人事に関する言葉として「登用」と「採用」があります。
このふたつの言葉は具体的にどのような違いで使い分けられているのでしょうか。
今回は、「登用」と「採用」の違いについて解説します。
「登用」とは?
「登用」とは、「あらかじめ用意されている高い地位に人を就かせること」を意味する言葉です。
「登用」の使い方
「登用」という言葉は下の地位にある者を上の地位へと引き上げるときに使われる表現です。
役割として選んだり仕事を任せたりするだけでなく「能力を見込んで権限や裁量がある上の地位を任せること」を「登用」といいます。
「登用」は「昇進」や「抜擢」などと同じく「出世」という要素が含まれている表現です。
役割は変わっても地位は同じときやその仕事を任せても状況に大きな変化がないときは「登用」という言葉は用いられず「起用」などの表現が使われます。
「登用」というのは上の地位にある人が下の人を自らの判断で引き上げるときに使われる表現なので選挙で選ばれるような場合にはふさわしくありません。
基本的にはすでに用意されている地位やポストにそれまで低い地位で過ごしてきた人をあてることを意味するのでその人のために新しく作ったポストに対して使うのは間違いです。
「すでにある高い地位に低い地位から登って上がる様子」を「登用」と表現します。
その地位に引き上げた人から見た場合の表現なので地位についた人自らが「登用」という言葉を用いるのは「自らの能力以上に高い地位を与えていただいた」とへりくだる場合のみです。
「採用」とは?
「採用」とは、「選んで決めること」を意味する言葉です。
「採用」の使い方
「採用」のもともとの意味は「採って用いる」つまり「わがものとして使い役立てる」ことを表します。
まだ自分のものではない対象を自分のものとして能力や才能を発揮させるのが「採用」のあらわす意味合いです。
一般的に「採用」という言葉は「とるかとらないかを選択した結果とること」を意味します。
大前提として録るか取らないかを選ぶ判断があり、判断の結果として録るという選択肢を選ぶのが「採用」です。
企業が希望者の中から新入社員として雇い入れるものを選んだり、提出されたアイデアの中から実際に使用するものを決めたりなど「多数の候補から最終的な結論として選び出す」ことを「採用」と表現します。
「登用」と「採用」の違い
「登用」と「採用」はどちらも多くの候補から人を選び役職や地位を任せることを意味します。
「登用」と「採用」の違いは「地位の高さ」です。
「登用」は地位や身分の低い人を選び出し高い地位に引き上げて就かせることを意味するのに対し、「採用」は高い地位や重要な役割以外にも用いられる言葉です。
出世の要素を含むのが「登用」、出世の要素を含まず単に選び出して決めることを表すのが「採用」という違いで区別されます。
「登用」の例文
・『一年生議員を副大臣に登用する』
・『20代の若者を幹部に登用する』
「採用」の例文
・『面接で好印象だった人を採用する』
・『採用された原稿は返却されないそうだ』
まとめ
「登用」と「採用」はどちらも人を選んで役割を任せることを意味しますが含まれるニュアンスが大きく異なります。
どのような意味合いで使われている言葉なのかに注意してふさわしい表現を用いましょう。