この記事では、「治る」と「直る」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「治る」と「直る」の違い
「治る」には2つの意味があります。
1つめは、生体の機能や形態が本来の役割を果たさなくなり、身体的・精神的に苦痛を伴い、健康的な日常生活を送れない状態から、もとの状態になることです。
もう一つは、無意識に出てしまうような好ましくない傾向や習慣が改善されることです。
「直る」にも2つの意味があります。
1つめは、もとの好ましい状態に戻ることです。
機嫌や天候などの様子が戻ること、ものの機能がもとに戻ることを意味しています。
もう一つは、好ましい状態へ変わることです。
適切な状態に改まる、好ましい状態に整えられるなどのことを指しています。
どちらの言葉も読み方が「なおる」で同じですが、意味は若干違います。
「治る」の漢字を使用するときには、病気が改善したり、悪い癖が改まったりすることをいいます。
「直る」の漢字を使用するときには、機嫌・天候・人間関係などがもとの良好な状態に戻ることや、機械や橋など何らかの機能を持っているものが、壊れた状態から本来の機能を果たす状態になることをいいます。
また、好ましい状態に改善されるという意味もあります。
悪い姿勢がよい姿勢に整う、誤りが改められるなどを意味しています。
「治る」と「直る」の使い方の違い
前者の言葉は、病気から回復することに主に使用されます。
後者の言葉は、物や状態がよい方向に変わることに使用されます。
どちらの言葉も人間について使うことができますが、どのような人間の状態に使うのかが異なります。
「治る」は病気から回復することに使用をし、「直る」は好ましくない癖や習慣が好ましい方向に変わることに使用をします。
「治る」と「直る」の英語表記の違い
「治る」は英語で“recover”や“get well”や“cured”などと表現をします。
「直る」は英語で“repaired”や“fix”などと表現をします。
「治る」の意味
「治る」には2つの意味があります。
1つめは、生体の生理的・精神的機能や形態に問題が生じ、苦痛や不快感を伴い、健康的な日常生活を送るのに支障が出る状態から、もとの良好な状態に戻ることです。
脚の骨折のことで考えてみます。
脚には歩く・立つという役割があります。
脚に骨折をすると体をうまく支えることができなくなるため、歩く・立つという役割を十分に果たせなくなります。
それによって、移動をすることが困難になる、立った姿勢を維持することが困難になるなど、日常生活に支障ができます。
この状態が病気です。
この状態から、骨がくっつきそれによって歩く・立つといった脚本来の機能を取り戻すことを「治る」といいます。
もう一つは、無意識に出てしまう好ましくない習慣や傾向が改まることです。
爪を噛むことはよくないという意見があります。
もし本当に爪を噛むことがよくないなら、爪を噛むことを習慣的に行っていることは、悪い癖を持っているといえます。
爪を噛む習慣でいうと、習慣的に爪を噛んでいた状態から、爪を噛まなくなる状態に変わることを、「治る」といいます。
「治る」の使い方
よい方向に向かうことについて使用をします。
生体が持っている身体的・精神的な機能に異常が出たり、形態が損なわれたりして、日常生活を営むことに支障が出ていた状態から、もとの状態に戻ることを指しています。
たとえば、骨折していた状態から骨折していない状態になる、風邪をひいていた状態から風邪をひいていない状態になるなどを指して使用します。
悪い癖が改善される意味でも使用する言葉です。
文化や人それぞれの考えによって、悪い癖といわれるものは異なります。
「治る」を使った例文
・『肺炎が治る』
・『整体に通えば治るかなと思っていた』
・『治るには1か月ほどかかります』
・『治ると信じることが大切だ』
「治る」の類語
「癒える」が類語です。
病気・傷・悩みなどが消えることという意味があります。
「治る」の対義語
生体が、よい状態から機能や形態に異常が生じた状態になるという意味の言葉が対義語で、「病気になる」がそれにあたります。
「直る」の意味
「直る」には2つの意味があります。
1つめは、もとの好ましい状態に戻ることです。
もとどおりの様子やもとどおりの役立つ状態になることを指しています。
人間の機嫌のことで考えてみます。
平静だった人が、他人から何かを言われて怒りだしました。
怒っているのは、好ましくない状態、つまり機嫌が悪い状態です。
この状態からもとの平静な状態になることを「機嫌が直る」といいます。
今度は機械の状態のことで考えてみます。
機械といってもさまざまあるので、ここでは洗濯機のことで説明をします。
洗濯機は衣類を洗う働きを持つ機械です。
衣類を洗える状態が、本来の機能を果たしている状態といえます。
もし、洗濯槽が回らない、水が出てこないなどが起これば、洗濯機の機能が果たせていないといえます。
つまり役立つ状態ではないのです。
この状態から、洗濯槽がきちんと回る、水が出て来るなど、もともと持っている機能を果たす状態になることを、「直る」といいます。
もう一つの意味は、好ましい状態に改まることです。
猫背は悪い姿勢だとされています。
背中が丸まった猫背の状態は、腹部を圧迫して胃腸の働きを妨げたり、肺を圧迫して呼吸を浅くしたりします。
猫背のことでいうと、「直る」とは姿勢がすっと伸びた状態になることを意味しています。
好ましくないとされる猫背から、好ましいとされる姿勢に改まることです。
「直る」の使い方
もとの状態になること、好ましい状態に改善することの意味で使用をします。
生物や物の状態・様子・機能などについていいます。
「直る」を使った例文
・『修理に出せばすべて直るだろう』
・『直る可能性はある』
・『直ることを期待している』
・『直るまでに3か月ほどかかります』
「直る」の類語
「治る」が類語です。
「直る」の対義語
物のことでいうと、役に立つ状態から役に立たない状態になるという意味の言葉が対義語で、「故障」がそれになります。
まとめ
同じ読みの言葉ですが、使われ方に違いがあります。