この記事では、「買収」と「合併」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「買収」と「合併」の違い
「買収」とは、企業の経営戦略である「M&A」における「A(Acquisitions)」を指示しています。
「買収」に対して「合併」は、「M&A」のうちの「M(Mergers)」を意味している違いがあります。
「買収」は、「発行済株式の2分の1以上を保有することでその企業の経営権を買い取ること」を意味しています。
「合併」は「株式取得による経営権掌握(敵対的買収)あるいは個別事業の買取り」ではなく、「複数の会社を一つの会社としてまとめる・社名変更の可能性があること」を示唆している点が異なっています。
「買収」と「合併」の使い方の違い
「買収」は「ある会社が他の会社の経営権をグリップするために株式を買い取る経営戦略」を意味して使われます。
「買収」の用語は「他の会社の特定の事業や部門を、現金・株式交換で買い取る意味」でも使用できます。
「買収」と比較して「合併」は、「二つ以上の会社を一つに合わせる経営戦略」を意味している点が違います。
「合併」すると「吸収合併」の場合は「消滅会社の社名」が消えますが、「買収」しても自動的に「買収された会社の社名」が消えるわけではない違いも挙げられます。
「買収」と「合併」の英語表記の違い
「買収」という言葉を、英語を使って表現すると以下になります。
“acquisition”……買い取ること。
購入して取得すること。
M&Aにおける企業の買収。
“buyout”……買い上げること。
買い叩くこと。
買収。
“takeover”……会社などを乗っ取ること。
引き継ぐこと。
買収。
「合併」という言葉を、英語を用いて表記すると以下になります。
“merger”……二つ以上のものを一つに合わせること。
自治体などの合併。
M&Aにおける企業の合併。
“amalgamate”……複数の会社・事業などを一つにする合併。
“combination”……複数の対象を組み合わせてつなげること。
合併。
「買収」の意味
「買収(ばいしゅう)」とは、「他の会社の経営権あるいは個別の特定事業(特定部門)を買い取ること」を意味している経営用語です。
「買収」は、M&Aの経営戦略における「A(Acquisitions)」に相当します。
「買収」の具体的方法は、「TOB(株式公開買付け)なども活用しながら、ターゲットにしている会社の議決権株式の2分の1以上を買い占めて経営権を握る方法」になります。
「買収」には株式取得による議決権掌握だけではなく、「個別の事業部門を現金・株交換で買い取る方法」もあります。
「買収」の使い方
「買収」は、「対象とする企業の株を大量に買い占めることで議決権・経営権をグリップする」の意味で使われています。
「買収」というM&Aの手法を指す用語は、「発行済株式の過半数の買取による経営権奪取」あるいは「その会社の特定の事業・部門の買取り」の意味合いで使用することができるのです。
「買収」を使った例文
・『不祥事による株価暴落で、有名企業を買収するチャンスが巡ってきました。』
・『時価総額が高い優良企業の買収は、大量の資金があってもなお不可能なことが多いのです。』
・『買収はM&Aの経営戦術の一つですが、相手企業が合意しなければ敵対的買収となります。』
・『買収を円滑かつ迅速に進めるために、TOBという買収手法が活用されるケースが多くなっています。』
・『その企業全体の経営を握りたいわけではなく、その企業が持っている有力な事業部門を買収したいのです。』
「買収」のメリット
「買収」のメリットとして、資金と買収機会の折り合いがつけば、「自社にとっての強みとなる事業の強化」や「自社の弱みである事業の補強」を手っ取り早く行えることにあります。
「買収」は相手側の合意がなくても敵対的に行うことができ、「自社が欲しい事業部門だけを買う選択」もできるメリットがあります。
「買収」のデメリット
「買収」のデメリットとして、「大金を投じて取得した他社の事業・人材・技術などが、自社のビジネスとのシナジー効果をいまいち発揮できない可能性」があります。
「買収」すると「企業規模・運営コストの肥大」が起こるデメリットもあるため、明確な経営目標や活用方法を定めずに買収すると「高い買い物」になる恐れがあります。
「合併」の意味
「合併(がっぺい)」とは、「二つ以上の複数の会社を合わせて一つの会社にすること」を意味しています。
「合併」はM&Aの経営戦略における「M(Mergers)」に当たります。
「合併」の方法には「吸収合併」と「新設合併」がありますが、ほとんどの「合併」は低コストで手続きが簡便な「吸収合併」で行われています。
「合併」の使い方
「合併」は、「二つ以上の会社を一つにまとめること」を意味して使われる経営用語です。
「合併」という用語は、「存続する大きな会社が小さな会社(消滅会社)を取り込む吸収合併」の意味で使われます。
また「合併」は、「既存の複数の会社を消滅させて、新しい会社を設立する新設合併」を指して使うこともできます。
「合併」を使った例文
・『来年の春に、複数の地方銀行が対等な条件で合併する交渉が進められています。』
・『市場競争の激化に適応するために合併する会社が増えています。』
・『合併して経営効率を高めないと生き残れないような業界の環境変化が起こっているのです。』
・『M&Aの戦略ではまず合併すべきか買収すべきかの大まかな判断を迫られることになります。』
・『経営体力の弱い会社は、合併後に社名が無くなってしまう消滅会社の立場になりやすいのです。』
「合併」のメリット
「合併」のメリットは、「会社経営の効率化・意思決定の迅速化」になります。
「合併」で「同じ業界内の共食い状態・過当競争の回避」をすることができ、「規模の経済(スケールメリット)+事業・人材のシナジー効果」が生まれやすいメリットも挙げられます。
「合併」のデメリット
「合併」のデメリットは、いったん合併してしまうと元の別々の会社に戻ることは難しいため、「経営の効率化・競争力のアップ」に失敗すると、人件費・部門維持などのコストが余計に大きくなってしまうことにあります。
「合併」した後に業界内におけるシナジー効果の競争力・経営体力を維持できないと、「合併」によって反対に経営実績が悪化してしまうリスクもあるのです。
まとめ
「買収」と「合併」の違いを分かりやすく説明しましたが、いかがだったでしょうか? 「買収」と「合併」の意味・使い方・英語表記の違いやメリット・デメリットを詳しく調べたい時は、この記事の解説をチェックしてみてください。