江戸時代においては、すべての価値が石高という米の生産量が基準になっていました。
領地の大きさも給料もすべてこれがベースになっていました。
大名が何らかの手柄を立てたような時には領地の拡大という意味で石高の加増がほうびとされていました。
それではこの「加増」とはどういう意味でしょうか。
また、似たような言葉である「増加」や「上昇」とはどう違うのでしょうか。
この記事では、「加増」と「増加」と「上昇」の違いを分かりやすく説明していきます。
「加増」とは?
「加増」とは「加えて増やす」ことを表す言葉です。
元々は「加える」ことに焦点があることをベースにして、何かを増やすことを示していましたが、江戸時代までの間に大名などの領地の大きさを測る「石高」を褒美などで増やすことにしか使われなくなりました。
英語で言えば「add」が近いでしょう。
「増加」とは?
「増加」とは、言葉通り「増やして加える」ことです。
「人口増加」や「収穫量の増加」などのように、通常は「数量が増える」ことを示すために使われます。
数量に関してはどんなものでも対象にすることができる便利な言葉です。
英語では「increase」が一番近いでしょう。
「上昇」とは?
「上昇」とは、文字通り「上にのぼること」を表す言葉で、「物価の上昇」、「気温の上昇」などのように、通常は何かのレベルが上がってゆくことを指す言葉です。
英語では「increase」あるいは、上に上がるニュアンスを出すなら「rise」が近いでしょう。
「加増」と「増加」と「上昇」の違い
「加増」と「増加」と「上昇」の違いを、分かりやすく解説します。
これらの言葉は、すべて「何かが増える」ということを表す言葉であるという部分は同じです。
しかし、違うのは、使われるシチュエーションです。
つまり、「何が」増えることを言うのかということです。
「加増」は前述のように、領地の大きさである「石高」が増えることを指す特殊な言葉です。
そして、「増加」は一般的な意味での「数量」が増えることで、「上昇」はおもに「高さ(レベル)」が増えることという事ができます。
この微妙な違いは「物価は上昇」するが、「賃金は増加」するということの違いをみれば何となくわかります。
この結果として、「上昇」には「上に向かってゆく」というニュアンスが加わることになります。
まとめ
この記事では、「加増」と「増加」と「上昇」の違いを説明してきました。
「加増」という言葉が使われる場合のほとんどが、「石高を増やす」という意味というのは説明した通りですが、以前にはもっといろいろな場面で使われていた形跡もあります。
しかし、結局は「石高」にしか使われなくなり、「増加」の方が単純で使いやすいので、結局現代においてはほとんど見ることもなくなっています。
このように、ある言葉がある言葉に駆逐されてしまうという、ある意味での「淘汰」が起きるのも生きている言葉の世界の面白いところです。