「フェルト」と「ウール」と「不織布」ですが、どのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、「フェルト」と「ウール」と「不織布」の意味や違いについて分かりやすく説明していきます。
「フェルト」とは?
「フェルト」とは「羊やラクダなどの動物の毛を石鹸水に浸し、熱や圧力などでシート状に加工した不織布」のことを指します。
「フエルト」とも表記され、英語の“felt”が由来です。
断熱効果や保湿効果、耐熱性、クッション性、遮音性に優れている反面、摩擦や引っ張りに対する抵抗力が弱いという性質を持っています。
服飾製品、絨毯、カーペットなどの日用品をはじめ、断熱材や防音材としても利用されているほか、フェルト生地は手芸の材料としても使われています。
「フェルト」の歴史は大変古く、最古のものでは紀元前5世紀から4世紀の遺物がロシア中南部アルタイ地方にある「パジリク古墳群」のひとつから発見されています。
一説によれば、かの「ノアの方舟」に使われていたとも。
日本では奈良時代に「新羅(しんら/しらぎ)」を通じて伝わったとされ、最古のものが「正倉院」に現存しています。
「ウール」とは?
「ウール」とは「羊の毛が原料の動物繊維」を指し、英語の“wool”に由来します。
日本語では「羊毛」とも訳されますが、ヤギの毛が原料の「カシミヤ」やアンゴラヤギ、アンゴラウサギの毛が原料の「アンゴラ」、ラクダ、アルパカの毛が原料のものなど動物の体毛を使った「毛織物」全般を指すこともあるようです。
保温性や保湿性が高く、伸縮性や弾性にも優れ、シワや型くずれが起きにくいことから世界で最も使用されている動物繊維とされています。
他にも柔らかい感触や汚れの除去、脱臭がしやすい、燃えにくいなどの性質を持ちますが、反面、洗うと縮む、摩耗やアルカリ、虫、カビに弱いなどの性質も持っています。
「ウール」と動物愛護問題
近年になって動物愛護の観点から「ウール」の採取における「ミュールシング」と呼ばれる工程が非難の的になっています。
「ミュールシング」とは、蛆虫の寄生防止のために羊の臀部の皮膚を切り取ることです。
麻酔なしで行われ、傷の治療が行われないことから批判があがり、羊毛を多く生産しているニュージーランドでは2018年に「ミュールシング」の廃止が決定されました。
「不織布(ふしょくふ)」とは?
「不織布」とは「繊維を織らずに、圧縮や合成樹脂などでシート状に加工した素材」を指します。
安価で大量生産が可能なため、様々な日用品や消耗品として利用されており、また素材も天然繊維から化学繊維まで多くのものが存在しています。
「フェルト」も「不織布」の一種ですが、「JIS(日本工業規格)」の定義では「フェルト」は「不織布」に含まれません。
まとめ
・「フェルト」とは「羊やラクダなどの動物の毛を石鹸水に浸し、熱や圧力などでシート状に加工した不織布」のことを指します。
・「ウール」とは「羊の毛が原料の動物繊維」を指します。
・「不織布」とは「繊維を織らずに、圧縮や合成樹脂などでシート状に加工した素材」を指します。
したがって、動物繊維である「ウール」を加工したものが「フェルト」であり、「フェルト」は「不織布」の一種となります(JISの定義ではフェルトは不織布に含まない)。