都市に見られる現象を表す言葉に「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」があります。
この言葉はどのような現象を指すのでしょうか。
今回は、「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」の違いについて解説します。
「ドーナツ化現象」とは?
「ドーナツ化現象」とは、「都市中心部から郊外へと人が移動し空洞化が生じる現象」を意味する言葉です。
「都市中心部に人が少なく周辺部に人が多くなる現象を穴の開いたドーナツに例えた言葉」が「ドーナツ化現象」です。
都市の発展段階で多くの人の居住地が中心部です。
住居や商業施設などの数がそもそも少なく中心部に集中していることから多くの人は中心部に住み働きます。
都市が発展を続けると中心部には開発できる土地が少なくなり開発できる土地を求めて開発の手は郊外へと伸びていき都市はどんどん拡大する形で成長を続けます。
都市がかなり成長し大都市と呼ばれる規模になると中心部は多くの人が集まるようになると発生するの土地価格の上昇です。
土地価格が上昇すれば家賃の相場は高くなり住める人が限られてしまいます。
都市中心部では生活できない人達は安い家賃を求めて郊外へと移り住みます。
このように「発展している都市の中心部から人がいなくなり郊外に多くの人が住むようになる現象」を指す言葉が「ドーナツ化現象」です。
「ドーナツ化現象」は発展に伴う地価上昇と拡大型の開発計画により引き起こされる開発に成功した都市特有の現象です。
「ドーナツ化現象」を引き起こす一つの要因としてモータリゼーションによる移動手段の確保が挙げられます。
「スプロール現象」とは?
「スプロール現象」とは、「都市開発において秩序だった計画に基づくことなく中心部から郊外に向けて開発が進められる現象」を意味する言葉です。
計画に基づき発展や人口増加を予想しながら将来に渡り秩序だった開発を進めていくのが本来の理想的な都市開発のあり方です。
そのような都市開発が実行されれば都市特有の住宅問題や交通問題などが発生せず人々が不満なく暮らせる都市が完成することになります。
しかし、現実的にはそのような秩序だった都市開発が行われることはほとんどありません。
都市開発は非情に長期にわたる計画であり開発を進める途中に環境が変化したり事情が変わったりすることはよくあります。
計画が秩序だっているのは柔軟性のなさと紙一重であり時代に合わせて変化できない計画が見直されたり破棄されたりすることはよく見られます。
都市中心部に開発が集中するのは発展の初期段階で当然見られる光景です。
発展が進めば土地が不足するのも当然予想されますが需要や開発余力を正確に見積もるのは難しく、開発の自由度が高い郊外エリアに対する規制を設けるのも簡単ではありません。
結果として比較的容易に開発できる郊外エリアに開発の目が向けられ人々がそれぞれの判断で勝手に開発を進めていきます。
このような「都市の成長途中において中心部から郊外に向けて無秩序に開発が進められていく現象」が「スプロール現象」です。
「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」の違い
「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」はどちらも都市の中心部から高外部への移行を指す言葉ですが「ドーナツ化現象」が人の移動を表すのに対し「スプロール現象」はインフラや資本など都市開発が郊外へ向くことを表します。
「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」はセットで発生することが多く相互に影響をおよぼすことで動きを加速させます。
まとめ
「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」は日本だけでなく世界各地で見られる都市特有の現象です。
都市開発では重要な課題になるので言葉の意味を知っておきましょう。