この記事では、「懊悩」と「煩悶」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「懊悩」と「煩悶」の違い
「懊悩(おうのう)」と「煩悶(はんもん)」は基本的には、「思い悩むこと・悩みもだえること・悩んで苦しむこと」という同じ意味を持っている二つの言葉です。
ただし「懊悩」の言葉は、「悩んでもだえる」の語感も多少ありますが、「内面的に思い悩むこと・心の中(心の奥底)で苦悩すること」といった「内面的苦悩」のニュアンスが強くなっています。
「懊悩」に対して「煩悶」のほうは、「色々なことを思い煩って悶えること・心身の苦痛や欲望の過剰で身悶えること」といった「外見(もだえる動作・態度)にも現れる苦悩」のニュアンスが強い点に違いが認められます。
「懊悩」と「煩悶」の使い方の違い
「懊悩」と「煩悶」はどちらも、「懊悩する・懊悩しない・懊悩がある・懊悩がない」や「煩悶する・煩悶しない・煩悶がある・煩悶がない」といった用法・用例で使える点は共通しています。
また類似の意味を持つ「懊悩」と「煩悶」を一つにして、「懊悩煩悶(おうのうはんもん)・煩悶懊悩(はんもんおうのう)」といった四字熟語としても使えます。
一方で、「懊悩」は「今後の仕事をどうするのか懊悩していました」のように「内面的な苦悩」にフォーカスした文章で使うことが多く、「煩悶」のほうは「彼女に振られたショックで煩悶しました」のように「内面的苦悩+外見的(動作的)な身悶え」に焦点を当てた文章で使うことが多い違いは挙げられます。
「懊悩」と「煩悶」の英語表記の違い
「懊悩」の英語での表記は以下になります。
“worries”(悩みごと・心配ごと・懊悩) “be worried about(over)~”(~について思い悩む・~について心配する・~に関して懊悩する) “be troubled about(over)~”(~に苦悩させられる・~に邪魔されて困らせられる・~に懊悩する) 「煩悶」の英語を使用した表記は以下になります。
“be in agony”(苦しくて悶えている・苦悶している・悩んで身悶えする・煩悶している) “suffer from~”(~で苦しむ・~で痛みを感じて悶える・~で煩悶する) “writhe”(身悶えする・身をよじる・煩悶する) ただし、英語では「懊悩」と「煩悶」の厳密な区別はないため、“be troubled about(over)~”などの英語表現は、「~で煩悶する」の意味でも言い換えは可能です。
「懊悩」の意味
「懊悩(おうのう)」とは、「簡単には解決しない問題・心配事があるなどして、悩み苦しむこと」を意味しています。
「懊悩」の「悩」の漢字はそのまま「悩み・困ること」を意味していますが、「懊」の漢字にも「悩み・苦しみ・残念に思う」といった同様の意味があります。
「懊悩」には「悩んで身悶える」の意味もありますが、基本的には「内面的に苦悩する・心の中で思い悩む」といった意味のニュアンスが強くなっています。
「懊悩」の使い方
「懊悩」は「祖父がんを告知されたと聞いて懊悩していました」の文章のように、「簡単には解決しないある問題・心配事について思い悩むこと、内面的に苦悩すること」の意味で使う使い方をします。
「懊悩」という表現は、「~に懊悩する・懊悩しない・~の懊悩がある・懊悩がない」や「懊悩煩悶の四字熟語・懊悩の日々」などの用法・用例で使用されているのです。
「懊悩」を使った例文
・『妻が浮気しているかもしれないと思って懊悩していました。』
・『自分の力でどうしようもない問題について懊悩する時間は無駄だと気づきました。』
・『大切な人が今も苦しんでいるかと思うと懊悩せずにはいられませんでした。』
・『懊悩の日々があったからこそ、今の私はあの時よりも精神的に成長できたのです。』
・『懊悩することがないように見える能天気な人がうらやましいです。』
「懊悩」の類語
「懊悩」の類語には、以下のような言葉があります。
「苦悩(くのう)」……何らかの問題・不安なことなどがあって、心理的に苦しんで悩むこと。
「心労(しんろう)」……何か心配なこと(気がかりなこと)があって、心理的な重荷・重圧になっているさま。
「懊悩」の対義語
「懊悩」の対義語には、以下のような言葉があります。
「安堵(あんど)」……心配ごとや今まで悩まされていたことが解決して安心すること。
「安心(あんしん)」……特に悩んだり心配したりすることがなくて、心が安らいでいるさま。
「煩悶」の意味
「煩悶(はんもん)」とは、「精神的な苦悩あるいは肉体的な苦痛や欲望の過剰によって、悶える(もだえる)こと」を意味しています。
「煩悶」の表現には「思い悩むこと・思い煩う(わずらう)こと」の意味もありますが、基本的には「思い煩って身体的にも悶えること、身をよじるほどに苦しむこと」といった意味のニュアンスが強くなっています。
「煩悶」の使い方
「煩悶」は「人生の進路に迷って煩悶していました・好きな彼女への欲望で煩悶していました」の文章で示すように、「容易には結論がでない問題について思い悩んで身悶えること」あるいは「欲望・性欲の過剰に振り回されて身悶えること」を意味して使う使い方になります。
また「煩悶」という言葉は、「~に煩悶する・煩悶しない・~の煩悶がある・煩悶がない」や「煩悶懊悩の四字熟語・煩悶の日々・煩悶の過去」などの用法・用例で使用することが可能です。
「煩悶」を使った例文
・『離婚を決断することができずに煩悶していました。』
・『重要な資格試験に落ちたというメールを受けて煩悶しました。』
・『転職活動が上手くいかない現状に煩悶がないと言ったら嘘になります。』
・『結婚して子供ができた時から、人生をどうするかの煩悶の日々に別れを告げることができました。』
・『煩悶懊悩するのは、煩悩が多い人間にとってある種の定めでもあります。』
「煩悶」の類語
「煩悶」の類語には、以下のような言葉があります。
「苦悶(くもん)」……精神的あるいは肉体的な苦痛を感じて、それに耐えられず身悶えること。
「苦痛(くつう)」……苦しくて痛みを感じること。
精神的な痛みにも肉体的な痛みにもどちらにも使える言葉です。
「憂悶(ゆうもん)」……心理的に落ち込むような悩み・心配事があって悶えること、身をよじるほどに苦しむこと。
「煩悶」の対義語
「煩悶」の対義語には、以下のような言葉があります。
「安楽(あんらく)」……心配ごと・悩みごとなどがなくて、安らかで楽しい気持ちの状態にあること。
「リラックス」……身体的にも精神的にも苦痛がなくて、ゆったりとくつろいでいるさま。
まとめ
「懊悩」と「煩悶」の違いを分かりやすく説明しましたが、いかがだったでしょうか?
「懊悩」と「煩悶」の意味・使い方・英語の違いや類語・対義語を詳しく知りたい時は、この記事の内容をチェックしてみてください。