「樽廻船」と「菱垣廻船」の違いとは?分かりやすく解釈

「樽廻船」と「菱垣廻船」の違い専門用語・業界用語

この記事では、「樽廻船」「菱垣廻船」の違いを分かりやすく説明していきます。

「樽廻船」とは?

「樽廻船」とは江戸時代に近畿地方から江戸へとお酒などを運んでいた貨物船です。

目的地と拠点をめぐるように運航していたので、当時は貨物船のことを廻船と呼んでいました。

その廻船で様々な物を運んでいましたが、「樽廻船」はお酒を主な積荷にしていたことから、酒樽を積んだ廻船ということで「樽廻船」という呼び方が定着します。

お酒は傷みやすかったので短期間での輸送が必要でしたが、当時の様々な品を積み込む廻船では準備期間が長く、迅速な出荷ができないという問題がありました。

そこで積荷をお酒だけにすることで積み込みを合理的に行い、輸送時間を短縮するために生まれたのが「樽廻船」です。

最初はお酒だけを運んでいましたが、次第に余剰スペースに他の物も積み込むようになり、お酒以外の物に関しても、早く安い輸送手段として、重宝されるようになりました。


「菱垣廻船」とは?

「菱垣廻船」とは江戸時代に運航していた貨物船です。

船の左右には転落防止のために柵が建てられていましたが、その柵を垣立と言い、その垣立にトレードマークとして菱形の木製組格子をくみこんでいたことから、「菱垣廻船」という名前が来ています。

元々上方と呼ばれる近畿地方と江戸を行き来する海運は、この「菱垣廻船」が担っており、大阪と江戸の多くの商人が「菱垣廻船」の問屋に参加し、ありとあらゆる物を運んでいました。

元々はお酒も運んでいましたが、「樽廻船」が表れてからは商売敵となり、劣勢に追いやられます。

そして天保の改革で「菱垣廻船」のために組んでいた株仲間の解散を余儀なくされたことで、「菱垣廻船」は撤廃されました。


「樽廻船」と「菱垣廻船」の違い

「樽廻船」「菱垣廻船」の違いを、分かりやすく解説します。

江戸時代に近畿地方から主にお酒を運んでいた船が「樽廻船」で、様々な生活物資を運んでいた船が「菱垣廻船」です。

ただし主な積荷がお酒だったと言うだけで、「樽廻船」「菱垣廻船」と同じように様々な生活物資を運んでいました。

「菱垣廻船」の商売的な仕組みに不満を持った商人が始めた貨物船が「樽廻船」になります。

「樽廻船」にはトレードマークがありませんでしたが、「菱垣廻船」は垣立に菱形の組格子を付けることがトレードマークであり名前の由来です。

積み込み効率の点から「菱垣廻船」よりも「樽廻船」の方が早い上に安く、運送手段として「樽廻船」の方が圧倒的に優れていました。

まとめ

「樽廻船」「菱垣廻船」の関係性は、元々生活物資の運搬を一手に担っていた「菱垣廻船」に不満を持った商人たちが、不都合のない貨物船として始めたものが「樽廻船」という関係性です。

元々は酒樽専門の輸送船でしたが、早さと安さという利便性から多くの商人が「菱垣廻船」から「樽廻船」に乗り換え、その結果「樽廻船」「菱垣廻船」が混同されるくらい、「樽廻船」もあらゆる生活物資を運ぶようになったという流れになります。