クラシック曲などで知られる「レクイエム」ですが、日本語訳だと「鎮魂歌」というイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、「レクイエム」と「鎮魂歌」の違いを分かりやすく説明していきます。
「レクイエム」とは?
「レクイエム」とは、ラテン語で「安息を」という意味を指す“requiem”に由来し、主に以下の意味で使われています。
・キリスト教カトリック教会で行われる「神に死者の安息を祈るミサ」のこと。
「ミサ」とは同じくカトリック教会で行われる典礼儀式のことです。
・「神に死者の安息を祈るミサ」の式中に用いられる「ミサ曲」のひとつを指し、「死者ミサ曲」や「死者のためのミサ曲」とも呼ばれています。
・先述した意味から転じて、「哀悼」や「死者との別れ」などをテーマに作られた「葬送曲」のタイトル。
「レクイエム」と聞くと、何となく「クラシック曲」をイメージされる方も多いでしょう。
とりわけ、「モーツァルト」作曲の「レクイエム」はクラシックに馴染みがない方でもメロディーを耳にすれば、「どこかで聞いたことがあるかも」という方が多いと思われます。
モーツァルト作曲の「レクイエム」に「ガブリエル・フォーレ」作曲、「ジュゼッペ・ヴェルディ」作曲の「レクイエム」を合わせて、これらは「3大レクイエム」と呼ばれています。
そういうこともあり、改めて「レクイエム」=「楽曲」とイメージしがちですが、冒頭で説明したように、実のところ「レクイエム」は「死者の安らかな眠りを神へ祈る儀式」や「死者が安らかに眠れるように願いを込めた楽曲」のことを指しているのです。
「鎮魂歌(ちんこんか)」とは?
「鎮魂歌」とは、「死者の魂を鎮めるために捧げる詩歌」や「鎮魂祭に歌われる歌」のことです。
「鎮」という字は「鎮(しず)める」とも書き、「落ち着かせる」や「おさえる」、「おさめる」などの意味を指します。
「鎮魂」は神道などにおいて「災いを呼ばないように、死者の魂を慰め鎮めること」を意味し、「鎮魂祭」などの儀式で死者に捧げられる詩歌が「鎮魂歌」となります。
「レクイエム」と「鎮魂歌」の違い
「レクイエム」と「鎮魂歌」の違いを、分かりやすく解説します。
・「レクイエム」とは、カトリック教会における「神に死者の安息を祈るミサ」のことであり、かつ「神に死者の安息を祈るミサ」の式中に使われる「ミサ曲」のひとつを意味します。
・「鎮魂歌」とは、「死者の魂を鎮めるために捧げる詩歌」や「鎮魂祭に歌われる歌」のことです。
所々で「レクイエム」を「鎮魂歌」に訳しているケースを見かけますが、「レクイエム」の主たる意義は「死者の安息を祈ること」にあり、キリスト教的解釈にも神道で指すような「死者の魂を鎮める」という意味合いは含まれません。
したがって、「レクイエム」=「鎮魂歌」と訳すのは不適切であるとして、現在ではそのまま「レクイエム」と表記されたり、「死者ミサ曲」や「死者のためのミサ曲」のように訳されています。
まとめ
「レクイエム」は「死者の魂の安息を祈るための儀式や楽曲」を指し、「鎮魂歌」は「死者の魂を慰め、鎮めるために捧げられる詩歌」を指しているため同義語ではないということでした。
もしかすると、2語の違いのさらに奥には、「キリスト教」=「西洋」と「神道」=「東洋」における「死」や「魂」への解釈の仕方の違いも関係しているのかもしれません。