この記事では、「いらっしゃる」と「お越しになる」と「お見えになる」の違いを分かりやすく説明していきます。
「いらっしゃる」とは?
古語「いらせらる」の転訛で、「在る」「居る」「来る」「行く」の尊敬語です。
挨拶語の「いらっしゃいませ」は、「いらっしゃる」の命令形「いらっしゃい」で、人が訪ねて来た際に「よくいらっしゃった」と言う意味で使われます。
小売店などでの来客への声掛けは、防犯の意味合いも兼ねる場合があります。
来店者に対して、店舗に入ったことを店員が現認したと知らせることが、万引きなどへの牽制になります。
警察から小売店や金融機関などに対して、来客の顔を見て挨拶するように防犯指導されることがあります。
また、「働詞(動詞、形容詞、形容動詞など)て・で+いらっしゃる」の形で、「○○ている」「○○である」の尊敬語としても使われます。
例えば、「若々しくていらっしゃる」は、形容詞「若々しい」+「て」+「いらっしゃる」で、相手が年齢の割に若く見える状態について、尊敬語で表現しています。
「お越しになる」とは?
他者が、行く・来ることの尊敬語です。
「行く」と「来る」では進行方向が逆ですが、尊敬語では同じ言葉を使うので、注意が必要です。
「お見えになる」とは
「来る」の尊敬語です。
「見える」は文法的には、古語の動詞「見」+自発の助動詞「ゆ」の「見ゆ」です。
古語「見ゆ」の意味は、「会う」の謙譲語です。
古語と現代語では、同じ言葉でも、意味が異なる場合があります。
「いらっしゃる」と「お越しになる」と「お見えになる」の違い
いらっしゃるは、四つの単語で共通する尊敬語です。
何を意味するか、文脈から読み取る必要があります。
お越しになるは、「行く」と「来る」の尊敬語です。
お見えになるは、「来る」の尊敬語です。
人に伝える際は、「来る」の尊敬語を「お見えになる」、「行く」の尊敬語を「お越しになる」に統一し、その上で、「いらっしゃる」を「在る」「居る」の尊敬語に限定すると、間違いが少なくなります。
敬意を表したつもりが、相手に上手く伝わらなければ、本末転倒です。
但し、この統一した使い方は、前後の文脈で不自然になる場合があるので、すべてに適用できるものではありません。
まとめ
尊敬語と謙譲語の使い分けは、動作の主体だけでなく、伝える相手と自分・動作の主体との関係性によります。
自分や、他人に対して自分の身内などの動作を言う場合、尊敬語表現は使いません。
誤用の例:(取引先の社員に対して言う場合)弊社の営業部長は、明日の午後二時に御社へお越しになります。
正しくは謙譲語で、「弊社の営業部長は、明日の午後二時に御社へお伺いします」です。
中立な表現で、「弊社の営業部長は、明日の午後二時に御社へ訪問します」でも間違いではありませんが、人によっては不快に思う場合があるので、謙譲語を使った方が無難です。
尊敬語と謙譲語は、全く異なる単語を使う場合が多いので、ビジネスマナーとして、最低限の使い分けができるように勉強が必要です。