広く国民の意志を問う仕組みとして「国民投票」と「国民審査」があります。
このふたつはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「国民投票」と「国民審査」の違いについて解説します。
「国民投票」とは?
「国民投票」とは、「国政の重要事項に対する賛否を当民に行われる国民を有権者とする一般投票」を意味する言葉です。
「国民投票」の使い方
日本のような代議制の政治制度では国民が直接選挙で選んだ議員を議会に送り込み国民の代理となる議員による審議を通じて立法府が運営されます。
選挙という形で関わっていはいるものの国民が直接議案や政策に対して投票することはありません。
「国民投票」とはそのような代議制の政治形態において「重要事項について国民が直接投票で賛否を問う制度」です。
代議制は効率的な政治運営に効果を発揮する一方、有権者の直接的な意思が反映させられないというデメリットがあります。
選挙で選出された議員が公約を破ったり当選後に主張を変更したりすると国民の意志が正しく政治に反映されなくなってしまいます。
現実的にそのようなことが起きる可能性は高くありませんが、国の行く末に関わるような重要法案に対して直接的に国民が意思を示すのは重要な意味があります。
国民全体の明確な意志を示すために直接投票で有権者が意思を示せる仕組みが「国民投票」です。
日本における「国民投票」は主に憲法改正の賛否を問う投票手続きを指しますが諸外国では法律や条約などの賛否を問うために「国民投票」が実施されています。
イギリスのEU離脱など国家にとっての重要事項が国民投票で決まった例は少なくありません。
「国民審査」とは?
「国民審査」とは、「国民が公務員など国の要職にあるものの適格性を直接投票で審査する制度」を意味する言葉です。
「国民審査」の使い方
公務員など国の人事は総理大臣や大統領など行政の長が有していますが三権分立の原則により司法、立法、行政はそれぞれ独立した人事権を有します。
独立した人事権により任命された人物の適格性を判断するために設けられた制度が「国民審査」です。
「国民審査」では特定の役職に対し国民が直接ふさわしい人物かどうかを判断し可否を示します。
「国民審査」で相応しくないと判断された人物は罷免されるため独立性を盾にした権力の暴走を防ぐ抑制紀行として機能します。
日本における「国民審査」は最高裁判所の裁判官に対して実施されています。
衆議院議員選挙と合わせて実施される「国民審査」では最高裁判所の裁判官に対して審査が行われ過半数が不適格であると示された裁判官は罷免される仕組みになっています。
「国民投票」と「国民審査」の違い
「国民投票」と「国民審査」の違いは「問う内容」です。
「国民投票」は法案や条約など国の重要事項について国民による直接投票で賛否を問う仕組みです。
「国民審査」は公務員や裁判官など人事の適格性について国民が審査する仕組みを指します。
これからどうするか未来について国民に問うのが「国民投票」、すでに行われた人事や判断など過去の出来事について国民が審査し意思を示すのが「国民審査」という違いで区別されます。
「国民投票」の例文
・『国民投票のやり方を決めるための法案が必要だ』
・『憲法改正には国民投票で過半数の賛成が必要である』
「国民審査」の例文
・『最高裁判所裁判官の国民審査で不信任になった人は今までに一人もいない』
・『国民審査により国民からは司法に対する監視効果が働いている』
まとめ
「国民投票」と「国民審査」はどちらも国民の意志を問うための仕組みですが目的も手段も異なるまったく別の制度です。
日本ではなじみが薄い制度ですが海外では日常的に実施している国もあります。
どちらも国の重要事項に関わる重要な仕組みでありすべての国民に関係することなので正しい意味を知っておきましょう。