「尊重」と「尊厳」の違いとは?使い方や例文も徹底的に解釈

「尊重」と「尊厳」の違い生活・教育

この記事では、「尊重」「尊厳」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。

「尊重」と「尊厳」の違い

初めに二つの言葉の意味を確認します。

「尊重(そんちょう)」とは、価値のあるものとして大切に扱うことという意味です。

「尊」は、相手を敬うという意味合いで、「重」は、価値のあるものとして重くみるという意味合いで、尊(とうと)び、重(おも)んじるとなります。

「尊厳(そんげん)」とは、とうとくおごそかなことや、重々しくいかめしいこと、気高く犯しがたいことなどの意味があり、そのようすを表します。

「厳」は、厳(おごそ)かの意味があり、礼儀正しく近寄りがたいようすを表しています。

「尊重」は、とうとびおもんじることなのに対し、「尊厳」は、とうとくおごそかなことや、そのようすを表すという違いがあります。


「尊重」と「尊厳」の使い方の違い

「尊重」は、現在では、名詞として扱われる言葉で、サ行変格活用と共に、「尊重」するといった使われ方が一般的です。

11世紀ごろには、形容動詞としての使われ方もあったようですが、現在では使われなくなっています。

「尊重」には、動作や行動として、何かを大切に扱うという意味合いがあります。

例えば個人を尊重するという使い方では、個人を価値のある大切なものとして扱うという意味合いになります。

「尊厳」は、名詞や形容動詞として扱われる言葉で、基本的に、そのようすを表す概念的な意味合いが強く、尊く厳かなことに使われることや犯してはいけないような権威という意味合いで使われることもあります。

基本的には、形容動詞ですので、「尊厳する」「尊厳される」のような使われ方はありません。

人や動物などに使われることは勿論ですが、規範や規則、法律のように、概念的なことに対しても使われます。

例えば、個人の尊厳とした場合には、個人と個人がお互いを人間として「尊重」するという意味合いになりますし、法の尊厳とした場合には、法というものが犯してはいけないような権威だという意味合いになります。

勘違いしやすい部分なので触れておきますが、法律などで「個人の尊重」と書かれている場合には、日本国憲法第13条の「すべての国民は、個人として尊重される」という部分が省略されて「個人の尊重」と表現されていることに注意が必要です。

別の表現として「個人の尊厳」と書かれている場合には、日本国憲法第13条の全文のようなことが即ち「個人の尊厳」だということを表しています。

法律文の表現の仕方としては、「個人の尊厳」と書かれている場合と、個人の人格を尊重するや、個人の基本的人権を尊重しなどのように書かれている場合があります。

「尊重」は、するや、されるなどの行為に使われるのに対し、「尊重」は、対象となるもようすを表す概念をさして使われるという違いがあります。


「尊重」と「尊厳」の英語表記の違い

「尊重」の英語表記は、“respect”“high regard”“honor the decision”“esteem”などが考えられます。

英語では、尊重に合致する単語はありませんので、尊敬と同じような意味合いとして扱います。

“respect”は、尊敬する、自重する、自尊心をもつ、(…を)重んずる、大事にする、尊重するなどの意味があります。

“high regard”は、高貴な、気高い、崇高な、高潔ななどの意味を持つ“high”と、(…を)顧慮する、(…に)注意するなどの意味を持つ“regard”を合わせて、尊重するという意味合いになります。

“honor the decision”は、自尊心、名誉、栄誉などの意味を持つ“honor”と、決定、決断、解決、判決、決意、決断力などの意味を持つ“decision”と合わせて、決定を尊重するといった意味合いになります。

“esteem”は、尊重する、尊敬する、重んずるなどの意味があります。

“respect”と違うところは、高く評価するという意味合いがあります。

「尊厳」の英語表記は、“dignity”“sanctity”が考えられます。

“dignity”は、威厳、尊厳、品位、気品などの意味合いがあり、基本的に人に対して使われます。

“sanctity”は、神聖、尊厳、高潔、敬虔(けいけん)、神聖な義務などの意味合いがあり、“sanctity of law”とすることで、法の尊厳という意味合いになります。

「尊重」と「尊厳」を使った例文

・『多様性を尊重する』
・『私の意見を尊重してほしい』
・『人はお互いに尊重し合うべきだ』
・『親子間でも尊重は大事です』
・『人間としての尊厳』
・『誰かの尊厳を奪うことは許されない』
・『心無い報道は、尊厳を侵害する』
・『個人の尊厳を尊重する』

「尊重」の類語

「尊重」の類語は、尊敬、重視、重んずるがあります。

尊敬(そんけい)は、人格を尊いものと認めてうやまうこと。

行為や業績などを優れたものと認めてうやまうことです。

重視は、重要なものとして注目することです。

重んずるは、価値のあるものとしておもくみることです。

「尊重」の対義語

「尊重」の対義語は、無視です。

無視は、存在価値を認めないことやあるものをないものとしてみなすことです。

「尊厳」の類語

「尊厳」の類語は、荘厳、威厳、貫禄です。

荘厳(そうごん)は、神仏などに対して、重々しさがあって立派なこと。

見事でおごそかなことです。

威厳(いげん)は、堂々としていておごそかなようすです。

貫禄(かんろく)は、体つきや態度などから感じるどうどうとしたようすです。

まとめ

「尊重」「尊厳」の違いについて説明しました。

「尊重」は、とうとびおもんじることなのに対し、「尊厳」は、とうとくおごそかなことや、そのようすを表すという違いがあります。

「尊重」は、するや、されるなどの行為に使われるのに対し、「尊重」は、対象となるもようすを表す概念をさして使われるという違いがあります。