この記事では、「標本」と「剥製」と「ミイラ」の違いを分かりやすく説明していきます。
「標本」とは?
「標本」【ひょうほん】とは、生物や鉱物などを長期保存し観察できるよう処理を施したものです。
主に、研究や教育に使う資料として保管されています。
「標本」の種類には、ホルマリンなどの薬剤に漬ける「液浸標本」、押し葉や昆虫などを乾燥させて保管する「乾燥標本」、患者の患部の組織を一部採取して保管する「病理組織標本」、顕微鏡観察に用いるための「プレパラート」などがあります。
特徴は、薬剤などで固定処理をして腐敗や劣化が起こらないようにしてあるため、長期保管しても状態が変化せず、繰り返して観察できるところです。
また、統計学上では、対象物の全体から抽出した見本のことを「標本」と呼びます。
そのほか、ものの例えとして、見本のように模範的な様子を「標本のようだ」と表現することもあります。
「剥製」とは?
「剥製」【はくせい】とは、動物の死骸を生きている時の外観を保った状態で保存する技術です。
主に、ほ乳類、鳥類、爬虫類や魚類が使用され、観賞や学術・研究のための展示に利用されています。
「剥製」という言葉に使われている漢字の意味を見てみると、「剥」は表面の皮を取り除いて中味を出す、「製」は物をつくることを表しています。
「剥製」は漢字が意味するように、動物の表皮をはがして中身(内臓)を取り出し、表皮に防腐処理を施して見栄えを整える技術を指します。
具体的には、内臓や筋肉を取り除いた動物の死骸に合成樹脂などを詰め、防腐処理を施して生きているかのような外観に仕上げる技術のことです。
全身あるいは一部分(頭部など)が「剥製」に用いられます。
「ミイラ」とは
「ミイラ」とは、長期間にわたって腐敗せず形をとどめている死体のことです。
遺体を長期保存するため人工的に作られたものと、遺体が自然乾燥して「ミイラ」化したものがあります。
エジプトでは、古代から「ミイラ」づくりがおこなわれていました。
「ミイラ」は、遺体に含まれる水分量が少なく腐敗が起こらないという条件が成り立つ時に形成されるものです。
人工的に作られる「ミイラ」は内臓や脳を摘出し、薬品や加熱によって防腐処理を施し作られていました。
英語では“ mummy”(マミィ)と呼ばれ、日本語では「木乃伊」(もみい)とも表記します。
「ミイラ」の粉末が妙薬として日本へ入ってきた時、ミイラづくりに使われる植物「ミルラ」が転じて「ミイラ」と呼ばれるようになったといわれます。
「標本」と「剥製」と「ミイラ」の違い
「標本」「剥製」「ミイラ」は「生物などの形を保ったまま長期保存されているもの」という共通点があります。
「標本」は、研究や展示のため生物や鉱物などを保管したものです。
「剥製」は動物に防腐処理を施して生きている時の外観を保ったもので、広義には「標本」の一種とされます。
「ミイラ」は人や動物の亡き骸が腐敗せず長期にわたって形を保っているものです。
「ミイラ」は展示するための「標本」「剥製」と異なり、死者を手厚く葬る目的で残されています。
まとめ
「標本」「剥製」「ミイラ」は、生物などの状態を保ったまま長期保存したもので、研究対象として高い価値を持っているものも多いです。
「命ないもの」ということで似ている印象を持たれがちですが、それぞれ、用途、対象、処理の工程などが違うことを覚えておきましょう。