ミリタリー系の小説や映画で使われる言葉として「撃沈」と「撃破」と「轟沈」があります。
どれも似たようなシチュエーションで使われる言葉ですが具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「撃沈」と「撃破」と「轟沈」の違いについて解説します。
「撃沈」とは?
「撃沈」とは、「艦船を攻撃して沈めること」を意味する言葉です。
戦争中に砲撃や雷撃、航空区戦力などの手段により「敵対する艦船を攻撃して海に沈めること」を「撃沈」と表現します。
ただ破壊するだけではなく「海上に浮上し続けるのが困難なほどの被害を与えて沈没させること」が「撃沈」なので航行不能であっても界面にあり続ける場合は「撃沈」ではありません。
本来は海戦で用いられる専門用語ですが「敵を行動不能にして沈める」ところから転じて、酒に酔いつぶれたり異性にふられて立ち直れなくなったりなど「肉体的あるいは精神的にてひどいダメージを受けて行動不能になること」を「撃沈」と比喩的に表現する用法もあります。
「撃沈」の例文
・『太平洋沖で所属不明の艦船をアメリカ軍が撃沈した』
・『東南アジアで第二次世界大戦中に撃沈した日本軍の船を引き上げるプロジェクトが進行している』
「撃破」とは?
「撃破」とは、「敵に大損害を与えて打ち破ること」を意味する言葉です。
「撃破」とは「戦って勝つこと」を意味する言葉ですがただ勝負に勝つだけではなく「相手に回復不能なダメージを与えて継戦能力を失わせる」という「無力化」の意味合いが含まれています。
必ずしも被害を発生させる必要はなく操縦装置を壊したり燃料切れを起こさせたりといったように直接的な被害は少なくてもこれ以上戦いを続けられない状態に陥らせれば「撃破」となります。
「撃破」の例文
・『最大の強敵を撃破して勢いに乗る』
・『敵の大艦隊を少数で撃破する』
「轟沈」とは
「轟沈」とは、「巨大な艦船が瞬く間に沈むこと」を意味する言葉です。
「轟沈」の「轟」には「大きな音をたてる」「揺れや振動が響く」という意味があります。
「轟沈」が表すのは「派手に沈む様子」であり「簡単に沈むとは思えないような巨大な艦船などの物体が激しい音や振動とともにみるみるうちに沈んでいく様子」を指す表現です。
旧日本海軍の基準では「攻撃開始から1分以内に艦船を沈めること」を「轟沈」としています。
現代では元の意味から転じて「負けそうに思えなかった大きな存在が派手な戦いの末健闘むなしく敗れること」という意味合いでも使われています。
「轟沈」の例文
・『巨大戦艦があっという間に轟沈する様子を呆然と眺める』
・『旗艦が轟沈してしまったので降伏することにした』
「撃沈」と「撃破」と「轟沈」の違い
「撃破」はあらゆるものに対して使われる言葉ですが「撃沈」と「轟沈」は原則として海に浮かんでいる艦船など行動不能になると沈んでしまうものに対してのみ使います。
「撃沈」と「撃破」は戦闘時間にかかわらず使われますが「轟沈」は1分程度の短時間のうちに沈んでしまう様子を表す、時間の短さを含んだ表現です。
戦艦と交戦し継戦能力を奪ったら「撃破」、攻撃で相手が沈没したら「撃沈」、攻撃開始から沈没までの時間が非常に短ければ「轟沈」という違いで区別されます。
まとめ
「撃沈」と「撃破」と「轟沈」は日常ではあまりなじみのない言葉です。
それぞれきちんとした定義が存在するのでどのようなときに使えばいいのか使い分けられるようにしておきましょう。