金属を整形する技法として「鍛造」と「プレス」があります。
このふたつは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「鍛造」と「プレス」の違いについて解説します。
「鍛造」とは?
「鍛造」とは、「金属材料を繰り返したたいて形成する加工技術」を意味する言葉です。
「鍛造」の使い方
「鍛造」の「鍛」には「きたえる」という意味があります。
一般的にはトレーニングや練習で能力を伸ばすことを指しますが、もともとは「負荷を与えて強度を高める」という意味を持つ言葉です。
「鍛造」というのは「金属の強度を高めるため強く鍛えあげる技法」を指します。
高い強度を持つ金属ですが原資レベルで見てみると不揃いだったり空気や不純物を含んでいたりと状態が均一ではありません。
不揃いな状態というのは強度を阻害する要因になります。
不揃いな部分に力が加わると曲がりやすく、不純物を含む部分に衝撃が加わると金属が持つ本来の強度が発揮されずヒビが入ったり折れたりすることがあります。
金属材料の成分はそのままに強度だけを高める技法が「鍛造」です。
「鍛造」では金属を繰り返し何度もたたくことで均一でムラのない状態に仕上げます。
繰り返したたいて鍛えあげられた金属材料は元の状態に比べて圧倒的に強度が高く優れた粘りを発揮して変形しなくなります。
たたき鍛えあげる課程で形を変えることにより金属の塊から刀やネジなど様々な製品を作り上げられる優れた加工技法が「鍛造」です。
「プレス」とは?
「プレス」とは、「材料に高い圧力を加えて変形させ形成する加工技法」を意味する言葉です。
「プレス」の使い方
「プレス」とは簡単にいば「押しつぶして形を変える加工法」です。
物体に高い圧力を加えて押しつぶすと変形しますが、変形させて自由に形を変える技法を「プレス」といいます。
押しつぶすという加工方法の関係から肉薄の材料を加工するのに適しており、主に金属板やプラスチック板などの板材から目的の製品を作り出すのに用いられています。
金型で板材を挟む「曲げ」、中空状態に整形する「絞り」、圧力により打ち抜いて型を抜く「せん断」などいろいろな方法でさまざまな形状の製品を大量に作り出せるのが「プレス」の特徴です。
「鍛造」と「プレス」の違い
「鍛造」と「プレス」はどちらも材料に圧力や衝撃を加える加工技法ですが「鍛造」がひとつの材料に繰り返し衝撃を加えるのに対し、「プレス」は基本的に圧力を加えるのは一度きりです。
「鍛造」は繰り返したたくことで衝撃を加え材料そのものの強度が増しますが、「プレス」は加工のみで強度は変化しません。
たたいて鍛えながら加工するのが「鍛造」、押しつぶして変形させるのが「プレス」という違いで区別されます。
「鍛造」の例文
・『日本刀は鍛造で製作されている』
・『丈夫で変形しにくい鍛造リング』
「プレス」の例文
・『板材をプレスで打ちぬく』
・『弁当の容器はプレス加工で製造されている』
まとめ
「鍛造」と「プレス」はどちらも金属に圧力や衝撃を加える加工方法ですがまったく異なる別の技法です。
それぞれにメリットとデメリットがあるので製品ごとにどちらが向いているのかを考慮し最適な方法を選択してください。