラストにすること」が「描き起こし」の意味合いです。
設計士の作成した図面は寸法や形状が正確に書かれていますが図面を見ただけでは完成図を想像しにくくイメージが湧きません。
図面のデータを参考にして完成した建物の形状をイラストに描く作業が「描き起こし」にあたります。
「描き下ろし」と「描き起こし」の違い
「描き下ろし」は内容を問わず初めて描くことを意味する言葉で「描き起こし」は元になる資料を参考に絵やイラストを描くことを意味します。
「描き起こし」たイラストのうち初めて描くものは「描き下ろし」でもあります。
描いた回数を基準にした言葉が「描き下ろし」、資料の有無を基準にした言葉が「描き起こし」という違いで区別されます。
「描き下ろし」の例文
・『単行本のために描き下ろし他イラストが表紙に使われている』
・『増補版には新たに描き下ろしページが追加された』
「描き起こし」の例文
・『図面から完成イメージ図を描き起こした』
・『小説を読んで挿絵用のイラストを描き起こして欲しいと頼まれた』
まとめ
「描き下ろし」と「描き起こし」は似ているようで全く意味の違う言葉です。
言い間違えないようそれぞれの正確な意味を理解しておきましょう。