この記事では、「正直」と「誠実」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。
「正直」と「誠実」の違い
「正直」は、うそや偽りのない状態や言動、またはそのような性格を意味する用語です。
一方「誠実」は、私利私欲がなく真心をもって人や物に接することを意味しています。
「正直」と「誠実」は、どちらもうそがなく信頼できる状態を示し、時に人柄の良さを評価するほめ言葉にもなりますが、ニュアンスは少し異なります。
「誠実」は、偽りはなく言動に真心や誠意が伴う状態を指します。
「正直」は、単にありのまま、裏表がない言動をしただけのことです。
「正直」と「誠実」の使い方の違い
「正直」と「誠実」はどちらも、人をあざむかない正しい言動をあらわしていますが、場面によって使い分けが必要です。
たとえば何かの物事を申告する際、事実を包み隠さず言葉や行動に出す態度は「正直」だと表現できます。
そして、単に言葉や言動に出すだけでなく、相手に対する気持ちがこもっており、最後まで責任を持って言動をとったならば、その対応は「正直」より「誠実」という形容がふさわしくなります。
「正直」と「誠実」の英語表記の違い
「正直」は英語で“honesty”と表記します。
これは「正直」のほか「実直」「率直」「まっすぐな態度」などの意味を持つ英語です。
また次に説明するように「誠実」という意味でも多用されます。
「誠実」は英語で“sincerity”あるいは“honesty”と表記します。
“sincerity”は「誠意」「真実」、“honesty”は「正直さ」「率直さ」という意味を含む英語です。
“sincerity”と”honestyは、どちらも「うそや裏表がないさま」を意味しています。
ただし“sincerity”は素直で嘘をつかないさま、“honesty”は道徳心があり正しいさま、といったニュアンスの違いがあります。
「正直」の意味
「正直」は、うそや偽りがないこと、ありのままの状態を表す用語です。
また、裏表がない、私利私欲のために嘘をつくことのない態度や性格を指すこともあります。
「正」は事実、合っているという意味、「直」はまっすぐなことを意味する漢字です。
「正」と「直」の組み合わせにより、正しくまっすぐである、事実を包み隠さず表している、という意味が生まれます。
「正直」の使い方
基本的に「正直」は、包み隠さず申告しているさま、うそをつかない人柄を示す、ポジティブな用語です。
偽りがない状態であること、裏表がなく信頼できる性格を評価する時に使いましょう。
なお、日常会話ではくだけた言葉でいう「ぶっちゃけ」という意味合いでも使われます。
その場合は「本当のところ」「本音では」など、事実を暴露するような使われ方になります。
「正直」さは、善良な人柄の手本とされてきました。
昔ばなしを一例に挙げても、私欲に負けてうそをついた人物は罰を受け、正直な人物が最終的にむくわれる話がいくつか登場します。
しかし「正直」な人は、まっすぐ過ぎて損をすることがあるため「正直者は馬鹿を見る」というネガティブな表現も存在しているのです。
「正直」すぎて融通の利かない人は「馬鹿正直」(ばかしょうじき)とけなされることもあります。
「正直」を使った例文
・『彼は正直者で信頼できる人物だ』
・『正直に白状したまえ』
・『勇気を出して自分の過ちを正直に謝ったところ、相手の人は怒るどころかすぐに許してくれました』
・『正直なところ、もう駄目かとあきらめていたのです』
・『馬鹿正直にそこまで答えなくてもよかったのに』
「正直」の類語
「正直」の類語には
「率直」【そっちょく】(ありのままなこと)
「実直」【じっちょく】(真面目でまっすぐなさま)
「真直」【しんちょく】(まっすぐで正しいこと)
「清廉」【せいれん】(私欲がないこと)
などがあり、どれも偽りがないさまを表しています。
また「誠実」も「正直」の類語です。
「正直」の対義語
「正直」の対義語には
「不正直」【ふしょうじき】(正直ではないこと)
「不直」【ふちょく】(正しくないこと)
「嘘吐き」【うそつき】(うそをつくこと、うそをつく人)
などがあり、どれもうそや正しくない状態をあらわしています。
「誠実」の意味
「誠実」は、私利私欲を持たず真心のこもったおこないをすること、人や物事に対して真剣に取り組むことです。
または、そのような言動がとれる人柄も指しています。
「誠」はまっすぐな心を、「実」は本当のこと、正しいことを意味する漢字です。
「誠」と「実」の組み合わせで、うそをつかない真面目でまっすぐな気持ちや言動という意味が生まれます。
「誠実」の使い方
「誠実」は、真面目で信頼できる言動や人柄を評価する、ポジティブな用語です。
誠実な言動の中に偽り、見栄や打算的(計算高いこと)な気持ちは一切ありません。
私利私欲を捨て人のために心を込めて行動している状態を「誠実」と表現することができます。
一方で、不祥事を起こした政治家や企業が「誠実に対応させていただきます」と陳謝するように、反省の意をアピールする形でも多用されています。
「誠実」さは優れた資質であり、自己PRに使えば相手を安心させる良い効果をもたらしますが、軽々しく多用すれば弁解にも聞こえます。
自ら「誠実」「誠意」だとアピールし過ぎると逆に不信感を持たれてしまうので、使い方には注意も必要です。
「誠実」を使った例文
・『誠実な人柄のAさんは、多くの人に慕われている』
・『患者の気持ちになって、誠実な態度で接する』
・『結婚するなら誠実な男性が理想』
・『客から『誠実な対応を望みます』とクレームが来た』
・『仕事にはいつも誠実に取り組んでいる』
「誠実」の類語
「誠実」の対義語には
「誠意」【せいい】(真心と熱意がこもっていること)
「忠実」【ちゅうじつ】(その通りに示すこと)
「質実」【しつじつ】(真面目で飾り気がないこと)
「真摯」【しんし】(真剣でひたむきなこと)
などがあり、どれも真面目で心のこもった状態をあらわしています。
また、偽りのないことを意味する「正直」も類語に含まれます。
「誠実」の対義語
「誠実」の対義語には
「不誠実」【ふせいじつ】(誠実ではないこと)
「不実」【ふじつ】(真心が足りないこと)
があり、どちらもほぼ同じ意味として使われています。
まとめ
「正直」と「誠実」はどちらもポジティブな意味を持つ用語で、共通する意味合いを含んでいますが、定義やニュアンスは異なります。
使い方を間違えるとネガティブな意味が発生することがあるので、正しい意味を解釈し、「正直」と「誠実」を上手に使い分けていきましょう。