授業や報告会などの場で「この部分は割愛させていただきますが」と言って話を端折る場合があります。
多くの人がこの割愛の意味を「不要な部分を削ること」という風に「省略」や「削除」と似たようなものだと認識しているかと思いますが、実は少し意味合いが違うのです。
この記事では、「割愛」と「省略」と「削除」の違いを分かりやすく説明していきます。
「割愛」とは?
割愛とはただ削ることではありません。
「スぺ―スの都合で残念ながら割愛した作品も多い」などというように、自分が惜しいと感じるものを思い切って捨てたり手放すなど、「本来なら取っておきたかった、捨てたくて捨てたわけではない」という惜しむ気持ちが込められているのです。
平成二十三年度に文化庁から発表された『国語に関する世論調査』では、本来の「惜しいと自分が感じるものを手放す」という意味で使う人が17. 6%、「必要の無いものを切り捨てる」という本来とは違う意味で使う人が65. 1%という結果が出ていることから、多くの人が割愛の意味を誤解していることがわかります。
「省略」とは?
省略とは、はぶく、はぶいて簡単にするという意味です。
せいりゃく、しょうりゃくどちらの読み方も存在します。
「長くなるので説明を省略する」などのように、本来の量、長さから簡単にするために一部分を取り除く場合に使われます。
割愛はしばしばこの省略と同じ意味で使用されますが、厳密には違う意味を持っています。
契約などでの手続きを簡略化する際に「手続きを省略する」と言いますが、惜しむ気持ちがあるわけではないので「手続きを割愛する」とは言いません。
「削除」とは?
削除とは一度作成した文書やデータなどを削ったり取り除いたりすることです。
「消去」と言い換えることも出来ます。
元からあるものを完全に消してしまう場合にこの削除が使われます。
「契約の説明文を一部省略する」ならただ簡潔にするために略しただけなのでその説明文自体が無くなったわけではありませんが、「契約の説明文を一部削除する」なら元の説明文から完全に消してしまうので削除した部分は無いものとされます。
「割愛」と「省略」と「削除」の違い
省略ははぶいて簡単にすることであり、削除はその部分を削ることです。
そして割愛は惜しみながらも仕方なく一部分をはぶいたり消したりすることなので、やむを得ず削ったその部分を惜しいと感じているかどうかで「割愛」と「省略」「削除」は使い分けをすることが出来ます。
データでも出ている通り「不要な部分を削る」という意味で割愛を使っても何となくニュアンスは伝わります。
しかし省略や削除と割愛を混同してしまうと、ビジネスシーンなどでは失礼にあたってしまう場合もあります。
もし大事な場で「アンケートでは多くのご意見をいただきましたが時間の関係上、紹介は省略させていただきます」と言うと、気持ちのこもった意見がまるで不要なものかのようにとらえられてしまいます。
こういう場合は「紹介は割愛させていただきます」と言った方が適切でしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
意味は似ていても使うべきシーンは変わってくるので、場に合わせて「割愛」と「省略」と「削除」はしっかり使い分けをしていきましょう。