「対岸の火事」と「他山の石」はどちらもことわざの一部ですが、意味が異なるため使い分ける必要があります。
この記事では、「対岸の火事」と「他山の石」の違いを分かりやすく説明していきます。
「対岸の火事」とは?
「対岸の火事」は「たいがんのかじ」と読む言葉で、「対岸」は「向こう岸」や「川向う」を示し、「向かい側の岸で起きた火事はこちら側に燃え移る心配がない」ことから、「自分には全く関係がなく少しの痛手もないこと」という意味で用いられています。
「他山の石」とは?
「他山の石」は「たざんのいし」と読み、古代中国の故事が由来となった言葉です。
「よその山から生じた粗悪な石でも宝石磨きに用いることが可能である」ことから、「自分の成長や教養に役立つ他人の誤った言動や出来事」を示し、「他人の誤った言動やネガティブな出来事でも参考にして活用すれば自分の成長や教養の役に立つ」という意味で使用されています。
なお、「他山の石」は「他人の善良な言動は自分の振る舞いの模範となる」と誤って解釈される場合があるため注意が必要です。
「対岸の火事」と「他山の石」の違い
「対岸の火事」と「他山の石」は双方とも物事を例えたフレーズですが、それぞれの意味に相違点があります。
「対岸の火事」は「自分には全く関係がなく少しの苦痛もないこと」を意味し、「大きな問題が起こったとしても自分には影響や被害が及ばない」状況を表現する際に用いられます。
一方、「他山の石」は「自分の教養や人格形成に役立つ他人の誤った言動や良くない出来事」を意味し、「他人の望ましくない行動や取るに足りない出来事でも自分の成長の糧になる」といった場面で使用されます。
「対岸の火事」の例文
「対岸の火事」は「自分には関係もなく痛手もない」、「心配する必要はない」といった意味を含みますが、「~は対岸の火事ではない」や「対岸の火事と思わず」のように否定形を用いて「自分への戒め」の意味合いで使用されるケースが多くみられます。
・『A企業で起こった情報漏洩騒動はわが社にとっても対岸の火事ではない』
・『地球の裏側にある国で起こった事故だが、対岸の火事と思わず注意することが重要だ』
・『友人が過労によって帯状疱疹になったことは、多忙の自分にとって対岸の火事と思えない』
・『対岸の火事だと軽視していると、いつか自分にも火の粉が降りかかるだろう』
「他山の石」の例文
「他山の石」は「他人の誤った言動やネガティブな出来事を自分に対する戒めと認識して前向きに活用する」ことを表し、「他山の石となる」や「他山の石として」といった使われ方をしています。
・『ライバル企業の衰退はわが社にとって他山の石としなければならない』
・『人の失敗を嘲笑することは簡単だが、他山の石として自分の成長に役立てることが大切だ』
・『先輩から就職活動についての失敗談を聞いたので、他山の石として参考にさせてもらうことにした』
・『前を走っていた車のマナーは最悪だったが、他山の石と捉えて自分の運転技術をさらに磨こうと思った』
まとめ
「対岸の火事」と「他山の石」はそれぞれ違う意味を持っていますが、いずれも「自分への戒め」として用いられる機会が多いのが特徴です。
ぜひ参考にして両者の正しい意味や使い方を学び、状況に応じて使い分けてください。