増水被害を伝える言葉として「浸水」と「冠水」と「湛水」があります。
これらは具体的にどのような基準で区別されているのでしょうか。
今回は、「浸水」と「冠水」と「湛水」の違いについて解説します。
「浸水」とは?
「浸水」とは、「建物や土地の中に水が入り込んでくること」を意味する言葉です。
大雨や洪水などで水の量が排水量を上回ると行き場を失った水がどんどんたまっていきます。
「本来入るべきではない場所に水が浸入してくること」を表す言葉が「浸水」です。
台風で家の中に水が入ってきたり川の増水であふれた水が田畑に流れ込んできたりひび割れから水分が染みこんできたりなど「被害につながる水の浸入」を「浸水」と表現します。
「浸水」の例文
・『大雨による浸水被害が心配だ』
・『去年の台風では多くの家が浸水被害にあった』
「冠水」とは?
「冠水」とは、「あふれた水にすっかり沈むこと」を意味する言葉です。
「冠水」の「冠」は王様が頭にかぶる「かんむり」を意味しますが、頭にかぶる様子から「頭上に掲げること」という意味もある言葉です。
「冠水」という言葉は「水を頭上に掲げる」つまり「つま先から頭の天辺まですっかり水に浸かっている状態」を指しています。
モノの高さはまちまちですが「洪水などにより市中に水があふれたときにすっかり水に沈んで姿が見えなくなる状態」を指して「冠水」と表現します。
最上部が見ずに使っておらず見えている場合は「冠水」ではありません。
「冠水」の例文
・『川が決壊したことにより河川敷が冠水してしまった』
・『昨日の台風の影響で校庭は冠水していて使用できない』
「湛水」とは
「湛水」とは、「たまった水に農作物が浸かってしまうこと」を意味する言葉です。
田んぼや畑にあふれた水が流れ込んで水かさが増し農作物が浸かってしまう様子を指す言葉が「湛水」です。
主に田んぼで育つ稲に対して使われる表現で、田んぼには水がはられていますが「水量が急増し排水が追いつかず作物の生育に影響をあたえるほどの水量になってしまうこと」を「湛水」といいます。
作物への影響が基準なので水の量が少なく浸かった高さはわずかであっても正常な生育が望めないほどの影響がある場合は「湛水」です。
基本的には一部のみ水浸かることを指しますが完全に水没した場合も「湛水」と表現します。
「湛水」の例文
・『収穫間際だった田んぼが湛水の被害にあう』
・『湛水を避けるため台風が上陸するまでに急いで収穫する』
「浸水」と「冠水」と「湛水」の違い
「浸水」はあるエリアに水が浸入してくることを表します。
水量に関わらず水が入ってきてほしくないエリアに少しでも水が入ってきたら「浸水」です。
「冠水」は頭まですっかり水に浸かることを意味する言葉で水の高さが重要です。
「湛水」は水量の増加により農作物が被害をうけることを指す言葉であり一般住宅などには用いません。
入ってきてほしくない場所に水が入ってきたら「浸水」、「浸水」した水が頭の高さを超えたら「冠水」、「浸水」した場所が田畑で農作物に被害をあたえる量であれば「湛水」という違いで使い分けられます。
まとめ
水による被害を表す言葉は場所や程度によって「浸水」と「冠水」と「湛水」が使い分けられます。
ニュースなどでよく使われる表現なのでそれぞれの違いを知っておきましょう。